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「地球のすみっこを歩きたい 下町編集室OKASHI代表 小林 璃代子」

 一人ではできないことも
 一人からはじまる
 福島正伸

りよこちゃん(小林 璃代子)と出会ったのは、本牧通りにあるエスニック料理店「Trip」を経営するYoshi(高橋良行)主催の旅飲み、7月末の「Trip第2回旅行好きオフ会」。旅飲みで、たまたま俺の前に座っていたのが、りよこちゃん。偶然にも収録した8月の前週が誕生日で22歳になったばかりだった。彼女とうちの次女は同い年だ。友人、高橋歩に譲られたBAR「ロックウェルズ」を何店舗も経営するオーナー、チェリー中野(中野光宏)も参加してて、彼に「中村隊長!旅業界のレジェンドだよ!」って言われた。旅飲みには、なかなか面白いメンツが揃っていた。

りよこちゃんは、幼少時代より学校よりも外の世界で大人と共に行動してきた現在、YCU 横浜市立大学 国際教養学部の3年生。旅飲みに唯一学生で参加した彼女の話も面白かった。連続放送1,025回目から1回10分、全5回のvoicyラジオ対談、フォローして聴いてほしい

りよこちゃんは東京港区神谷町生まれ。5歳から横浜で暮らしている。小3で親が離婚したこともあって、気を許した大人にしか笑わない不愛想な女の子だったらしい。小4の時に行った初めての海外はベトナム少数山岳民族とトレッキングで有名なサパ。俺も2度行っているが、欧米人にとっては有名なサパも、日本人はほとんど見ない中国国境近くの街だ。

中2の時、母に社会福祉委員会の地域活動ボランティアを勧められ、国際協力・多文化共生をテーマにする神奈川県最大級のイベント、「よこはま国際フェスタ」の運営に関わった。母と一緒に参加したが、グループは別だったという。こういうことが自立に繋がり、今の街づくりの活動に派生しているように思う。この運営に関わる大人は、個性的で変な大人ばかり。「そもそも海外好きは面白い人が多い」と、りよこちゃん。ハチミツについて、あるいは珈琲について語り出したら止まらない大人たち。それぞれの思いを持った大人たちと触れ合った体験は、後の彼女の人生に大きく影響している。

だから、第一声は「学校の記憶がない!」だった。それでも、聞いていくと「部活、美術部はそれなりに楽しかったけど・・・あっ部長もやってました」とさらりと言う。毎月冊子を作り、「あとがき」も書いていたらしい。

高校は県立横浜清陵高校、写真部に所属。モノクロの写真で全国大会、「写真甲子園」に出場し、準優勝した。中高と結構学校で活躍していた。

それでも、まず出てきた言葉が「学校の記憶がない」笑。それだけ学校の外での活動が中学生の彼女にとって刺激的だったに違いない。

高2になって、「よこはま国際フェスタ」つながりのご縁で母親と一緒に西アフリカ・セネガルに行った。アフリカへの渡航費用はバイトしたお金から捻出した。学校の教科書で習うアフリカの偏見だったり、マイナスイメージと、実際に会って話した明るく元気なアフリカの人とのギャップに驚いた。現地に移住した日本人女性にお世話になりながら、西アフリカ起源の太鼓ジャンベに合わせた歌や踊りに五感で触れた夏休みの2週間は貴重な体験だった。

セネガルでは、誰の子だかわからないくらい、みんなで子育てをしていた。現地では意識することなく独自のコミュニティが当たり前にあった。そこに衝撃を受け、日本に帰国してコミュニティづくりから始まる街づくりに興味を持った。セネガルが開発されていく現状を見て「古き良き伝統文化を残しつつ発展させていくことはできないのか?」。それはあくまで「よそ者」として感じたこと。「高校生の今、自分にできることは何か」自問自答した。まず日本で街や地域づくりなどの地域振興に関わり再構築していくこと。

高3の授業カリキュラムが面白くて、卒論のようなものを提出しなければならない。そのテーマは、横浜清陵高校近くにあった「ドンドン商店街」。お店がどんどん取り壊されて駐車場やマンションになっていくのを寂しく感じていた。その卒論がきっかけとなり、身近な商店街を盛り上げたくなった。横浜市区役所主導の取り組みに商店街ボランティアとして関わり始めると、「弘明寺(ぐみょうじ)商店街」の街づくりが理想に思えた。個性の強い面白い大人たちに育ててもらった。

2018年の秋から落語家の桂歌丸師匠が永久名誉顧問を務める、「横浜橋通商店街」では、商店街の理事長からの依頼で冊子づくりをした。企画、取材、執筆、写真、編集をして高3で初めてA4見開きカラーでフリーペーパーをつくった。思いをカタチにしたのだ。

偶然にも、「弘明寺商店街」も「横浜橋商店街」も家族で出かけたばかりだったから、彼女の気持ちが、より伝わって来た。「横浜橋通商店街」は、神奈川県内商店街の活性化を目的に、優れた取り組みを表彰する「かながわ商店街大賞」も受賞している。

横浜市立大学に進学して「横浜橋通商店街」の冊子は2人で始めたが4号までつくり、発行する度にページ数も関わる学生も増えていった。4号では、こんな状況だからこそ対面の良さを伝える、より深化した冊子づくりができた。

「横浜橋通商店街」の真ん中にある空き店舗になった場所を「学生で使ってみないか?」と無償で運営させてもらっている。お菓子屋さんの店舗だったので、名称を「下町編集室OKASHI」とし、りよこちゃんは任意団体の代表を務めている。拠点ができたことで、街づくりに、ガッツリと関われることになった。個人事業主としてやっていくか法人化するか、今、検討中らしい。

大学のサークルでは「三浦半島研究会」に所属。三崎の知られていない魅力を冊子をつくって紹介している。1週間合宿して三崎で有名なマグロだけでなく、音楽やアクティビティなど切り口を変えて、徹底的にインタビューして聞いて、自らも三浦野菜づくりなど「農」を体験して、一緒に考え、冊子にまとめていく。冊子づくりは、やればやるほど好きになり、自分の好きで得意な部分に磨きをかけている。冊子づくりを通して大人たちと関わることで、無意識に感謝する心が育っているように思った。

「散歩と旅が好きで、そんなふうに生きていきたい!」という。りよこちゃんは想いをカタチにする能力に長けてる。今、商店街を歩くイベントも実施しているのだ。ただ、漠然と、「こんなふうになればいいな」じゃなくて、実際に動き始めている利他的な行動力が素晴らしい。何より楽しみながらやっているのがいい。これからも学生目線だからこそできることを、いっぱいやっていってほしい。100年先の未来を見据えて、地域づくりに役立つ、関わる人がみんなワクワクするようなKindle本シリーズ、いつか彼女と一緒に作れたら、いいな。

 人間ていうのは
 もう自分の心の中の力だけなんですよ。
 だから、この今の停滞した社会を
 打ち破っていく青年を作らなあかん、
 日本人は。
 ・建築は自分ひとりの芸術ではない
 ・対等な関係でこそ人は動く
 ・夢の同乗者を世界に探せ
 ・可能性を超えたものが人の心に残る
 ・美しい心が美しいものを作る
 ・建築も人生も思い通りにはいかない
 建築も街も人も育てる!
 TBSテレビ「情熱大陸」安藤忠雄



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