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凪でいたいけれど、時々夫が荒波を立ててくる

今年は年明け早々に辛いニュースが相次いだ。
母の実家も震度6弱の揺れだったので、きょうだいでLINEで連絡を取り合い、携帯電話のショートメッセージなら迷惑にならないかな、という結論のもと、姉が代表で親戚の人たちにSMSで連絡を取ってくれた。
酷い揺れだったらしいけれど、みんな無事だという返信がきてひとまずほっとした。

夫の父親の実家が、まさに震度7の地域だったけれど、夫はニュースばかり見ていて、とくに誰かに連絡する様子もなければ、誰かと連絡を取り合う素振りもなかった。私は一度もお会いしたことがない方たちなので口を出すのもおかしいし、もしかしたらメールなど、私が知らないところでやり取りしているのかもしれないし、特に何も言わなかった。

ただ、夫が地震や津波の映像を薄ら笑いを浮かべて、時々「あ、壊れた」「あ、津波が来てる」とぼそぼそ呟きながら見るのが本当に嫌で仕方がなかった。
以前からなんでこのシーンで笑うんだろうとモヤモヤすることが多かったけど、「夫が好き」というフィルターが外れた今は、夫のこういう行動に嫌悪感しかない。

続いて2日、旅客機と海上保安庁の航空機が衝突した事故の報道で、子供が何度も「早く出してください」と叫んでいるシーンに、私は胸が締め付けられる思いで見ていたのに対し、夫はその隣でハハッと笑い、思わず振り向いたら笑顔でこの報道を見ていた。寒気がした。嫌いを通り越して、もはや怖い。

ニュースを見てどんなに心を痛めても、私にできることなんて、祈ることと募金をするくらいしかない。3.11の時に、ずっとニュースを追っていたら、苦しくなってメンタルがどんどん落ちてしまい、テレビを消すようにした。ネットやSNSで情報はたくさん入ってくるし、映像や音声を聴くととても胸が苦しくなるので、自分の心を守ることを優先し、今回も私はできるだけ映像での報道を見ないようにしていた。
けれど時々夫は、Youtubeに上がっている、そういうシーンを集め延々と流れる動画を、「ありゃー」「わー」と言いながら見ている。
リビングという共有の場なので逃げ場がないのが辛い。
私はイヤフォンをして、大好きな曲を聴いて心を落ち着ける。

先日、とてもお世話になっている人から富山で有名なうどんが届いた。
時々送ってくださるうどんで、去年も美味しくいただいた。
その人からメールも届いた。そのお店が震災のあとも営業を続けていることをお店からのメールで知り、うどんをネットで購入し知り合いに送っているのだという。そのうちのひとつがうちに届いたのだ。
そのお店の商品を購入することは最高の支援となる。
私は本当にこの方が大好きで、そのお人柄に憧れている。
もちろんそのメールには、夫の親戚の皆さんを「ご無事ですか?」と案じる言葉も綴られていた。

私はメールの返信をするために夫に訊くしかなかった。
あのとき誰かと連絡を取り合うことはしていなかったけれど、もしかしたら私が知らないだけで、安否確認はしているのかもしれないし。
会話はしたくなかったので、その方からいただいたメールの文章を添付して、「親戚の皆さんは無事ですか?返信をしたいので教えてください」とディスコードで送った。
もう毎回のことで慣れたけど、ずっとパソコンに向かっているのにしばらく待っても返事がこないので、昼食のあとで夫に訊いてみた。
そのとき夫から返ってきた言葉に、久しぶりに苛立ちを覚えた。

「そのことには触れずに返信すればいい」

なんて冷たい言葉を返す人なんだろう。
なんで私はこんな人と一緒にいるんだろう。

もう本当のことを打ち明けてしまおうか。
夫は親戚のことなんてまったく気にしていません。
なんなら私のことも、子どもたちに対してすら興味がありません。
けれどそんなことをしても、私の気持ちがすっきりするだけで、相手を傷つけてしまうだけだ。

私はうどんのお礼と、彼女のお人柄に憧れている文章を綴った。
心配してくださった気持ちをなかったことにして返信のメッセージを書くことにとても胸が傷んだ。
悔しい。

自分の心を守るために、夫との関わりは最小限にして、心はいつも「凪」を保つよう努力しているけれど、こうして時々、夫が私の感情に大きな波を立ててくる。
そんな心の荒波を消してくれるのは、いつも子どもたちだ。
子どもたちと何気ない会話をして、笑っているときがとても幸せだ。
そうだった、私はこの子たちの笑顔を守るために頑張っているのだった。

今日も、心は「凪」で頑張ります。


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