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イタリア料理とコーヒー(後編)

【焙煎所NAKAJIスタート】
某自家焙煎珈琲会社に3年ほど勤めたところでいろいろな事情が重なり退職をし、それからしばらくした2020年に再び個人事業主となりました。今回はカフェではなく焙煎トレーナーと自分で焙煎したコーヒー豆を販売することを軸にした「焙煎所」です。店頭でコーヒーを提供するカフェはかなり迷いましたがやらないことにしました。焙煎トレーナーとしてやっていきたいという気持ちが強かったからです。

 そしてもう一つやりたいことがありました。

良い品質のコーヒーを美味しいものと一緒に楽しむ場に連れていきたい。つまり料理とのペアリングです。コースの〆ではなくコース中に料理と一緒にコーヒーを楽しむということを形にしたいということです。料理は自分ではできないので同じ方向を見て取り組んでくれるシェフを探していくつもりでした。

【背中を押した存在】
料理にコーヒーをペアリングすると言ってもコーヒーといえばコースの最後の〆で登場するのが普通だと認識されている飲み物。これを料理にペアリングしたいと言って誰が受け入れてくれるか。まして同じ目線(ミシュランの星の獲得)を目指して。

 味としてはそれが可能だと自分で思えるものができており、あとはそれを一緒にやってくれるシェフを見つける段階でした。しかしそこからがなかなか進めずにいたのです。そんなとき私の背中を押してくれる人を知ることになります。米田肇さん、大阪で「HAJIME」というフレンチのお店を経営されているオーナーシェフでオープン1年でミシュラン☆☆☆を獲得されたまさに世界トップシェフです。

 背中を押してくれたと言っても直接ではなく、私がその方のドキュメンタリーを見ていた時、肇さんがスタッフに「常識なんて捨ててしまえ」そんな言葉をかけている姿を見たのです。それを見た瞬間「本当のトップは既成概念に囚われない」と知ったのです。本当に目から鱗が落ちるとはこのことだと思いました。このことから躊躇していた状況を変えるための一歩を踏み出すことができ、いま一緒にペアリングに取り組んでいるイタリア料理の吉田シェフとチャレンジをすることになりました。

 現在スタートしてから3年目を迎える料理とコーヒーのペアリングは少しずつ、しかし着実にその味わいを心から楽しんで下さる方が増えてきていると実感しています。この取り組みは肇シェフにもお伝えしており一日も早く肇さんにも味わっていただきたいと思っています。

 【合わせるのではなく】
イタリア料理とコーヒーのペアリングを作る際、シェフと私は事前に味を合わせるということはしていません。コースのテーマを言葉で決めておき、そのテーマに合わせた料理とコーヒーの味をお互い作っていくのです。

 お互い相手の味を超えていこうという気持ちで取り組んでいます。このように お互いが 鍔迫り合いをするように取り組むことで合わせる以上の効果が生まれていると感じています。

 相手の味を超えていこうと言っても 出し抜くとは異なり、テーマをより深く理解し、より広く表現するという意識を持って臨むということです。それはフィギュアスケートのペアの ダンスを見るというよりは、剣道の試合を見ているのに近いかもしれません。

 お互いの間に力の差があるとどちらかが負けてしまいます。それは見ていて気持ちよく盛り上がれるものではないと思います。そうではなく拮抗した力の持ち主同士の試合は見ている側もその一進一退の攻防に手に汗握る面白さを感じるのではないかと思っています。吉田シェフと私の関係は この剣道の試合に近い関係であると思っています。

 だからこそ私たちのペアリングを食べに来てくださる方 一度ならず二度三度と足を運んでくださるのだと思っています。

 今年の秋は11月に開催が決まっています。まだまだ認知をしていただいているとは言い難い このペアリングに繰り返し来てくださる方はもちろん、新たに足を運んでくださる方を増やしていきその面白さを広く伝えていきたいと思っています。

 これを読んでくださり興味を持っていただいた方 は是非今秋のイタリア料理とコーヒーのフル ペアリングこちらでも ご案内していきますので是非ご予約し軽井沢に足をお運びください。

 皆様のご参加を心よりお待ちしております。   

            COFFEE ROASTERY NAKAJI
           中村元治

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