フィルム_フェスタ

『さよなら僕の性格』第13話 「やっぱり」への抵抗

みんな誤解している!

僕だって、仲のいい人がいればしゃべる。楽しく笑いながら、バカなことを言い合って。そういうの好きだし! そこはみんなと同じでしょ? 僕は普通なんだよ!

本当の僕は、もっとよくしゃべるし、ふざけたこともするし、冗談も言う。

なのに、みんなそういう僕を知る前から距離を置いて「まじめな人だから」って僕を型に押し込める。違うのに……。まじめなんかじゃないのに……。本当は違うのに、本当の僕はこんなんじゃないのに……。

誰に頼まれたわけでもないのに、「しゃべらない」「まじめ」「おとなしい」殻から抜け出せない。本当の自分を出せない。自分を押し殺してしまう。

そうしないと、いけないような気がして、周りを裏切るような気がしてどうしてもそうしてしまう……。


「本当の僕はこんなんじゃない。わかってほしい」という気持ちは、蓄積した結果、一人歩きして「俺はおまえらが思っているようなやつじゃない、どうしてわからないんだ!」という反抗的な気持ちに変わっていった。

わかってくれない周囲に対する恨みが強くなっていた。

「俺はおまえらが思っているような、まじめで、おとなしくて、シャイで、気の弱いやつじゃないぞ」と証明したかった。

特に、男として、弱くて情けないやつだと思われることは嫌だった。

「あいつは、一人だと不安で何も出来ないから、いつも誰かにくっついている」「人と同じことをすれば安心だと思って、すぐ人のまねをする」 

そんな風に思われたら、これ以上の屈辱はない。

僕は、なるべく、別教室に移動する授業の時は、移動するとき、後ろをついていると思われないように、違うルートを通った。あるいは、みんなが急いでいれば、僕はゆっくり歩く。

人のまねをしないように。同調しないように。

他人の型やイメージにはまらないための、必死の抵抗だった。必死で自己演出をしていた。いつも人の目を意識した。

イメージや型にはまりたくない。いかにもな行動を取って、「あー、やっぱり」と思われたくない。

心の中で、周りからの僕の印象を想像しては、その通りにならないようにしていた。

少しでも印象を操作して、ナメられないように、馬鹿にされないようにと、自分の振る舞いを型にはめないように、必死で管理し続けた。

だが、実際には、いつも不安でいっぱいだった。いつも、無理をしていた。

「俺はおまえらが思っているような人間じゃない! それを証明してやる!」

と息巻いて、やっていることは教室を移動するとき、歩調を合わせないくらいのことだ。

反抗にしてはゆるすぎる。

そのくせ、不良になるほどの、勇気も元気もなく、誰かから話しかけられると、作り笑顔で「まあ」とか言ってしまうんだ。

僕は一体何がしたいのか……。

自信や自尊心は朽ち果てて、自己嫌悪は深まるばかりだった。 

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