精神論だけで音楽はやっていけない

一人の吹奏楽出身者としてなのか、はたまた別の理由なのか、典型的な吹奏楽部という活動に疑問を感じることがある。見えないものを可視化する作業の難しさだろうか、精神論がまかり通り、下手すれば運動部よりもきつく、より精神論を多用する。

学生時代の多くを吹奏楽にささげてきた身として、吹奏楽をはじめとする音楽活動は間違いなく「青春の1ページ」になるわけだが、私にとっては、内部から感じた、疑問や、憎悪にも似た「薄汚い」青春になる。このコラムは他人に向けて書かれたものではない。自分の「薄汚い」箇所への回想と整理である。

精神論が通ってしまう状態

こんなことを思ったのは大学入学時、もう一度吹奏楽の世界に戻ろうと決断した時である。あいまいになってしまう奏法や楽曲分析(アナリーゼでしたっけ)といった部分を言語化していけないかと模索した。案外その考えは同じパートの人には受け入れられていたと思う。後輩が揃いも揃って理工学系の学部でこういった話に共感してくれたのも大きいとは思うが。

で、その論を補強するものが2018年に登場する

この時期は丁度「ブラック部活動」というものが取り上げられていた時期で、その先鋒として挙げられたのが吹奏楽部であった。まとめでは吹奏楽の周りの環境が理論や指導法のフィードバックが小さいシステムであることが書かれている。

スポーツは「スポーツ科学」とよばれるような分野があり、「闇雲に練習して大会で優勝する」という運動部のイメージは近いうちに過去のイメージへとなっていくだろう。そしてスポーツが研究できるのは、人間の体という不確定要素はあれど、タイムや得点等「結果が数字で出る」からだろう。音楽はどう評価できるのだろうか。

音楽を科学していくには

ここで音楽とスポーツの根本的な問題に直面する。音楽は評価できる絶対的な物差しが存在しない。音や和音といったものを評価する方法が限られてくる。芸術という表現の多様性を認める分野において、絶対的な物差しがないことはよいことなのだが、分析をしていくならば、物差しの存在は不可欠である。

この点は私も悩み、答えは出せていない。結局は感性の問題になっていき、それは好き嫌いにつながる。大学時代には自分の感性をものさしに周囲と意見交換するしかなかったが、周波数応答(フーリエ変換)や奏法の型の伝授、口腔の図示等、方法があったのではないかと思う。

明確な基準がないから精神論に頼ってしまう

先述のとおり、音楽には絶対的な基準は存在しない。それゆえに「これがいい」という形でデータを提供することが難しい。このデータを出せないことで、周囲を納得させられる根拠を出せずに、指導者の感性が絶対視される。
 下から意見を吸い上げられる指導者なら話は別だが、楽器を始めたての人も多く、楽譜も満足に読めない状態で意見を求めるのは酷だろう。結果的に指導者の感性が絶対視されるトップダウン方式の部活運営にならざるを得ない。
 ただ、これだけでは精神論に頼り、ブラック部活の先鋒として挙げられる理由にはならない。

もう一つ、指導者が各楽器の専門家(トレーナー)を頼らず、練習法を提示できない場合に、吹奏楽部はブラック部活で精神論を多用する軍隊と化す

指導者はそれぞれの楽器のプロではない。練習法でもメソッドが存在し、自分の弱点を補う練習法があって全員一律に指導はできない。それを知らずに「練習時間の長期化」「(金管の場合)根性で高音を出す」「(木管では)とにかく指を練習しろ」となってくる。こうなるとゴールの見えないマラソンを走らされる気分だ。
 学校によってはこういった指導を今もしているところもあるのでやるせない気分になってくる。[要出典]

私はこの状況は嫌だと思っているし、吹奏楽を一音楽ジャンルとして見たい気持ちはある。それには、この旧態依然とした組織運営をどうにかしなければならない。吹奏楽と聞くだけでPTSDのように嫌悪感を抱くような状況は改善しなければならない。

あとがき

この文章はいつものように書きながら文章構成を練っているのだが、結構難産だった。論理の飛躍がないか、展開が急すぎないか考えてはいるが、読みにくかったら申し訳ない。

吹奏楽がトップダウン式になってしまうのは演奏法における科学的な視点での分析が難しいことで①指導者の感性が優先されること。その指導者が②練習法を教授できず精神論に頼るという条件が重なると一気に地獄になる。

また、とても昔の話なので真偽は不明で論からは外したが、吹奏楽コンクールでは、基準として「リズムがずれないこと」「音程がそろっていること」があるといわれている。採点する上での便宜上の基準なのだろうが、これらを守るために一糸乱れぬ演奏をするのであれば、これが軍隊的といわれる理由の一つかもしれない。


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