『さよなら僕の性格』第2話 クラスで孤立
次の日からも、僕はチャンスを伺っていた。
他のクラスメイトたちが、徐々に関係を気付いていくのを見守りながら、僕のところにも、チャンスが来ることを信じた。
自分から人に話しかけることは出来そうにない。見たことのない人と、どう話していいかわからないから、強い緊張に襲われる。高まる心拍数に心臓がもちそうにない。
だから、誰かがこちらに来るのを待つしかない。
その誰かが来ることもあった。
しかし、誰かに話しかけられた場合も、強い緊張で苦しくて、その緊張から早く楽になりたくて、何かを聞かれても当たり障りない返事をして、その場を逃れるように話を切り上げてしまう。どうしてもそうしてしまう。
「うん、まあ」とか「いや、まあ」とか「さあ」とか「はあ」とか、短い返事でお茶を濁してばかりだった。
そうして日にちは進んでいく。
そうしているうちに、だんだん、それが自分のキャラクターとして、定着してきたように感じていた。それが自分だから、そうしないとみんなからいぶかしがられる。
もし、突然、今までにない明るいトーンで話し始めたら「今日はどうしたの?」などと言われてしまう。
そんなことになったら、もうダメだ。「急に性格が変わる気味の悪いやつ」と言われ、怖がられ、嫌われ、疎まれ、のけ者にされ、どんなに謝っても許されはしないのだ。
その気持ちが、ますます自分の行動を制限した。
クラスの中で、ひとり取り残されるのに、そんなに時間はかからなかった。
それでもK君かK君のどちらかが何とかしてくれるんじゃないかと思い、様子をうかがってみる。
K君は例のでかい人や、野球部の人と仲良くなっていた。楽しそうにしていたので、そっとしておいてあげることにした。せっかく楽しんでいるのに、僕なんかが、水を差したら申し訳ない。
K君の方とは、はじめのうち、帰り道を一緒に帰ったりしていたが、そのK君とも、彼がサッカー部に入ってから、だんだん話す機会がなくなり、疎遠になる。
K君も、K君もそれぞれ別の友達を作っていて、いよいよ僕はクラス内で、孤立していた。
高校生活始まってすぐ、教室に居場所がなくなった。
それでも僕には、まだ希望があった。
部活動である。
クラスに友達が出来ないのは、想定内である。実は、中学のときもそうだったから。
中学の時も、クラスには友達がいなかったが、ともに部活で頑張るK君やK君のような仲間がいた。
苦楽をともにして、同じ時間を過ごす部活の仲間。1年で入れ替わるクラスとは違い、部活の仲間は、3年間ともに過ごすのだ。クラスの友達のような表面的で一時的な友達関係とは違う真の友情が生まれるものである。
部活に入って、一緒に活動すれば、始めは知らない者同士でも、やがて親しくなり、一緒にカラオケに行ったり、バッティングセンターに行ったり、互いの家に遊びに行って一緒にゲームをしたりするようになる。泊まりがけで遊びに行くこともあるかもしれない。
やはり、青春は部活である。部活に入りさえすれば、友達なんて嫌でも出来るものである。
クラスに友達がいないことなんて、全く気にすることはないのである。
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