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ランディングとカッティングの女子アスリートパターンと前十字靭帯損傷(着地中のアライメント不全は、膝関節過伸展、脛骨内旋が起こり、膝関節最大屈曲角が10.5°減少する)

神経筋的側面とバイオメカニクス的側面

前十字靭帯(ACL)、特にピボット、減速、カッティング、ジャンプ、ランディング中に発生するものには、バイオメカニクス的因子と神経筋系因子が関係するとみられています。

第一に、運動中の下肢のアライメントが、ACLを含む膝関節の支持機構にかかる負荷の量に影響を及ぼすと考えられています。

下肢のアライメント不全はACLへの負荷を増し、やがて構造的損傷をもたらすか、あるいは過度の負荷や力を伴う場合は、即座に完全な構造的破壊をもたらす可能性があります。

バイオメカニクス的側面:膝関節屈曲

女子アスリートは男子よりも着地やカッティング時の膝関節の屈曲角が小さく、それがACL損傷率の高さを招いている可能性があります。

※ACLは膝関節伸展時に大腿骨に対して脛骨が前方へ変位することを抑止する主要構造。

膝が十分に伸展された際にかかる力の75%をACLが引き受け、着地やカッティング時の膝関節の屈曲角が小さいとACLが耐えなければならない歪みが増えます。

靭帯の損傷

靭帯の損傷とは、持続的な負荷によって生じた靭帯の変形を指します。

靭帯の線維は負荷がかかると最初は伸びますが、その負荷が持続すると組織が硬直するため、より大きな力によって靭帯の伸びを維持しようとし、この線維の伸びが歪みをもたらし、本来の長さに対して組織が変形します。

歪みが増すと靭帯は機能不全になり、裂けてついには断裂する可能性があります。

膝関節の屈曲角減少

膝関節の屈曲角減少に伴う受傷リスクは、若年女子バスケットボール選手、サッカー選手、バレーボール選手を対象とした研究では認められており、シーズン中にACLを損傷した女子アスリートは、そうでないアスリートよりも、着地中の膝関節の最大屈曲角が10.5°小さいとされ、接地初期には膝関節の屈曲角に差異はみられませんでした。

※接地初期とは足が十分に押し付けられて床反力が発生する瞬間を指し、床反力とは地面が身体に対して行使する力であり、自重の大きさに等しくなります。

ジャンプの着地では、地面に対して足を押し付けることによって運動量を消散させますが、このとき床反力が発生し、生じる床反力は、身体が地面に行使する力と大きさが等しく、向きが反対の力になります。

しかし、減速中は、自重がもたらす力よりも床反力のほうが大きくなります。

自重がもたらす力の結果として発生する床反力の大きさは、着地中の身体姿勢で着地すると、素早く減速を行わなければならず、したがって平均およびピーク床反力が大きくなり、これが受傷リスクを増大させる可能性があるとされています。

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