フィルム_フェスタ

『さよなら僕の性格』第8話 成績

最初の試験が終わり、合計点の成績優秀者が職員室前の掲示板に貼り出されていた。

僕はどうしたことか、学年の上位10位以内に入っていた。

(え? 俺ってこんなに成績よかったの?)

驚いた。同時に、やや嬉しくもあった。バカにされているか、よく見積もっても、どうでもいいと思われている僕が、成績優秀!?

(Y先輩、見てくれてますか? ほら、僕すごく優秀ですよ)

Y先輩に気付いてもらえるように、僕の名前を黄色い蛍光ペンで目立たせたい気分だった。

すご~い、頭いいんだね、とか言ってくれるだろうか。言ってくれなくても、僕が優秀な頭脳の持ち主であることを心の深くに刻んでくれればいい。

最初の試験でこの結果だから、その試験を頑張ったからというより、入学の時点で僕の学力はすでに上位グループだったということだろう。

実際、成績上位者が貼り出されるシステムなんて知らなかったから、特別力を入れたわけではない。

何の取り柄もないのに、この学校に推薦で合格できた理由が少し分かった。


ともあれ、僕は……、クラスの中で最も惨めな立場にいた僕は、ここに何かを見いだした。

(これは、周りを見返すチャンスだ……)

勉強はそれなりにしかしていない僕だったけど、本気で勉強すれば、もっと上が狙えるんじゃないか。

学年の成績トップをとれば、友達がいないことも全部相殺される。

むしろ、友達がいないことも「周りとレベルが違うから、合う人がいないんだな」みたいな評価になるかもしれない。勉強を頑張っているから、友達がいないのも仕方ないと、思ってもらえる。もう誰も僕をバカにしない。

もしこれから、勉強を頑張って成績をさらに上げれば、この学校で、かつて誰も成し遂げられなかった一流大学への合格を勝ち取ることができる。

僕の学校は進学校とはいえ、いわゆる一流大学への進学者はほとんどおらず、過去にもほとんど前例はなかった。

それを僕がやるのだ。早稲田大学、慶応大学にW合格。廊下を闊歩する僕。「あいつが、中井佑陽だ。めちゃくちゃ頭いいらしいぞ。友達はいないらしいけど、なるほど、さすが他を寄せ付けないオーラがあるぜ」。

僕のことをバカにしているか、よく見積もって、どうでもいいと思っている女子からの評価も「最初は、バカにしているか、よく見積もって、どうでもいいと思っていたけど、ユウヒ君って、頭よくて、クールで素敵だよね」に変わるだろう。

もうすでに、友達のいる楽しい高校生活は難しい。ならば、僕には勉強しかない。

勉強でトップになる。それしか、僕に道はない。 

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