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【エッセイ】 また一年終わっても、わたしはずっと同じところで足踏みしてる


もう一年が終わる。

毎年年末くらいになると「この一年、わたしは何をしたのか」と自問自答する。そして、何もしていないと気付く。
ずっとずっと同じところで足踏みしてるみたいな人生だ。
そのくせ、一年が過ぎるのを一丁前に早く感じたりしている。濃密な時間を過ごした者も、空虚な時間を過ごした者も、結局のところ一年過ぎるのは早いらしいです。

大学卒業して二年経とうとしている。同い年の子たちには後輩がいるだろうし、この前にはなんと結婚する子も遂に出た(わたしが知らないだけでもっといるかも)。

わたしがずっと同じところで足踏みしている間に、同世代の人たちは数々の選択をし、前に進んでいる。着実に「人生のタスク」を消化してる。
素直に言うと、それが怖いよ。とてつもなく。
わたしのやってることって、世間で言うと「停滞期」とか「空白期間」扱いらしいから。何もしてないのと同じなんだって。
転職サイトとか見るたびにゾッとする。「フリーターとして働いてる期間は履歴書に記載する職歴に該当しない」なんて書いてあったり。そんなにダメかい。夢があってフリーターとして働いている期間が、人が。たまに受ける面接でも、引かれて終わり。質問も大体「どうして新卒から働かなかったんですか?」ばかり。ほんとに世間ってそればっかり。嘘つくのも悪いから「小説家目指してて…」って素直に答えて落される。素直に答える者が蔑ろにされてどうする。別にいいじゃん。働きながら他に夢を持ってても。何も「小説家目指してるんで、こっちは不真面目にゆるく働きます!」なんて言ってるわけじゃないんだから。わざわざ安くない証明写真代かけて、履歴書もちゃんと書いてるんだから、ちゃんと働くよ。夢叶えるためにも、生活するためにも、お金は必要でしょ?
面接受けるたびに、夢もそれを追ってる自分も、夢を追いかけてきた期間も、正社員も頑張ってみようかなって思った自分も全部全部否定された気持ちになる。

フリーターという生き方が、悪いんじゃないよ。みんな働いてるだけでえらいよ。ほんとにそう思ってる。
人には労働なんか無理してするようなもんじゃないってアドバイスしてるし、心の底からそう思ってる。
だけど、自分のことになると途端に自信なくなる。
夜中、不安になって、indeedで「正社員」で検索して、気になった求人スクショして。
でも、次の日スクショ消すのを、何度も何度も繰り返してる。「そうだ、わたしのやりたいこと、これじゃなかった」って目が覚めるんです。

今のバイト先は歳上の方が多い職場で娘さんたちと同じくらいの年齢だから可愛がってもらえて、若いつもりでいるけど(いや実際人間の中で言えば若いんだけど)、でも、でもよ、「普通」は「大人の振る舞い」をしなきゃいけない年齢で。
なのにわたしはいつまで経ってもごりごりの実家暮らしフリーターだし、正社員の面接も全然ダメだし、小説家なんてなれるかわっかんない夢だけ追いかけてる。夢があるだけマシ、そう思ってるけど、ほんとにそうなのかな?と不安で押し潰されそうにもなる。

母がどう思ってるのか分からない。小説家になりたいのを本当の意味で応援してくれてるのかも。たまに「私が死んだらどうするの」的なことを言ってくる。それはもちろん一向に賞が獲れてる気配がない娘に暗に就職(あるいは結婚?)を促してる言葉なわけで。
その割に、「来月はココとココとココと…(以下膨大な量)休み取っておいて貰わないと、困るからよろしく」なんて、およそ正社員じゃ無理な休日数を言い渡して来たり。働いて欲しいのか家の用事をしてもらいたいのかどっちなのか。…母も心のどこかでは、諦めてるのかな。
わたしは、本当は内定貰った時点で、新卒初任給で母に海が見えるホテルのレストランで「今までありがとう、お疲れさま。これからはゆっくりしてね」って言うつもりだった。でも、まだそれも出来てない。バイトの給料でそれをやられて嬉しいかなって思っちゃって。お金の価値は同じなのに。なんか、なんか、上手く言えないけどいいのかなあって、思っちゃって。何も出来てない。何も返せてない。卒業から二年経とうとしてるのに。こんな娘でごめんね、情けないよ、本当に。

わたしは今年も何個も文学賞に落ちたよ。その度に普通に落ち込むよ。向いてないのかなと思うよ。一生何者にもなれないまま、死ぬのかなって思うと震えて涙が出る。
でもその想像してるってことは夢を一生諦める気がないってことで、「馬鹿だなあ」って思いながら、そんな自分を嫌いにもなれなくて、小説書くのもやっぱり何よりも好きで好きで、これ以上人生かけてやりたいことって見つからなくて、毎日毎日、書ける日も書けない日も、足掻いていたら一年終わってる。

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