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6月は君の匂い。(プロローグ)

あの子は四年前に死んだ。
私はまた、死んだ6月の雨を脳裏に浮かばせてしまった。

雨の中、1人で歩いていた。
私は田んぼに囲まれた道を歩いている。
履いているスニーカーには雨水が染み込み一歩地面を踏む度に靴下から水が出てくるのが分かる。凄く気持ち悪い感覚だ。
制服も濡れてしまい、肌にシャツがくっついてくるのも分かる。
地面には水溜まりができている。それを俯きながら見て歩く。
どこを見回しても田んぼと空しかない、なんて見ていても面白くない景色だ。
もっと都会に住みたかった、と最近は前にも増して思うようになった。
あれはいつだっただろうか。もう4年も前の話か。2人で東京へ行ったのは、丁度今くらいの時期だった。
私は、まだ覚えているよ。

そう考える度に、私はまだあの子に囚われているのかな、と思ってしまう。それは何故か、というのはとっくにわかっている。
あの子が私の親友だから。
なんて単純なのだろうと、私は自分で自分に呆れてしまう。だが、無理もないだろう?私にとっては最初で最後の友達であるのだから。

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