【綿町ダイアリー】#556 今もあの頃のまま「BORN TO RUN」
僕が彼を知ったのは高校生の頃。
プリンスの「PURPLE RAIN」と、
彼の「BORN IN THE USA」が、
音楽シーンの中心だった頃だ。
ハッピーなアメリカで生まれたぜ!
そんなご機嫌な曲だと思い込んでいた僕は、
「BORN IN THE USA」の歌詞を見て愕然とする。
その歌詞には闇しかなかったから。
そんなスプリングスティーンに興味を持った僕は「BORN IN THE USA」ではなく、その10年前にリリースされた名盤「BORN TO RUN」を手に入れた。
それは極上のロックアルバムだった。
中でも「BACKSTREETS」が、胸に沁みた。
“裏通りに身を隠して
辛い愛と挫折感にさいなまれながら
夜 生きるために裏通りを必死で走った”
その歌は、薄暗い闇の中から抜け出せずにいる
当時の僕のための歌のように聞こえた。
太宰治の人間失格を読んだ時と同じように
僕の心臓の奥に届いた。
今、このアルバムを聴いているということは
僕は今、少し弱っているのかもしれない。
そして、僕は今もまだ
裏通りでもがいているような気がする。
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