【短編小説】心殺しの末路

私は夫と子供たちに恵まれ、平凡ながら幸せに暮らしていた。
ある日テレビを観ていると、最近若者に人気らしい女性シンガーソングライターがテレビに出ていた。
私はそのシンガーソングライターに見覚えがあった。
そのシンガーソングライターは、私がかつていじめていた奴だった。
小学生の頃、家が貧乏で我慢ばかりでストレスが溜まっていた私は、当時の友達と一緒に「なんか気に食わないから」という理由で彼女のことをいじめていた。
最初は軽い陰口から始まり、男友達に頼んで彼女を殴ってもらったり、物を隠したり壊したり、菌回しをしたり、体育の球技の時にボールをわざと強めにぶつけたり。
階段から突き落としたり、援助交際させたりもした。
最終的に彼女は自殺未遂の末学校に来なくなった。

彼女についてネットで調べると、学校に来なくなった後私立の小学校に転校、その後難関私立の中高一貫校に進学、そして難関大学に入って卒業したらしい。
シンガーソングライターとしての活動は中学3年生の頃からネットで始めてたらしい。
そして今は大手企業の社長と結婚していて、しかもその社長はとても美しい人だった。
今は贅沢三昧な暮らしをしているのだろう。

私は腹が立った。
だっておかしい。あんなゴミクズが人気者になって私以上に幸せに暮らしているなんて!許せない!
だから私は彼女を貶めることにした。
まずネットに彼女の過去をばらまいたり悪口を書き込んだりした。
彼女の旦那に取り入ろうとしたり、とにかくめちゃくちゃにしてやった。
これで家庭崩壊して精神的に病んで不幸になってくれるだろうなと思った。

しかしその考えは甘かった。
私は名誉棄損や侮辱罪、脅迫罪で彼女に訴えられた。
それを知った夫は「離婚してほしい」と言ってきた。
親権は夫にいった。大切な子供たちまで失ってしまった。
ネットの特定班に私の個人情報をばらまかれた。
私が働いている会社にまで被害がいってしまったため、私は解雇された。

どうして私がこんな目に合わないといけないのかわからない。
すべてあいつが、あいつが悪いのに。
夫と別れてから悲しみのあまり暴飲暴食した。
ふと鏡を見たらそこにはかつて美人だった私はいなくて、醜い豚の見た目をしている私がいた。人の目が怖くなって外にも出られなくなった。
順風満帆だった仕事を失った。お金がないから働かないといけないのにどこに応募しても採用されない。もうすぐ貯金も尽きるだろう。親には勘当された。
今は田舎のボロアパートに住んでいるが、家賃が払えなくなったら出ていくしかないだろう。ホームレスは嫌だ、なんでこんな不幸にならないといけないの?
あいつばかり幸せで。私は何も悪くないのに。不公平だ。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【あとがき】
この物語を書いたきっかけは、確か約1週間前の旧Twitterのとあるツイートだった。
「いじめられる方にも原因がある。」
そしてこのツイートに対して
「いじめられる方にも原因があることをみんな知るべき。」
というコメントがついていた。
僕はそれが納得できなかった。そんなもんいじめていい理由にならないだろと。
僕はかつていじめられっ子だったから。
そもそも原因はすべていじめる側にあると思っている。
正直言っていじめっ子は幸せになるべきじゃないし、いじめをした時点で学校に来れなくした方がいいと思っている(自称)いじめっ子追放論過激派だから、このツイートが許せなかった。
この物語みたく僕をかつていじめた人たちが嫌がらせしたくなるほど嫉妬するくらいに、僕も幸せになりたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?