フィルム_フェスタ

『さよなら僕の性格』第21話 2年の部活

僕と先輩2人、3人だけだった部活。実は、僕が2年になったとき、大きな変動が起こっていた。

どんな新歓活動を行ったかすら覚えていないくらいなのに、大量に1年生が入部していた。女子が8人くらいと、男子2人が加入した。

うっとりしてしまうくらいかわいい子から、それなりの子までいろいろだが、女子がたくさんいるというのは、視覚的にも、聴覚的にも何か気持ちに強く迫るものがある。

どうしてしまったのだろう。一体何に惹かれてそんなに多くの新入生がこの部に入ろうと思ったのだろう。僕の魅力のおかげだろうか。

一番低い可能性を真っ先に思い浮かべてみるが、誰も僕に近寄ってこないという現実から、その可能性はすぐ消えた。誰も僕に興味はないようだ。心にダメージを受ける。そんな可能性思い浮かべなければよかった。なぜ、そんな自傷行為をしてしまうのだろう。

ともかく、部活は賑やかになった。3年生になった2人の先輩も、僕も、きちんと部活に参加するようになり、人が集まるようになった。

それほど大きく環境が変わっても、僕は相変わらずだった。

後輩たちと話をすることもなく、2人の先輩と10人くらいの後輩が、ワーワー言っている輪の外で、隅っこに一人でいた。

たくさんの社員が和気あいあいと仕事をしているオフィスの隅で、換気扇の点検をしている業者の人くらいの存在感だった。「終わったら呼んでください」とか言われている人だ。「じゃあ、終わりましたんで」と言って、伝票にサインもらって帰る人だ。

それにしても、輪の外から見ていると、本当にかわいい子が多い。机に手をついて少し前かがみになった後ろ姿。どうしても太ももに目が行ってしまう。

2人の男子も女子たちと仲がよく、おどけて笑いながら会話している。

彼女たちに愛される術を僕は何も持っていない。かっこよさも、力強さもない上に、会話すらできない。

どうして僕だけ、そうなんだろう。何で僕だけ、輪の外で業者の人みたいになっているのだろう。

一体、どうしたらいいのだろう……。どうしたら……。

「成績を伸ばすのだ……。それしかない……」

尊敬を勝ち取ったり、自分の存在価値を高めるには、もうその可能性しかない。

圧倒的に頭がいい人になるのだ。それこそが、何の魅力もない僕に開かれた唯一の道だ。

勉強しまくって、学年1位になろう。きっとなろう。そうすれば、みんな、少しは僕を見直してくれるに違いない。声をそろえて、涙ながらに「いつもありがとう。あなたのところ以外の換気扇は絶対使わないから……」と言ってくれるだろう。

「今に見てろよ……誰もが一目置くすごい存在になって、絶対、振り向かせてやる」

毎日、情けなく悔しい思いをしては、毎日、同じようにその答えにたどり着いた。何度も何度も心の中で繰り返した。

この勉強への熱意が、僕をおかしな方向へ向かわせることになるのだが、それはもう少し先のことである……。


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