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第六回 晴れときどき台風「テクニカル分析は使いますか?」 (居林 通)

この質問に答える前に、テクニカル分析とは何かをお話しさせてください。 テクニカル分析とはおおよそ、「過去の値動きをチャート(グラフ)で表し、そこからトレンドやパターンを把握し、今後の価格(レート)の展開を予測するもの」という表現ができると思います。

つまり、過去の株価から未来の株価を予想しようと考えるわけです。 テクニカル分析は過去にあったパターンは、将来も繰り返し起こるという前提を置いているので、今回のパターンはこれなので、近い将来はこのパターンの株価の動きになるだろう、というように考えるわけです。

一理あると思います。 しかし、筆者は株価が(将来の)企業業績に沿って動くと考えるので、まずは企業業績を知る(予想する)ことに力点を置いています。 例えば、予想業績が上がっていないのに、株価だけ上がってもそれはそれは評価できない株価上昇でしょう。 逆に、株価が下がっても業績が上昇し続けている、これからも堅調な見通しがあれば、買い場ではないかと考えるわけです。

SP500の株価と予想EPS(一株当たり純利益)を重ねてグラフにすると下のように、業績予想に沿った移動平均のようなグラフになります。 これは株価は業績の沿って動くという証左だと考えます。 逆に言えば、株価から株価を予想することは難しい、と考えているわけです。

SP500指数とその予想EPSの推移

企業収益はそれまでの経営努力と事業環境の結果です。 つまり、投資しようとしている企業がどのような事業環境の中で、どのような経営努力をしているのかを観察し、理解し、そして将来の成長力がどのくらいあるのかを見るわけです。 もう一度言いますが、私は投資家としては企業を分析の対象としている、その意味ではファンダメンタルズ重視の投資家でテクニカル分析はあまり使いません。

対してテクニカル分析というのは、株価分析のように捉えられることが多いですが、私の見方では、テクニカル分析は市場にいる「投資家」の分析をしていると思います。移動平均線というのは、言い換えれば過去の投資家が売買した平均ですし、オシレーターなどは投資家の行動が過熱しているのかどうかを示すとも解釈できます。 

株式投資は、「投資家」が「企業の価値をめぐって」論争を繰り広げているようなものです。 しかし、時として投資家自身の都合で株価が大きく上がったり(バブル)、大きく下落したり(8月上旬の令和のブラックマンデー)といったことが起きます。 そのような時には、冷静になるためにテクニカル分析からみて、買われすぎではないか? 売られすぎではないか?と考えることに意味はあると思います。