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はじまりはカフェ巡り

 コーヒーの焙煎について書くことが多いのですけれども、コーヒーに関心をもつようになって初めにやったのは「カフェ巡り」でした。それを始めた当時は名古屋に住んでいました。出勤するときにドアを開けると名古屋城が目の前に見えるところに住んでいて自転車で出かければそれなりにカフェなどがある地域に住んでいたのもあり、休日には学生時代の同級生とふたりで朝から夜間でカフェをハシゴしていました。

 名古屋といえば「モーニング」というメニュー的なものがあります。朝、喫茶店などに行き、コーヒーを注文すると自動的にトースト、ゆでたまご、サラダなどが付いてくるのです。「メニュー的」と言うのは自動的についてくるからです(でも強制ではありませんから断ればでてきませんよ)。記憶に残っているモーニングメニューは、コーヒー注文したらうどんとおいなりさんが出てきて、最後にコーヒーが出てきたというものでした。

 私たちは「いろいろなコーヒーを飲む」ということを目的としていましたけど、朝の集合はモーニングが出てくるお店が多かったです。集合してモーニングを食べながらお互い事前に調べておいた店を披露しあい、どういったルートでどの店に行くのかを話す時間がとても楽しかった記憶です。集合時間は朝7時頃であったころとも珍しくありません。

 そのあとは自転車でひたすら名古屋を巡っていました。昼飯はケーキなんてこともざらで朝から晩まで男二人で走り回っていました。そのうち名古屋市内で行きたい店が減ってくると車に自転車を積んで出かけるようになりました。回っていると初めのうちは「おしゃれなカフェ」に行き、そのうち「コーヒーの美味しい店」に行くようになっていきました。そうなってくると否が応でも行く店は「自家焙煎をしているお店」に絞られていったのです。

 そうやってどんどん深みにはまっていくのですが、そこにはいくつかの分岐点があると思います。「カフェ好き」としていろんなお店を体験することを楽しみとする。「コーヒー好き」いろんなお店の焙煎の特徴を掴んでその時の気持ちにフィットしたお店に行って自分の時間を過ごすことを楽しみとする。など。

 私も「自分の楽しみ」としてスタートしたカフェ巡りでしたが、次第に少しずつその方向性が変わってきていました。自分が友人とコーヒーを飲みながら楽しく話す時間を「お店」だけではなく「おうち」に持ち込むようになったのです。お店の味をおうちで再現する、というよりは「お店で過ごすような楽しさをおうちでも」という表現の方が近い気がします。

 もちろん美味しいコーヒーを飲むことで気持ちは楽しくなりますから私自身が美味しいと思ったお店のさらに美味しいと感じた豆を購入し、その味をお店で飲んでいるのと同じような味を目指すようになりました。そうしなければお店で味わうあの空気感を"おうち"で生み出すことはできないと思ったからです。

 そうやって過ごすようしばらく経つと"おうち"での会話が楽しいものになっていったように感じます。これを始めた当時、こどもは幼稚園にも入っていない年齢で、一緒にカフェに行ったりすると周囲に気を遣うことも少なくありませんでした。ところが"おうち"だとその気遣いをすることなく過ごせることに気づいたのです。しかもお酒を飲むわけではないのでこどもも一緒に楽しむことができる利点つき。

 このように「カフェ巡り」から始まり、少しずつ少しずつコーヒーの深淵へと向かい始めたのです。いつの間にか缶コーヒーを飲まなくなり、コーヒーを飲んでいなかった職場にはお気に入りの自家焙煎店で購入したコーヒー豆を持込むようになっていました。すっかりカフェ巡りから離れ、自分で美味しいコーヒーをドリップすることに夢中になる姿に変貌していました。

 この先、手網焙煎を始めるようになり、変貌はさらに加速していくのですがその当時はそれを知る由もなく日々事件捜査に励んでいたのです。

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