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ジェンダーを超える女性ミュージシャン

はじめに


2020年代。世はジェンダー、ジェンダー、ジェンダー。人類総ジェンダー時代。「女のくせに」は当然として「女性らしさ」なんてワードも、うっかり口しようものならジェンダー警察がすぐさまあなたのSNSに踏み込んできて鬼の首を取ったように大騒ぎ。多様性もなにもあったもんじゃあない。

日本は特に女性に厳しい国、と言われるけど、世界を見渡せば決してそんなことはない。
特にずっと以前から音楽業界、ショウビズの世界は「イッツ・ア・マンズ・マンズ・マンズ・ワールド」なのだ。そんな華やかなるも薄汚れた世界で逞しくしなやかに活躍する女性の一部をピックアップしてみた。

今やこんなことをしても「女性、と言って区別しているのも差別!」と言われるような世の中だけど差別の意図はありません。

こう見えて(見えてない)私、社会福祉士ですからね。福祉の仕事してますからね。

で、選んでみたけど、ヴォーカリスト抜き、っていう縛りを設けたら少っくないわ。ブラック・ミュージック界隈限定。ロックならヴェルヴェッツとかトーキング・ヘッズとかソニック・ユースと次々思い浮かぶ。スリッツやエラスティカなんて全員女性のバンドもあるのにねえ。

なんとなくルール

  • ブラック・ミュージック界隈

  • 「ヴォーカリスト」や、「楽器は弾くけどメインはヴォーカル」の人は除くため、アレサ・フランクリンを筆頭にソロ・シンガーはもちろん、モータウン等のようなヴォーカル・コーラス・グループもなし

  • 「歌うけどメインは演奏者」は含む。その辺は自分の裁量次第。できるだけメジャーどころは外しての選定(そうでもない?)


リスト

Alive!/City life


西海岸、カリフォルニアからの女性グループ。1970年代後半から彼の地では女性運動が活発だったらしく、そういった中から誕生したようだ。本3rdは自主レーベルから。ジャズをベースにしながらラテン風味も多く、ジャケから想像できる「フュージョン」な音。全員女性でこれだけ確かな演奏技術とアレンジをこなしているのは見事。こんないい方したら怒られるけど。

Moonpie/ S.T.


ナッシュビルの白黒混合バンド。とはいえアフリカン・アメリカンはヴォーカルの1人のみ。Alison Prestwoodなる女性がベース。タワー・オブ・パワーの①から勢いはあるが、タワーが誇る鉄壁のグルーヴとは比べようもないスカスカでモッタリとしたリズムのイナタさは正にレア・グルーヴ。メロウからアップなラテンに変化するS・ワンダーの③、アースの⑧などアレンジも頑張っているがいかんせん抜けきらないB級の匂いが堪らない。ベース・プレイも別段うまいわけではないが、アメリカのローカル・バンドらしい趣きが微笑ましい。

Joe Pass/Better days


「ジャズ・ギターのヴァーチュオーソ」は禿〇たオッ〇ンやんけ!とツッコみたくなるが本作は女流ベーシストCarol kaye(キャロル・ケイ)のレーベルからで、プロデュースも彼女。エレキ・ベースも弾いている。一応「ジャズ・ファンク」の名盤と言われているけど、グラント・グリーンとかメルヴィン・スパークスのような暴走炎上機関車とは違い、何とも小粋な作品。
ジャンル問わず多くの作品に参加している彼女。某ローリング・ストーン誌は2010年代に入り日和りまくった各ランキングを発表しているが、彼女は「歴代ベーシストランキングで」5位にランクイン。そのくせ後述のミシェル・ンデゲオチェロははいっていないんだからなあ。「禿〇た〇ッサン」もルッキズム、差別なのでやめましょう。

Shirley Scott/One for me


プレスティッジやインパルスからのリリースで知られるオルガン奏者。本作は1974年のストラタ・イーストから自主製作的なリリースで、ドラムはビリー・ヒギンスとくればクロいに決まっているというもの。ディープなブルーズに漂うアフロ感は彼女の凛とした誇りを感じさせる。「制約を受けずにやりたかった」とは本人。そのためにストラタ・イースト。ハロルド・ヴィックも参加。

Adele Sebasitian/Desert fairy princess


ホレス・タプスコットのニンバス・レコーディングより。女流フルーティスト。ド頭からアフロ~中近東の香り漂うムードは日本人にはむしろわかりやすいかも。スピリチュアル・ジャズに分類されることが多いけど、難解なそれではなく穏やかで揺蕩うよう美しい雰囲気。ジャケットも素敵。

Dorothy Ashby/Dorothy's harp


レア・グルーヴ界では有なハーピスト。「afro-harping」など人気作も多い。ここではカデットからの1枚を。ややもするとイージーリスニングになりそうだけど、後にレア・グルーヴで人気を博しただけあって強めのビートが良い。スティーヴィー・ワンダーはじめ有名作品にも参加している人なので、多くの人は実は耳にしているかもしれない。

Me'shell Ndegeocello/Ventriloquism


女流・歌えるベーシストならエスペランサを選ぼうと思ったが有名人なので、先輩格にあたるこの姐御を。90年代のデビューから常に本当の意味で「独自」で「独特」あったベーシスト・ヴォーカリスト。地を這うベースに同じくドスの効いた低音ヴォーカルはド迫力。2018年リリースの本カヴァー・アルバムを聴けば現在もなお「独自」の存在であることがわかる。見た目もカッコいいんだよなあ。ワイのエスペランサちゃんはキュートだけどね。

Muriel Winston/Fresh viewpoint

ストラタ・イーストからの(よく言えば)牧歌的作品。ヴォーカリスト・ピアニストのミュリエル・ウィンストン。スタンリー・カウエル、ビル・リー、クリフォート・ジョーダン、ビリー・ヒギンスにハロルド・ヴィックというごく一部の人間にとってはストラタ・イーストのオール・スター勢ぞろいのメンバー故、さぞかしドス黒、アヴァンなスピリチュアルが聴けると思いきや、子供たちと楽し気に歌うのどかな曲多し。まあのどかというかなんと言うか…。「母」として子供たちに贈るソング・ブックという趣かな。おおらかで穏やかなアルバム。

まとめ

やっぱりヴォーカル・コーラスでの女性は多いけど「純然たる楽器奏者」に限ると少ないね。ロック(白人)周辺のほうが圧倒的に多い。「ロックって自由とか叫んでいるけど結局は男性主義」みたいに言われるけど、比較するとましな方では。

「女性頑張れ!」っていうとそれもまた「「女性」ってくくりで考えること自体差別!そもそもすでにがんばっている!」って言われてしまう世の中。もうこれわけわからねえな。
まあいい音楽には性別なんて何の関係もないんで、音を聴いて素晴らしいものを聴いて行くのが良いと思うのです。


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