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若年サッカー選手の傷害危険因子と生理学的システムの成長と発達(骨と筋腱複合体の成長速度のずれは、弛緩時に関連組織が受ける力を増大させ、骨端線の牽引損傷を引き起こす要因の一つとなる)

生理学的システムの成長と発達

各種の生理学的システムの成長と発達にばらつきがあることは、特に成長が加速する時期において、傷害の主要な危険因子の一つと考えられます。

例えば、骨格構造が急速に成長するのに伴い、筋系はそれに合わせて長さ(骨の成長がもたらす張力を正常化するため)と大きさを増大させ、力の発揮能力を向上させることで、大きく重くなった骨格を支持し、動かせるようにしなくてはなりません。

ところが、実際には、先に骨格構造が成長することによって、筋組織の形態学的適応が刺激されます。

したがって、骨の成長と、それに続いて起こる筋の長さの増大には、固有の時間差が存在します。

このことは、若年アスリートにおける骨端線の牽引損傷の発生に影響を及ぼし、サッカー選手で特に多発するのは11~14歳、さらに男子の場合には13歳以下と14歳以下の年齢層に最も多くみられます。

この骨と筋腱複合体の成長速度のずれは、弛緩時に関連組織が受ける力を増大させ(先行研究では組織への前負荷と呼ばれる)、また骨端線の牽引損傷を引き起こす要因の一つと考えられています。

青少年アスリートの傷害

青少年アスリートにおける神経筋系のスポーツ傷害の最も重大なリスク因子とは、

筋疲労、筋の活性化のタイミングと大きさの変化、筋力不足、前額面コントロールの優位、下肢の神経筋のバランス不足、不十分な筋スティフネス、姿勢の安定性の不足、固有感覚の変化、フィードフォワードコントロール(事前予測による行動制御)になります。

最新のデータによると、米国では6~12歳の青少年のうち約820万人が競技スポーツに参加しています。

しかし、競技スポーツに参加していても、それ自体が身体活動(PA:Physical Activity)の推奨要件を満たすことを保証するわけではないことも示唆しています。

このようにスポーツへの高い参加率は、特有の傷害リスクを伴います。

青少年の傷害の多くは外傷事故によるものですが、30~50%はスポーツへの参加によるオーバーユースが原因であると推定されます。

したがって、スポーツ活動中に誤った運動パターンを身につけて実行することが潜在的なスポーツ傷害のリスクを高める可能性があるため、青少年期のスポーツ参加による成果を高めるためには、正しい競技、スキルを発達させるトレーニングにすることが重要であるとされています。

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