既往歴に潜む傷害発生の危険因子(ハムストリングス、鼠径部、および膝関節を受傷した選手が、翌シーズンに同じ傷害を負う確率は2~3倍に上る)
傷害予防の方策
青少年における傷害の一時的な、また生涯にわたるマイナスの影響を考慮すると、そのようなマイナスの結果を避けるためには、青少年期の早い段階で傷害予防の方策を立てて実施する必要があります。
青少年アスリートのスポーツ傷害は成長と発達、低い体力レベル、不十分な身体準備、低い運動能力、および基本的な運動スキルの不足などに関連性があります。
したがって、青少年アスリート、特に状況に左右されやすいチームスポーツでは、最適なレベルのコンディショニングと神経筋コーディネーションは、必ず取り組まなければならない要素になります。
さらに、青少年アスリートにおいて最も修正可能なリスク因子は、競技スキルを実行中の異常な運動パターン(着地動作における膝の動的外反など)になります。
既往歴
既往歴は、将来的な傷害発生の重要な危険因子として報告されています。
例えば、足関節および膝関節捻挫の既往歴を有する男性サッカー選手は、同じ部位に再受傷するリスクが高くなりました(オッズ比前者が4.6、後者が5.3)。
Ekstrand&Troppが、男性サッカー選手639名を1シーズンにわたって追跡した調査では、足関節捻挫の既往歴を有する選手の受傷リスクが2.3倍に上りました。
また若年男子サッカー選手においても、この危険因子を裏付けるデータが報告されており、既往歴を有する男女選手(年齢範囲U12~U18)が再受傷するリスクは2倍に上りました。
さらに、既往歴が2回以上の被験者ではリスクが3倍となり、再受傷リスクは受傷回数ととも指数関数的に増加するとみられることから、既往歴は若年サッカー選手に直接関連のある危険因子と考えられます。
大腿四頭筋とハムストリングスにおける内側外側の筋活性化のアンバランス
筋の内側と外側のアンバランス、特に大腿四頭筋とハムストリングスのアンバランスは傷害のリスク因子であると説明されています。
男女のACL損傷をもたらすことが知られている高リスクの運動パターンで大腿四頭筋の活性化パターンを調査した研究によると、女性は男女に比べより高い割合で大腿四頭筋の外側が活性化することが示されています。
これは動的な膝の外反の原因となりACLの断裂をもたらします。
さらに、この傷害メカニズムはハムストリングスの外側の活性化が優位であることにより、さらに増大します。
膝蓋大腿疼痛症候群に関しては、初期のエビデンスでは、外側広筋に比べ内側広筋のより小さく長い活性化が、この症状の高頻度の発生に関連があることが示されています。
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