見出し画像

甘ったるいオレンジピールと高貴なシナモンティー

病気みたいに君が好きだった。
でも、初めてじゃない、君も知っているでしょう。
私はふにゃふにゃしてるように見えて実はとっても強靭で、厄介な心を持っているのです。

阿呆か私は、早く寝なさい。何度言い聞かせたことだろう、しかし全く意味なし。
君からの返信に心が躍り、そんなeasyな自分にちょっと反省し、とはいえやっぱり嬉しくて、このむず痒くて幸せな気持ちに共感できる人に悪い人はいないと思う。

西新宿は私の出没スポット、2年前迄。学会、研修会。真面目な私がそこには居たようで。pandemicはいろんなものを奪っていろんなものを私たちに与えた、らしい。

六本木のウエストウォーク、お気に入りの真っ赤なワンピースで今日も徘徊コース。クレープ片手に毛利庭園におかしな鼻歌を啜る女が居るかしら。ゴジラと戯れる時間もいつだってたっぷりあった。手を振る余裕はなくあの人との思い出に夢中だっただけ。

日比谷公園の茂みに隠れることもできず、真っ赤な顔して涼しい表情を取り繕うことに夢中の気狂い女がいたら、緑のスカートを確かめてみて。多分、聴こえるのは花の音だけ。

休日の錦糸町に飛び出した子供たちの笑顔に故郷を思い出して辟易とした顔の真っ白なスニーカーが歩いていたら、声をかけてもかけなくてもいいのです。私はどっちでもいいの。

白金台のドン・キホーテ、バイト面接に落ちたなんておいおい言えない。朝刊と共に味わった親しいフレンチトーストも、舌には残っていない。ウエイトレスの顔も、ファミレスの名前も出てこない、婀、目黒に忘れ物はない。

上野で後悔、隣のラーメン屋、君の印象よりも辛さレベルはもう2ランク落としてもよかったでしょう。煉瓦倉庫に差したお日様に大きなジョッキを掲げた秋、みなとみらいからは本当の航海は始まっていなかったのだと、今更知るなど。

いくらのんでも忘れたいことは次から次へと溢れ出て、止まることを知らない。吐くこともできなかった新宿のワインバーと飲み明かすには短すぎた銀座の赤と青に塗れた酒場の光を微かに瞼の裏に映してみたら、少しは憂さ晴らしになると誰かが嘯く。

丸の内北口に用はないのだ、ただ、一番近いお手洗いをマークしておいたら、安心する、そんないつもの癖。ただの人間だもの。丸の内の夜は、苦しくなるための光の束を用意していつも私を迎え入れてくれるから、実は慈悲深い、なんて騙されやしない。そんなこととは関係なしに、もうとっくに貴方の虜。丸の内の夜は狡猾。ウマが合わないと思い込みたいほど、すっかり愛を欲している。誰のものかもわからない愛を拾って縋りたいくらいの欲だったら、きっと楽だろう。

この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?