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2023年を振り返る。ロビー・ロバートソン。シェイン・マガウアン。チバユウスケ&2023年のアルバム

以前ポストした「1980年ベストアルバムランキング」において自分はこのように記している。

自分にとって「ロック」とはザ・バンドとポーグスがあれば完結するな…という発見があった。

シェイン・マガウアン

2023年11月30日

シェインが亡くなった。

Shane MacGwan

カタカナだと「シェイン・マガウアン」とも「シェイン・マクゴワン」とも表記される。

若い頃からいつ死んでもいいような破天荒、まさに「ロック」で「パンク」な生き方をしていたし、近年は体調不良のニュースも耳にもしていた。やたらと体が大きくなって車いすに乗っている姿も見たことがあるので、まあ長くはないのだろうと思っていたのだが、やはりいざその時が来ると寂しいものがある。

パンク・ドキュメンタリー映画にデビュー前の姿が映っていたり、チバユウスケがバックステージでサインを求めたら「Help」って書かれた等々、奇行(?)のエピソードには枚挙がない。

アルコール依存症でとにかくおかしな言動や行動が多く自分の周りには絶対にいて欲しくない人物ではあるが、そんなどうしようもないダメ人間なのにあんなにも楽しい曲や切なくて泣ける曲と歌詞を書ける正にロック・ヒーロー。

2000年代以降のリユニオン、いやそれ以前から(今だったら炎上待ったなしの)ヘロヘロのライヴ、それどころかステージを全うできないこともある姿勢には批判も多かったけどそれも含めて「ロック」であった。

自分が観たのは確か2006年か2007年のダイヤモンドホールだったと思うけど、その時は割としっかりしていた。
「Fairytale Of New York」もアンコールの「Fiesta」も聴く事ができたし。
もちろんシェインは常に飲んでいたけど。


ロビー・ロバートソン


今年の8月にはロビー・ロバートソンも亡くなっていた。

亡くなったときにザ・バンドの全アルバム(ロビーがいないときも含めた)レビューとか書いたけど冷静になれず、書きかけの物が今も下書きに眠ったままだ。

ロビーは日本でも多くの追悼企画があったので、今さら多くをことをここで語るつもりもない。

音楽に対して真摯で真面目で研究熱心。
それでいて野心家でもあるため売れることに対しても積極的。それ故に後期はメンバーとの確執もあり、レヴォンに嫌味や皮肉を言われたりもしていた。

ボブ・ディランのブートレッグ・シリーズ「ロイヤル・アルバート・ホール」でザ・バンド(当時はホークスという名前でレヴォンも不在)の演奏を初めて聴き衝撃を受け、1枚目から聴き始めたけど、当初は渋すぎて全く理解できず。学生時代の長い冬休み、凍えるような一人暮らしの部屋でセルフ・タイトルの2ndを繰り返し聴くうちにようやく徐々に良さが分かり始めると、その後はアメリカン・ルーツ・ミュージックの泥沼に引きずり込まれた。私のブラック・ミュージック好きの基盤がここで誕生したと言える。「ロッキン・チェアー」は実家に帰省する電車の中でいつも聴いていた。
今にして思うと20歳前後でザ・バンドを聴いて感動していたなんてずいぶんとオッサン臭い大学生だ。もっとアオハルすればよかった…



ザ・ポーグスとザ・バンド
ロビーとシェイン



どちらも伝統的になルーツ・ミュージックをとても大事にしていながられに埋没しすぎることなく自分たちのやり方で音楽を演っていたバンド。

過去の遺産、自身のルーツを受け継ぎながら自身の表現を目指す。
これこそが自分の理想の「ロック」であり「音楽」だと思うわけ。
この2組こそその最たるグループであった。
と言うか「ロック」ってそういうものだよ。
って教えてくれたのがこの2組だからね。順番が違うか。

そして歌詞もそう。
これも上記「1980年代ベストアルバムランキング」で言ってたけど、
踏みつけられてボロボロになって、どれだけ頑張ったってなにもうまくいかない。それでも泥にまみれて、奪われ続けても生き続ける「負け犬」、「持たざる者」たちのうた。

トム・ウェイツが2005年のポーグスのアルバム・リイシュー時に寄せていた詩が見事なまでにそれを言い表している。

-The Pogues
Their Music Is Like Brandy For The Damned
「ザ・ポーグス。奴らの音楽はろくでなしのためのブランデーみたいなものさ」

チバユウスケ


考えがまとまらないまま数日間掛けてこのポストを書いていたら、チバユウスケの訃報も届いた。

高校生の時に「リリィ」に出会い、「ロックは洋楽。邦楽ロックなんてだせぇ」と当時ありがちな洋楽コンプレックスに陥っていた自分に強い衝撃を与えてくれたThee Michelle Gun Elephant。

ハマっていたのは「Chickin Zombies」あたりまでの3~4年間に過ぎなかったけど、チバが来ていたホワイトのデニムジャケット(Gジャン)やシルバーリングを真似したりしていた。
インタビューで曲とかアルバムのことを聞かれても「これはいい曲だ」ぐらいしか答えないぶっきらぼうな感じもカッコよかったなあ。

90年代末はミッシェルのようなバンドが急にヒットチャート上位に入るようになって、邦楽シーンの景色が変わる瞬間に立ち会えたことは今となっては良かったと思う。

ただ売れたせいかわからないけど、バンドはどんどんと尖って行き、「ギヤ・ブルーズ」ぐらいから初期のポップさが後退していってしまったこと、自分の好みが渋いルーツ・ミュージックに移っていったせいもあり、その後はなんとなく聴く、という距離感になってしまった。
いま改めて聴いてみるとそうでもなかったので、当時の自分の心境の問題だったのかもしれない。

ミッシェルはその鋭角な活動を鈍らせることないどころか、ますます速度を上げエッジを研ぎ澄まし、暴風雨の如く時代を駆け抜け去って行ってしまった。

アベフトシが逝き、その音楽は永遠になった。
今回チバユウスケも逝ってしまったけど、ウエノとキューちゃんは元気だからね。
まだまだロックは終わらないぜ。


昔の音楽が好きなので近年は訃報を追い続けたらきりがないけど、この3人は多感な思春期を彩ってくれたミュージシャンなのでショックが大きかった。

2023年の購入アルバム


2023年締めくくり。

今年はとにかく暇さえあれば自転車(ロードバイク)に乗っていたため、音楽を聴くのは通勤・帰宅時の車の中ぐらい。しかも車中はSpotifyのためフィジカルで購入した作品は極少。たぶん真剣に音楽を聴くようになった19歳以降でもっともCDやヴァイナルを購入しなかった1年であった。

しかもヴァイナルは0枚!お金のほとんどを自転車関連に使ってしまったせい。レコードストアデイも見て見ぬふりし、もはや「音楽好き」を名乗れない体たらくであった。
もう新譜はサブスク、フィジカルはリイシューのみというスタイルが定着。


2023年にフィジカルにて購入した作品


V.A. / J-Jazz Vol. 4: Deep Modern Jazz From Japan - The Nippon Columbia Label 1968 -1981

 Soul Liberation / Who Are You?

Pharoah Sanders / Pharoah

Roy Brooks And The Artistic Truth / Black Survival - The Sahel Concert  At Town Hall 

V.A. / Rebirth of "TBM" The Japanese Deep Jazz Compiled by TATSUO SUNAGA

Ernie Story / Meditation Blue

Nite-Liters / Morning,Noon & The Nite-Liters 

バイソン片山 / ファースト・フライト

辛島文雄 / ピラニア

上野好美アンドヒズ・ベストフレンズ / 太古の海鳴り

「ベストアルバム」ではなくこれが購入したものの全て。
既にCDやヴァイナルで持っている作品を買い直ししたものがあるので正確にはこれプラス何枚かあるけど。

2023年まとめ

色々な人が「年間のベストアルバム」を上げているけど皆さん凄いね。
「ベスト50」とか「ベスト100」とか、どんだけ音楽聴いてるのよ。だってベスト50を挙げるにしても少なくても50枚以上聴いてるってことでしょ。
学校や会社、家庭があってそんなに音楽と向き合える時間があるのが羨ましい…。いや時間はなくても時間を作って聴いているんだな、ほんと素晴らしいと思う。

今や「好きなこと」や「趣味」に「音楽です!」って自信を持って答えられなくなった2023年の私。

来年も特に世の中の流れに左右されることなくマイペースに、自分の好きな音楽を聴いて行く所存であります。

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