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映画ドラえもん のび太と空の理想郷で精神が持っていかれた話

毎年の楽しみドラえもん映画。
昨年は宇宙小戦争のリメイクということで、ある程度大人向けなテーマを扱うことはわかっていました。今作は完全オリジナルということで今までの傾向から子供向けの話かな?と思っていました。

全然違った。むしろゴリゴリ大人向けに感じた。
そして私は精神を持っていかれ、映画館にいる誰よりも爆泣きして帰宅しました。

このままでは今回のゲストキャラ、ソーニャのことを考え夜も眠れなくなりそうなので感想を書いていきたいと思います。

空に謎の三日月型の島を見つけたのび太は「あれこそ僕が探していたユートピアだ!」と言い張り、ドラえもんたちと一緒にひみつ道具の飛行船『タイムツェッペリン』で、その島を探しに出かけることに!
色々な時代・場所を探してやっと見つけたその正体は、誰もがパーフェクトになれる夢のような楽園<パラダピア>だった!
そしてそこで出会ったのは、何もかも完璧なパーフェクトネコ型ロボット・ソーニャ。
すっかり仲良くなったドラえもんたちとソーニャだったが、どうやらこの楽園には大きな秘密が隠されているようで・・・。
はたしてのび太たちは、その楽園の謎を解き明かすことができるのか!?

『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』公式ホームページより

【ざっくり感想】※ネタバレなし

・ゲストキャラのソーニャがしんどい。好きになるしかない。
・作画が良い。特にキャラクターがアップになるシーンは力が入っていて感情移入しやすかった。のび太・しずかちゃん・ジャイアン・スネ夫の4人のキメシーンは必見。
・音楽がいい。飛行船が飛ぶシーンのBGMが特にかっこよかった。ロック。
・アクション<ストーリー。ストーリーは伏線回収もしっかりとしており、見ごたえがあった(ただちょっと怖い)。冒険部分が少ない分、子どもたちは楽しめるのだろうか…とは思う。秘密道具で戦うシーンも少ない。
・きれいなジャイアンはホラー。
・cv井上麻里奈の美人お姉さん幼女(美人お姉さん幼女)が出てくる。このキャラのアクション作画が一番気合入っていた疑惑。好きですね。
・出木杉君出番あり

ざっくりした感想は上記の通り。
しっかりとしたストーリーとのび太たちの友情を重視している人にはお勧め。
旧作だとブリキの迷宮の雰囲気が好きな人には刺さるんじゃないかと思います。
今回『リーガルハイ』『コンフィデンスマン』『どうする家康』などを書かれている古沢良太さんが脚本ということで、アニメ映画というより邦画を見ている感覚の方が強かったかもしれないです。(リーガルハイ大好きでした)

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※以下がっつりネタバレありの感想





それでは以下ネタバレ全開でいきます。

今回の映画の感想について大きく3つに分けて語っていきたいと思います。

【1.舞台はまさかのディストピア&ホラー】

予告の時点で舞台がディストピアになるとはだれが予想しただろうか。
のび太たちがたどりついたのは、皆が幸せに暮らす理想郷・楽園ではなく、住民全員が洗脳され、個性も感情もない理想の人形として暮らすディストピアだった!!!!

こ、怖~!!!!!!
到着時点でなんだか不気味で違和感を感じる描写はあったけど…こ、怖~い!

ドラえもん&のび太以外のメンツは、ストーリーが進むにつれ洗脳されていくのですが、その描写が気味悪いことこの上ない。
洗脳によりキャラが一番変わるのはジャイアンですが、最初は面白いんです。普段怒るはずの場面で「気にしないでください!」とほほ笑むジャイアンは普段とのギャップもありギャグシーンに見える。子供たちも笑ってた。
ただ洗脳が進んでいくにつれ「こ、こんなのジャイアンじゃねぇ!」とのび太と一緒に頭を抱えることになります。
自分が一番ぞっとしたシーンは、元々の性格との剥離が薄いためいつも通りに見えたしずかちゃんが「(自宅に)帰らなくてもいいじゃないですか。」的なセリフを笑顔で言うところです。あ、本当にこの子たちは感情を失ってしまっているんだと怖くなりました。
じわじわと理想郷の真実を知っていく描写はもはやホラー。

今回の映画は多様性、その人「らしさ」を大事にしようというテーマを書いているので、序盤はのび太の「らしさ」を書くための日常描写が多かった印象でした。そのため冒険に出るまでに時間がかかった&理想郷の描写がしっかりと書かれていた結果、飛行船に乗っての冒険描写は速足気味。そこは少し残念でした。
冒頭に出木杉君が理想郷について説明してくれるシーンはわくわくした!!!さすが出木杉君!

【2.ゲストキャラクター『ソーニャ』】

今作の主要キャラの一人として、理想郷で暮らすパーフェクト猫型ロボットソーニャ。
声優はKing&Princeの永瀬廉さんが担当されてました。芸能人の方が主要キャラ担当するのは、昨年の映画は朴璐美さんが担当されていたこともあり、クオリティ的に正直不安でしたが…

大正解!!!!!!すごい!!!!!
登場してすぐは、声優さんたちと比べて演技の荒が目立つ部分はあったものの、話が進むにつれて違和感はなくなった印象。アテレコが進むうちに上達したのか、演技指導の下行っていたのかはわからないのですが、ドラえもんたちと関わるうちに感情が生まれたソーニャと、だんだんとアテレコに違和感がなくなる状態が見事にマッチしていたと思います。
声はもちろんかっこよかったし、誠実そうな雰囲気がソーニャにぴったりでした。人気かつ声と演技がぴったりなゲスト声優を決定した人凄いなぁ(小並感)

そしてソーニャのキャラクター性もすばらしい。改造され自身の感情を失っていたソーニャが、ドラえもん&のび太との関わりを通して感情を取り戻し、友達なっていく姿はロボット物の定番とはいえやはり感動しました。
鉄人兵団のリルルも大好きだったからそりゃそうだよね。

さて、今回の映画では「ドラえもん(たち)に正面から銃口を向けるソーニャ」のシーンが大きく3回ありました。

①飛行船襲撃の時(銃口というより電撃ですが)
②ドラえもんたちが理想郷からの脱走を試みた時
③4次元ゴミ袋爆発直前

上記シーンでのソーニャの様子は簡単に書くと、
①のシーンではドラえもんたちを悪者と断定してるので躊躇無く攻撃。
②のシーンではドラえもんの言葉もあり、友達を(本人はちゃんと自覚してなさそうだけど)撃つことをためらうものの、三賢人に脅され突発的に撃ってしまう。
③ドラえもんたちは大事な「友達だから」躊躇なく撃つ。

同じ状況を用意することで、登場人物の気持ちの変化を表現するのはみんな大好きなヤツなんですよね。
②までは三賢人の洗脳下で引き金を引いてしまうのですが、③のシーンではソーニャは自分の意思で引き金を引きます。大事な友達を守るために。
特に③のシーンは打った瞬間の演出も素晴らしかった。無音になった映画館に「あぁ、撃ってしまった…」という気持ちだけが残る。ゆっくりと落下していくドラえもんの向こうで、真っ直ぐ見つめるソーニャの顔がこびりついて離れない。必見シーンです。

ソーニャの最後については「なんで自己犠牲エンド…みんなで助かってハッピーエンドじゃダメなのか…」と思いました。ただ感情を取り戻してすぐのソーニャにとって、「大事な友達を助けるために何ができるか」と考えたときに、「自分を犠牲にすればいいんだ」という簡単な結論に向かってしまうのはしょうがないのかもしれません。
エンディング前のドラえもんたち、ひたすら落ち込んでましたよね。でもソーニャは自分がいなくなったらどうなるかなんて考える余裕はまだなかったのだと思います。愛おしいよソーニャ。

まぁバッドエンドでは終わらなかったですけどね!ドラえもんが子供向けコンテンツでよかったー!!!!EDで爆泣きしました。でも子供たちのび太にそっくり過ぎない????
またドラえもんたちと遊べるといいね…。

ネコ型ロボットは道具じゃなくて、友達。
たくさんの友達を作ろうね…ソーニャ…幸せになってね…

【3.やっぱりのび太はのび太だった】

先にも書きましたが、今回の映画ではその人「らしさ」を大事にしようというメッセージが込められています。
『僕らの「らしさ」が、世界を救う』というキャッチコピー、彼らの冒険が目の前に一気に広がるような壮大さと爽やかさがあって最高です。

のび太の「らしさ」は映画冒頭でとても丁寧に書かれています。勉強も運動も出来ず、ドラえもんの道具を使ってテストの答案を隠す底意地の悪さ…。
子孫がドラえもんを送り付ける気持ちも分からなくもない。会社燃やすし。

のび太自身もダメな自分が嫌で、理想郷でパーフェクト小学生を目指そうとします。三賢人のパワーを持ってしてものび太はパーフェクト小学生(洗脳状態)にはならなかったのですが…

映画終盤で1回心を失ったのび太ですが、ドラえもんの言葉を聞いて自分を取り戻しました。なぜのび太は他の子と比べて洗脳されなかったのか、洗脳状態を解くことが出来たのか…映画中には明確な答えはなかったかと思います。
私はこの理由について「のび太が誰よりも暖かい心を持っていたから」だと思っています。すでに太陽のような心を持つのび太には、三賢人の光は必要なかったのです。

今回の映画ではソーニャを含めたドラえもんたちの友情がよく描写されていました。のび太がジャイアンたち3人の洗脳を解くシーンは「これはのび太じゃないと出来ない」って思わせてくれます。その後の4人が啖呵を切るシーンも「わ、我等友情永久不滅〜!!!」って泣きました。セリフも作画も最高なんだ…生意気な小学生たちが最高なんだ…

そもそもあの極悪非道なジャイアンでさえ心から心配して、普段の姿を求めることが出来るのび太凄くないか!?逆にその優しさ心配になるレベル。変な女に捕まらないように一生しずかちゃんのことを好きでいて欲しい。添い遂げてね。

友達のことを一番に考えられて、命を張ることもできる強い心を持つのび太は、勉強も運動も出来なくてもたしかに最高の主人公でした。(射的の腕もとんでもなく凄かった)

ぶっちゃけ子孫的には勉強も運動もできて欲しいし、会社で花火するようなアホはやらかさなくて欲しい。
だけど、今ののび太にもそのまま大事にして欲しい「らしさ」はある。のび太の結婚前夜でしずかちゃんのパパものび太のいい所を見抜いてましたね。

その人「らしさ」や多様性はまさに今注目されている話題なので、扱うのがかなり難しいテーマだったかとは思いますが、重くなりすぎず、ドラえもんらしく書ききってくださったと思います。
どちらかといえば子供たちより、その子たちの保護者の方々たちに刺さる内容だったのでは。
私も自分らしさ、見失わないでこれからも生きていきたいよォドラえもん…


ということで以上3テーマについて感想を書かせていただきました。
笑えて泣けて、見終わったあとに世界が少しキラキラして見えるような…そんな素敵な映画でした。
大人でも見応えのある内容だったの思うので、興味のある方はぜひ見ていただけると嬉しいです!
来年の映画も楽しみ…でもドンチャカわいわいわーいな感じの映画もそろそろ見たいな〜っと思ってるので、是非よろしくお願いします!!!!

ドラえもん最高!!!!!

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