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B'zのファンク魂を考える

B'zとファンクと私


90年代にティーンネイジャーを過ごした世代にとって、ビーイング系は避けては通れない青春のサウンドトラックである。
その中でも特にB'zは断トツで人気があり、自分ももちろん中学~高校時代にドはまりして、マインドも進歩したり感性が誘惑されたり創造力が突き抜けたりしていた(「Off The Lock」も「Break Through」も後追い)わけで、邦楽の知識が乏しいくせに一時期のB'zだけはやたら詳しかったりする。

ご周知のとおり松本孝弘、いやTak MatsumotoはB'z結成前はセッション・ギタリストとして活動しており、当然ながら発注元のリクエストに応え様々なジャンルやスタイルのギターを弾かなければならなかったであろうことは想像に難くない。特にTM Networkのサポートは有名。TMは自身の音楽並びにファンのことを「Fanks」なんて呼んでいるので、ファンキーと言うかダンス・ミュージックというものへの関心は強いグループ(とくに小室は)なのであろう。(ちなみにTMは「Telephone Line」とか「Time Passed Me By」とか「Girlfriend」とか木根の曲が好き)

さて、そんなB'zさんの「ファンク」とは言えば、私の愛するJB系のドス黒熱血ファンクというよりは、70年代中期以降のディスコ~フージョン~AORといったジャンルの中での「ファンク」や「ファンキー」という趣の曲がほとんど。
特に初期は青山純などのミュージシャンが参加していることもありそれっぽい曲も多い。

そもそものコンセプトがソウルやAORの「Friends」シリーズからの選曲は少なめに。

Funk Side Of B'z


Bad Communication「Bad Communication」収録

いくつかのヴァージョンがあるこの曲だがここではオリジナル(?)で。発売前、ディスコに12インチを配ったりしていたらしい。さんざん言われているようにZepの換骨奪胎、と言うかそのまんまである。パクり云々よりもこの曲をディスコ向けに仕上げたTakのセンスに注目したいところ。私は「Loose」収録の「000-18」が好き。



Love & Chain~gozilla Style~「Mars」収録

イントロのハードなギターのトーンはファンカデリックを彷彿とさせる。このイントロは何となくのちの「Zero」に受け継がれているような気がする。知らんけど。



Hey Brother「Break Through」収録

80s(エレクトリック・)ファンク風味。ミッド・テンポでいかにも80sなベースの音処理にはやや苦笑するが個人的にはかなり好きな曲。残念ながら今となっては本人たち含め誰からも振り返られることのない1曲。ファンク密度という点ではB'z史上最高峰と思う。



Vampire Women「Risky」収録

細かく刻まれるギターのカッティングはTakお得意のテクニック。前作と本4thあたりはブラコン的な見た目だが音的にはそうでもない。が、セリフ込みのこの曲は何となく当時のブラコンの安~いエロスな感じがある。



Tonight (Is The Night) 「In The Life」収録

ファンクっちゅうかソウルな感じをめざしたのであろう。稲葉は山下達郎を意識していたとか。
これも時代柄か、クワイエット・ストーム的アーバン・メロウな感じの仕上がりになっている気がしないでもない。(そうでもない?)
本アルバムを中学生の時に聴いた自分はまだ「サラ・ヴォーン」も「マーヴィン・ゲイ」も知らなかったし、当然当時はネットもサブスクもなかったのでどんなミュージシャンかも知ることができなかった。ちなみにB'zの歌詞からデヴィッド・ボウイ(「It's Rainning…」)もジミヘン(「Guitar Kids Rhapsody」)も知った。



Native Dance「Run」収録

イントロ~Aメロのチャカチャカ鳴るお得意のギターやベース・リフが良い。全編を貫くTM直系のシンセは頂けない。ライヴでは振付がある間奏部のノリも◎。よりファンク寄りなアレンジで聴いてみたいが、ライヴでもよりロック寄りな演奏なんだよなあ、ロック・バンドなんだから当たり前だけど。



The Border「7th Blues」収録

ファンクと言うかスイート・ソウル。まあ直言すればレニクラのアレである。「暗黒期」と呼ばれてる時期の2枚組はタイトルのせいもあり「ブルーズ」作品と言われがちだが、音楽的には「ブルーズ」より「ロック」という表現がやはり似合う。本作はスカパラ参加のホーン入り曲が何曲かあり、その辺は80年代末以降、ブルース・フェアバーンの下で復活を遂げたエアロスミス(特に「Get A Grip」)を意識しているんだろうなあという印象。



傷心「Friends Ⅱ」収録

「Friends」シリーズからはこの1曲にしてみる。
ワウ・ギターとエレピ、パーカス。疾走するフルートのソロ。分かりやすいぐらいのソウル、ファンク風にしあげたかった感がひしひしと伝わってくる。アウトロにおける稲葉の硬いフェイクはソウルというよりやはり「ロックの人」であることを感じさせる。



銀の翼で翔べ「Brotherhood」収録

イントロから何となく揺れるリズム。Aメロでスッチャカスッチャカお得意のカッティング。ホーン・セクションも使ってのサウンドだが、スワンプ感があるわけでなくファンク・ロック風になるわけでもなくしっかりと「歌謡ロック」に仕上がっている。こういうサウンド・メイクにするならより泥臭く重たくスンワピーにすればいいのに…と思ってしまうけどかっこいい。満園&黒瀬というリズム・セクションはそれまでのリズム隊と違って未熟がゆえの独特なグルーヴでこれはこれでアリ。



Seventh Heaven「Eleven」収録

ド頭のクラヴィに心躍る歌謡ファンク・ロックといった所か。前作「Brotherhood」から2000年代前半はヘヴィでハード・ロック寄りな音を追求していたように思えるが、単純なハード・ロックではなくそれこそZepを意識していたような印象を受ける。ガチのZepファンがそう思うかは知らないが。



コブシヲニギレ「Eleven」収録

「Eleven」らしいヘヴィなナンバー。
ミドルでやや変則気味なギターのリフが横揺れのリズムを生み出す。
「Brotherhood」と「Eleven」ってやたらと「ヘヴィ」「ハード」って言われているけど微妙に横揺れする曲が多いような…。
参加メンバーのせいなのか、本人たちがそういう気分だったのかは不明。



MVP シングル「Splash」 2nd Beat収録

初っ端からのディスコ・ビートはやや苦笑。途中の「エム・ヴィー・ピー!フワ・フワ」っていうコーラスはややどころかマジ苦笑。こういうのを恥ずかしげなくできるのがB'zの良い所。弦も入れてフィリー風味…いやもっとストレートにディスコ風味と言ったほうが正確。


Fly The Flag「Circle」収録


これもギターのリフがリズミックな感じで、ハットを裏打ちしたくなる。wikiによるとディスコ風に仕上げるアイデアもあったんだとか。


Black And White「Circle」収録

タイトルはMJっぽいのでそっち系かと思いきや、ヘヴィでオリエンタルなリフは「Physical Graffiti」あたりのZepを想起させるがファンクを代表する1曲「Cissy Strut」っぽくもある。変拍子ではないがAメロもなんとなく「Kasmir」風である。2000年代では1,2を争うぐらい個人的なフェイバリット。


弱い男 「Diosaur」収録


これも70s中期~80sのディスコ風リズム隊とクラヴィネットというB'zが横ノリしたいときに使うパターンだが、加えてサックス・ソロまでぶち込んでのダンス・チューン・アレンジ。それでも全体を聴けばなぜか「B'zのロック曲」に仕上がってしまうのは好みの分かれるところ。


Wolf「New Love」収録


シェリル・リンから始まって続くギターもどこぞで聴いたようなフレーズは80年代感満載。こういうお遊びがTakは好きだが、同時にやたら「パクり」とか言われやすい。
スタジオ盤のベースは亀田誠治らしいが、個人的にはコロナ禍のせいで短命に終わってしまったモヒニ・デイがいるバンドの音をもう少し聴いてみたかったと思う。もちろん清が悪いわけではないよ。


まとめ

こう聴いてみると、Led Zeppelinの影響が強いんだなという感想。Zepもただのヘヴィ・ハード・ロック・バンドではなく、多くのブラック・ミュージックを下敷きにしているグループだからね。

と思ったのだけど、結局自分のロックの知識が乏しいからZepの名前ばっかり出てくるのであって、参照元はもっと別のバンドにあるのかもしれない。
交流のあるスティーヴィ・サラスとかもファンク寄りなロックみたいだし。(聴いたことない)



結論


ここまで読んできてくれたあなたは何度もこう思ったはず。

「この曲は別にファンキーな感じじゃないでしょ」
「さすがにこれはこじつけが過ぎるんじゃね?」

仰る通り。
そう、できるだけ頑張って「ファンク」な要素を探して捻りだしてきたけど、最初に記した通り、熱血ファンクはほとんどないのよね。
B'z聴いてファンカデリックを思い浮かべる人間なんてそうそういないだろうし。

で、結論

B'zにファンク魂はない!

いや、ないわけではないんだけど。
あくまで曲を構成する中で「ファンキー」な味付けと言うか、アレンジをするだけであって、その元ネタとなるのは最初に記した通り、フュージョンやAOR、ディスコといった所。
やっぱりB'zは「ロック」というジャンルが相応しい。

でもこんな視点からB'zを聴いてみるのも面白いかも。
B'zでこんな選曲のプレイリストはそんなにないだろうし。


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