短編SF小説「世界の片隅で孤独を叫んだけもの」

六作目。名古屋猫町倶楽部課外活動「ライティング倶楽部」で11年11月に書いた短編SF。これも東日本大震災小説ですね。文中に出てくる日付は単に、ライティング倶楽部開催日の日付でそれ以外特に意味はありません。
いつもと違い、ギリギリパクリタイトルではないw。オマージュオマージュ。当時ウィキリークスが話題だったんで思いついた。今思うと、シュタインズゲートの影響とかもあったのかw?


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読み返すとあんま上手くない。失敗作。
こういう「理解して欲しいから書き残す」系は五作目の「風が吹くとき」もそうでしたね。オラの中にそういう欲求でもあるんだろうかw。

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世界の片隅で孤独を叫んだけもの

(訳者注:二年前にウィキリークスにより暴露されたこのレポートは、「隊長」自ら英文で記した箇所以外は、CIA分析官が大統領ブリーフィング用に、翻訳困難な彼らの言語を英語に翻訳したものである。それをもとに訳者の責任において前半部分を省略し後半部のみ抜粋し日本語に翻訳した)

FinalReport 2011.11.12
 我が軍の侵攻計画の一貫として、先遣調査隊長を拝命し部下たちともども私がこの地に派遣されてから、既に13年が経つ。そして、軍との連絡が途切れ補給も到着しなくなってから、約11年になる。既に去った科学士官の計算通り今夜、軍に、そして本国に何が起こったか、いや、そもそも本国が未だ存在しているのかどうかを確認できた。よって、このFinalReportを記し、私は自分を殺す(分析官注:彼らには、「自殺」に当たる概念は存在しない)。願わくば、各地に散らばっているであろう同胞の誰かが、いつかこのFinalReportを発見して私の体験や考えを理解してくれることを望む。
 既に他の隊員たちは、連絡途絶の数年後から次々とBaseを去り、現地民の生活に溶け込んでいった。だが隊長たる私は軍人としての責任感以上に、最後まで、可能性を信じたかったのだ。しかしその儚い希望も今や潰えた。
 私は長くこの異文明の中に居すぎたようだ。「自分を殺す」ということ自体が、我々には考えもつかないことであるが、戦争もしない「日本」だけで、毎年3万を越える自分を殺す者が存在する。私が部下と異なり自分を殺す気になってしまったのも、この「日本」に派遣されたせいかもしれない。
 Hikikomoriなる存在も、全ての国民が何らかの義務を果たす我々の文明においては想像もできない存在である。なんと彼らは、国に対する義務を何ら果たすこともなく、一生隠れ家に立てこもっているのである。それでも彼らは餓死することはないどころか「創造者」と賞賛される者さえいる(分析官注:彼らには「芸術」「文学」などの文化的概念・表現は存在しないため、理解に誤解がある)。
 「日本」は軍に関しても極めて謎が多い。最近この国を襲った大災害で、軍は被災者救援・救助に大きな貢献をした。一方で、その直前に隣国「中国」との紛争が発生した際には、日本軍はなんの役割も果たさなかった。「日本」は公式にもオキテ上も、軍を持っていないことになっており、政府も国民もそうした不思議な状態を不思議とも思っていないように見える。軍事力の規模を隠蔽する軍事的欺瞞行動なのだろうが、全国民一丸となるその完璧な防諜工作には舌を巻く。
 ところで、各国政府は「中国」による「侵攻行為」(分析官注:彼らの言語に、「侵略」に当たる表現は存在しない)を批難する。無論我々の政府も、他国による侵攻行為は批難するが、それはあくまでも敵より優位に立つためである。しかしこの「世界」においては、どうも侵攻行為、いやそれどころか防衛本能さえも「悪」とされているようだ。「防衛本能は卑怯者の最後の隠れ家」なる言葉さえあるほどだ(分析官注:彼らの言語に、「愛国心」に当たる表現は存在しない。言葉にするまでもない当然の本能だからだ)。しかし我々の価値観から見れば、「中国」こそ正常であり、「日本」こそが「卑怯者の最後の隠れ家」にHikikomoriしているようにしか思えない。しかしそんな「中国」でさえ、最近「日本」で発生した大災害に対し、軍を使ってまで各種の支援を行なっているのである。「日本」を油断させるための工作、侵攻時に備え地理データ等を収集するための諜報活動の一環と思われる。
 自ら「絶望したはぐれ者」になる者がいるという事実も、我々の常識では考えられない興味深い生態である(分析官注:彼らにとって「孤独」は殆ど死を意味する)。この「世界」は言語による意思疎通が主であるため、書物が重要な存在となっており、「絶望したはぐれ者」の中には、他者との意思疎通を拒否し、書物の世界に逃避する者もいるぐらいだ。今や最後の一人となり「絶望したはぐれ者」となった私も、この世界の書物という存在が生きる支えになってきたという事実は否めない。

 以上で唐突に終わるFinal Reportは、別記の通り他の証拠物の中の一つとして、日本政府を通じてCIAに提出されたものである。彼らのBaseは日本の秋葉原に存在した。彼らの奇妙な行動を目立ちにくくするためと思われる。そのBaseの規模と形態、装備・設備等は、我が国及び全世界で発見されてきたBaseとほぼ同じであるが、11年間本国からの連絡・補給が途絶え機能に障害が見られた他のBaseと異なり、日本Baseは人類のテクノロジーを応用し、かなりの作戦能力を維持していたようである。だがその設備の殆どは、「隊長」によりほぼ完全に破壊されていた。解剖の結果、他に発見されたサンプル同様「隊長」もテレパシー能力を保持していたようであり、彼ら種族においては会話よりもテレパシーによる意思疎通が一般的であるという仮説が補強される結果となった。なお、彼らの母星であるとみられる、地球から約11光年離れたロス128(おとめ座FI星)の消滅(原因は不明)が、Final Reportが書かれた同日に確認されていることは報道の通り。

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