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【森美術館STARS展感想】ファストフードな知識がもてはやされる今こそ美術館に行こう。

六本木ヒルズの森美術館で開催中のSTARS展に行ってきました。以前から森美術館にずっと行ってみたかったのですが、港区のキャンペーンでLINE Pay支払いで半額になるのでこれを機に初めて行きました。(港区民じゃなくても使えます。)しかも学割もあって325円でした。安い。

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僕は森ビルが大好きなんですが、その理由としては森ビルの中にある飲食店でバイトしてたり、森ビルの中、というか六本木ヒルズの中にある某外資系投資銀行の面接に何回も行ったことがあって、すごく縁がある場所なんですね。

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大学生になってようやく東京に行くようになった僕からしたら六本木なんて「なんか派手な怖い場所」ってイメージでビビっていたんですが、想像のはるか上を行くキラキラ感を演出していたのが森ビルのビルたちでした。

最初は森ビルの威圧感にビビっていたのですが、よく行くうちに洗練されたデザインとテナントのクオリティの高さ、東京の未来をカッコよくしたい!という熱意が伝わってくる開発に心を奪われ、今ではすっかり森ビルのファンです。ちなみにこの森美術館は六本木ヒルズの52階にあって、海抜250mの高さにあります。普通こんな高級ビルのてっぺんに美術館を入れるか!?と思いますが、これこそアートの価値を十分に森ビルが理解しているという何よりの証です。森ビルは本当にかっこいい。

そんなわけでSTARS展は入る前からテンションが上がっていたのですが、展示も圧巻でした。まず出てくるのが村上隆のアート作品。

村上隆の代表作「マイ・ロンサム・カウボーイ」です。

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裸の男の子のアソコから飛んでいるのは精液です。初めて見たら何が何だか理解できません。目を逸らしてしまう人もいるでしょう。しかしこの作品はオークションで16億円という値段で落札されました。そしてその価値は今も上がり続けています。

このSTARS展は村上隆をはじめとする6名の現代アートの重鎮らの作品を展示しています。

さっきの精子を飛ばしてる男の子のフィギュアに16億の価値がつくなんて、ほとんどの人が理解できません。それは僕も同じです。でも分からなくても楽しめるのがこの展覧会の魅力です。

何よりすごいのは森美術館のデカさです。ここが六本木ヒルズの52階であることを忘れてしまうほどの巨大な空間がそこにはあります。展示されている作品はどれも大きく、この像は4.3mもの高さがあります。それが余裕ですっぽりと納まる巨大な箱が250mの高さにあるんです。一体どうやってこんな巨大作品をここまで運んだのでしょうか。

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そしてただ大きいだけでなく、作品の世界観をそのまま六本木まで冷凍保存して持ってきたかのような再現性にも脱帽です。こちらは李禹煥の作品なのですが、壁にかけられた2枚の絵と、お箸のような巨大な棒が横たわっています。

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僕らはその間を自由に歩くことができます。床には石のようなものが敷き詰められていて、枯山水のような趣が感じられます。何かとても落ち着くような空気感。いつまでもここにいていいよと言ってくれているような安心感が心地いい。作品の力と森美術館の場の力が合わさってこそなし得た技です。

ちなみに森美術館はSNSにとても力を入れていて、今では年間100万人が来場するモンスター美術館にまで成長しました。この展示会も基本的に撮影OKで、思わずSNSに投稿したくなる仕掛けが満載でした。この本はそんな森美術館の戦略が語られていてとても面白かったです。

そして有名な草間彌生の作品も展示されています。僕の知らない作品もかなりあって楽しむことができました。

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僕は昔から美術館を巡るのが好きで、高校生の時から都内の美術館まで脚を運んでいました。大学に入っても理系ですが一般教養の授業は全て芸術に関するものを取っていました。

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「アートが好きなのは分かったけど、それって何の役に立つの?」

と思うかも知れません。僕も多くの人と同様、作品に対して考察ができるほど知識もありません。ただなんとなくいいなーと思っているだけです。

でもです。この「なんとなくいいなー」って感覚って、今の時代にはとっても大切なんじゃないかと思うんですね。

今回特に印象に残ったのは奈良美智と杉本博司の作品です。

こちらが奈良美智の作品です。見たことがある方も多いと思います。

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これはぜひ現地に行って感じて欲しいのですが、この大きな顔が乗った家の中には音楽が流れています。その音楽がなんとも言えない不思議な感じで、この奈良美智が描く世界観の印象をさらに強くしていました。

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僕はそれを見て、聞いて、「うわ。いいな。」と思うわけです。

「うわ。いいな。」と思うだけで、「そういう意図で描いてるのか!勉強になった!」と学んだわけではありません。ただ感覚的にいいとだけ思ったに過ぎません。でもこれが一番大切な瞬間だと思うんです。

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美しいものとか、感動するものに出会うと、その感情はなかなか言語化できないものです。でもその感覚ってずっと心のどこかに残っていて、ふとした瞬間蘇るものなんですよね。僕なんかはずっとこうして執筆をしているわけなんですが、書くネタは散歩してるふとした瞬間に降りてきたりします。

で、その瞬間っていうものは、日頃からどれだけ美しいものや感動するものに出会ってきたかで、そのチャンスの量が変わると思っているんですね。日頃から本を読んだり、アートに触れたり、美しい景色に出会っていると、日常の些細な瞬間がある人にとっては平凡な一場面でも、自分にとってはまたとないシャッターチャンスになるわけです。

例えばこちらの杉本博司の作品は元々平行に撮った水平線と月の写真を90度回転させたものなんですが、角度が変わるだけで地球が巨大で丸い球体なことをハッと分からせてくれるようなインパクトのある一枚になっています。

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僕が今もこうして執筆が続けられるのは、人より一人でいる時間が長くて、いろんな小説やアートに触れてきたからだと思っています。だからこの展示を完璧には理解できなくても全然いいんです。

「なんかいいな」と心で感じて、それがいつか執筆だったり読書だったり、商売だったり、いろんなところでふとした瞬間に活きてきます。全然具体的じゃないけど、そもそもアートだって抽象的なんだからそれでいいんです。

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抽象的な思考とか感覚って、「それじゃ全然分かんないじゃん」と敬遠されがちですが、僕はむしろ好きです。だって世の中って、そんな簡単になんでも理解できるほど単純じゃないじゃないですから。

今の時代って、分かりやすくて短くてまとめられてるものが良いものだって、ほとんどの人が思っています。でも、それって本当に正しいんでしょうか。

誰でも簡単に理解できることに、価値ってあるんでしょうか。

すぐに言葉にできるような感動って、本当に感動なんでしょうか。

なんでも要約してるけど、その過程で大切な何かが削ぎ落とされているんじゃないでしょうか。

ファストフードみたいな知識より、一見無駄が多くて時間もかかるモノの中に本当の知識が隠れているんだと僕は思っています。だからアートを見に行く価値って、これからさらに高まっていくと思うんですね。

理解できないものと一対一で向き合う。ガチガチのタイマンです。作品の解説を、必死になって読む。広い美術館を、自分の足で興味の向くままに歩く。すごく面倒臭くて、時間がかかる作業です。でも、だからこそ価値があるんです。

あんなに足が痛くなるまで歩いたのに何も分からなかった。それでいいじゃないか。あんなに目が乾くまでじっと絵を見たのに、何も感じ取れなかった。それでいいじゃないか。必死に自分の目と足と頭で真剣勝負した経験は、絶対いつか活きてきます。みんなファストフードな知識に頼っている今、真っ向勝負したあなたの経験は圧勝です。だからね、ぜひ僕は皆さんに美術館に行って欲しいんです。

「なんか、いいな」

これで十分なんです。事前に勉強もしなくてもいいです。興味が湧いたら後から調べてみればいい。とにかく「なんか、いいな」を感じに美術館に行ってみてください。きっと忘れかけてた大切な感覚が蘇ってくるはずです。

それでは素敵な1日を。

STARS展は2021年1月3日まで開催中です。

最後に僕が今まで読んだ本の中で初心者でも楽しく読めるアートに関する本や芸術家の本を貼っておくので興味ある方はぜひ読んでみてください。











最強になるために生きています。大学4年生です。年間400万PVのブログからnoteに移行しました。InstagramもTwitterも毎日更新中!