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良い仕事をするほどに、仕事してないように見えることもある【M&A日記】

仕事上、税理士や弁護士の方と連携することが多い。
特にデューデリジェンスのときは、二ヶ月程度にわたってガッツリと一緒に仕事する。
そしてデューデリジェンス業務は大変だな、と観ていて思ったことがある。

対象企業がピカピカということがたまーにある。
調べても特段問題とされる事象がほぼ出てこないという状況。

これは売り主、買い主双方にとって理想的な状態。
価格を調整する必要もないし、譲り受ける側としては安心して譲り受けられる。

しかし、ここでねじれ構造みたいなことが生じる。
買い主は数百万円というお金を払って、二ヶ月もの期間をかけて調査する。
その結果出てきたのが問題なし、ということになると、
「こんな調査やる必要あったの?」
「なんで問題なしという結果にこんなにお金かかるの?」
「本当にちゃんと調べたの?」
という反応が出てしまう。

気持ちとして分からなくもないが、ちゃんと仕事をした上での結果であり、むしろ喜ばしいことなこに、逆の反応になってしまう。

逆に問題の多い会社だと、その対処も一緒にやっていくとなり、結果とても良く頑張ってくれた、という評価になりやすい。

前者の例の方が良いはずなのに、後者のほうが良い印象として残ってしまったりする。

あるいは、譲渡契約書などのチェックにおいて。

M&A経験が豊富な弁護士は、売り買い両者のことが分かるので、必要以上のチェックはしない。

しかし、経験の少ない弁護士は、必要以上にチェックしてしまうことで余計な論点を生み出してしまい、着地するはずだった話を暗礁に乗り上げさせてしまったりする。

この場合も、後者の弁護士の方が一見すると自分のことをよりちゃんと考えてくれているように見えるし、より仕事をしてくれてるように見えるが、目的から考えれば前者の方が優秀だし、やるべきことをやっている。

私の仕事にもそういう側面がある。

売主、買主双方のことを良く理解できるように努めるので、ある程度双方の意向が推測できるようになる。
先回りしてお互いの考えを伝えておくことで、余計な論点を生まずに、スムーズに話が進むことを狙う。

しかしそうすると、解決できる問題はあらかじめ対処しておくので、顧客にとってそれは顕在化されず、仕事してるところが見えない。

ここは理解してもらう必要がありそうだというものだけが残るので、顧客からすると相手の意向ばかりを求めてくるように見えてしまう。

問題を次々と解決してくれる人より、本来は問題自体を持ってこない、生じさせない人の方が優秀で仕事をちゃんとしているはずなのに、顧客からするとそれが見えないために、相反する評価になってしまうということがある。

その時に仕事してない人と思われるか、ちゃんとやってくれてると思われるかは、そこまでの信頼関係次第だと思う。
なので、信頼関係をしっかりと作っていくことが大事だという自身への戒めのお話でした。

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