【書評】『weathercocks』廣野翔一歌集
生きている人と俄かにすれ違う花冷えていくクロスロードに
花束を分けて花束を持ち帰る夜道に掲げながら歩いた
冬の夜に遭えば驚く大男として真冬の夜をとぼとぼ歩く
様々な街で、言葉すくなに歩く主体が印象的な歌集だ。
卒業や就職に伴い幾つかの街で過ごした日々が、内省的な語り口で綴られている。
その中で主体は歩き続け、考え続けている人のように私には映った。
一首目。自分ももちろん生きているのだけれど、
誰もいないと思っていた通りで急に誰かと擦れ違ったことを、「生きている人とすれ