【書評】『白亜紀の風』佐藤モニカ歌集
海風のよき日は空もひるがへりあをき樹木に結ぶその端
とほき世に貸し借りをせしもののごと今朝わが肩に落つる花びら
ペットボトルのなかに弾ける泡がありそのひとつひとつなべて喝采
白き帆の美しき表紙の本を置きそこより始まる夏と思へり
沖縄在住の作者の第二歌集である。
まず心惹かれるのは、作者のおおらかな世界の捉え方である。
気持ちのよい海風が吹く日に、空の一端を木に結ぶという美しい空想。
肩に落ちてくる花びらは、遠い時代に貸したものが返ってきたのではないかというふとした思い