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さようなら、お節

今年のお正月は、お節はほんの少しだけにして、子どもたちの好きなメニューを中心に作った。
これまでも、子どもたちはお節が好きではないので、年々お節の品数を少なくし、夫が好きなものだけにするようになっていた。

これまで私は夫のことを大切に思ってきたけれど、夫は私のことなんて大切に思ってないことがわかったし、もっと言えば夫にとって私はただの家政婦でしかないので、私ももう、夫のためにと頑張ることをやめた。

「今年のお節どうしようかなぁ」
と呟いたとき、お節が好きじゃない長男が
「お正月は好きな食べ物がないからテンション下がるんだよね」
と言ったことをきっかけに、よし、もう今年はお節やめよう、と決心がついた。
すぐそばで夫はパソコンをしていたけれど、夫に話しかけるわけでもなく
「今年はお父さんが食べたいお節だけ自分で買ってきてもらうことにして、お節はやめよう!」と言ってみた。
夫は何も言わないし振り向きもしなかった。いつものことだけど。
(聞こえてるのか聞こえてないのかわからないけど、夫は自分の興味のある話題しか話に入ってこない。興味があることは、別に夫に話しているわけじゃなくても急に楽しげに入ってくるし、夫の話をしていても興味がなければ無視される)

まあいいや。準備するのは毎年私だし。
そもそも私もお節好きじゃないし。
よくよく考えてみたら、小さい頃、家庭内のお正月の雰囲気が好きじゃなかったと聞いたことをきっかけに、夫の好きなものを作って、夫に楽しいお正月を過ごしてもらおうって毎年頑張っていたんだった。
でももう、そんな気遣いなんてしない。
準備するのは私なんだから、私が用意したものを食べてもらおう。

買い物ついでに自分の好きなお節を買ってくるだろうと予想していたけれど、夫はお節どころか、好きな日本酒すら買ってこない。
毎年お屠蘇として飲む日本酒を選ぶのを楽しみにしていたのに。
(数年前までは年末の買い出しは一緒に行っていた。コロナ禍になってから私が一人で買いに行くようになっていた。日本酒は夫が買ってきた)
それどころか夫の担当だった鏡餅すら購入しないので、大晦日に買い物に行く時、夫に
「今年は鏡餅は買わないんですか?」
ときくと
「いらない」
とぶっきらぼうに返事がきた。

お節廃止したから、もう夫の中でお正月はどうでもよくなったのかな、と思いつつも、買い出しに出かけてスーパーの商品を見ていると、お正月らしい食品を何も買わないのはさすがに冷たいかな……と思い直し、夫が好きなお節を少量購入した。
日本酒はどうしよう……と思いつつ、日本酒コーナーに行く。
やっぱりお屠蘇のないお正月は寂しいかな?という思いが拭いきれない。
毎年楽しそうに日本酒を選んでいた夫。
ただ私はお酒には詳しくない。
夫が日本酒を選ぶ時「純米大吟醸と書いてあるやつは間違いない」と言っていたのを思い出して、ちょっと高いけど、それが書いてあるすぐに飲みきれそうな小さな瓶の日本酒を購入した。

あんなに嫌いとかもう関わりたくないとか言いながらも、結局夫のことを考えながら、夫の好きなものをいろいろ購入している自分が悲しくなる。

そんな感じで今年のお正月は、お節は少なめ、でもお屠蘇もあって、なんとなくはお正月っぽい雰囲気を残しながらも、子どもたちは好きな食べ物を食べ、まあまあ良い年明けになったのではと思う。
日本酒を出しながら「飲む?」と訊いたら夫は「うん」と返事をし、飲みながら「うん」と満足気に頷いたので、不味くはなかったのかな、と一安心した。
ちなみに私は本当にお酒の味がわからないので、毎年いろいろな日本酒を飲んでいるけれど、毎回美味しい。今年の日本酒も美味しかった。

けれど、夫が日本酒を飲むことはそれ以降なかった。

私は基本お酒を飲まない。
日本酒も、夫が飲むついでに、少しもらうくらい。
美味しくなかったのか、私が購入したお酒は飲みたくないのか。
夫は日本酒が大好きで、自分で購入した日本酒は毎日ちびちびと飲むのに今回は全然飲まない。
いまだに冷蔵庫にひっそり佇んでいる日本酒。
美味しかったし、私が飲んでしまおうと思っている。

もう来年は、今回みたいにいろいろ考えるのはやめようと思う。
夫が好きな黒豆を煮るのもやめるし、日本酒も買わない。
黒豆は私も好きだけど、黒豆大好きな夫が市販のものより私が作る黒豆が美味しいと言ってくれたから毎年作っていた。

意味がない。

バカバカしくなってきた。

私は何度こんなことを繰り返すんだろう。

もう夫の態度に振り回されたくない。

今日も心は凪で頑張ろう。


↓ 去年のお正月


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