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(マンション建替え)負担に勝る魅力

 2003年からマンション建替え事業に関わっています。その頃、建替え事業は黎明期です。初めて関わった案件は、容積未消化分(※1参照)と総合設計制度(※2参照)を利用することで、古い建物の2倍以上の専有床が確保できそうでした。区分所有者の負担なしで建設可能ということで、区分所有者からの事業化打診に積極的に応じさせていただきました。結果的に立地性に優れる敷地であったので、各区分所有者の移転費用もねん出が可能となりました。
 このように区分所有者の負担が全くないような状況をつくりだすことで建替え事業は成立されてきました。区分所有者が持っている床面積に対し、再建建物床を無償で配分できる床面積が同面積(=還元率100%という)プラスアルファでなければ事業化はむずかしいと当時の私は判断していましたし、当時、建替えに関わっていた方も同様だと思います。
 しかし、少しづつ、様相は変わってきました。
 2007年に関わった渋谷区の案件の還元率は50%でした。取得した面積が様々でしたが、おおむね負担額は2000万円でした。当然、移転費用、工事期間中の住居費用などはねん出不可能です。しかも、リーマンショック、東日本大震災に遭遇し、事業化に至るまでは紆余屈折の連続でした。
 古いマンションの所有者は、そのほとんどが高齢者です。そんな中での2000万円負担は厳しすぎないかという心配が当初からありました。しかし、実際に建替え事業の原動力となったのは、所有者の次の世代、次の次になる世代の人たちでした。この方たちが負担したり、負担まではしないものの再入居するということで事業が進みました。
バブル崩壊以降、ひっ迫する経済環境、男女雇用均等法が進み、共働きが当たり前となってきました。それに伴い、住宅の都心回帰が進みました。マンションは首都圏中心部の立地、利便性が求められています。当然中心部のマンションは高額なマンションとなります。もともと、区分所有者の2世の人にとっては育ったところであり、なじみ深いところです。なおかつ、ここのマンションは中心部の立地で、億ションと言われてもおかしくないところです。それらが2000万円という価格で購入できる機会に恵まれたということが最終的な事業化の原動力となったようです。
 わたしはこの案件に関わったことで建替えに対する捉え方がかなり変わってきていることに気づかされました。
 結局、マンションとしての魅力があれば、建替え事業は成立していくのかもしれません。2010年以降建設されたマンションは首都圏中心部において、竣工時の販売価格以下で取引された例はありません。ご紹介させていただいた2案件もそうです。今も販売価格以上で取引されています。古いマンションであったものが、価格面を捉えれば大化けをしてしまっているのです。
 最近、「このマンション建替決議できるだろうか」という相談が懇意にしている不動産仲介業者からくるようになりました。どうやら、「建替え決議」の確実性の見込みで中古マンションの取引が左右されるようです。建替えに特化して中古マンションを仕入れている業者もでてきました。区分所有者の負担額単価はデベロッパーが取得する床価格と同額となります。つまり、原価取得ということで、仕入業者としては、それなりのメリットがあると感じてのことです。
 マンションが新しくなるのは、たとえ、負担額があったとしても、かなりの魅力アップです。
「建替えに負担なんかがあるなんて、話にならない!」という考えは一面だけを捉えたもので、新しくなることによる成果の方が、より大きく感じられるようになってきています。

※1容積未消化(この該当地区の容積率は敷地面積に対して400%まで建設可能。既存建物は敷地に対して360%しか建設されていなかったので、40%の未消化分があった。

※2 総合設計制度 原則、敷地面積1000㎡以上で公共利用の空地を設けることで、容積率の割増し許可を受けることができる制度。320%の割増許可を受けた。※1と合せると360%となり、既存建物の2倍の容積率となった。

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