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社内承継≒MBOのやり方を書こうと思ったけど、内部昇格の難しさを書いて終わった【M&A日記】

さて、社内承継≒MBOはどうやるのか。

ちなみに、前回のnoteで「経営の承継」の場合、内部昇格は全体の33.9%もあるというデータを紹介した。
しかし、「株の承継」までできている割合で言うともっと少ないはず、という私の推察を書いた。

要するに、「資本と経営の分離」状態の会社が多いだろうと。
恐らく殆どのケースでは、オーナー経営者だった人が経営者の地位だけを譲り、株はオーナーが保有したままになっていると思われる。

これは一見すると事業承継できているように見える。
株はそのままオーナーの同族で承継していきながら、経営は内部昇格で引き継いでいく。
理想的だ。
しかし、これは恐らく殆どうまくいかない。
以下はあくまで私の考えなので、データに基づくものではないことを前提に読んでもらいたい。

日本の企業の99%は中小企業。
そして、そのうち約80%は売上が1億円未満。
中小企業というよりは零細企業の割合が圧倒的に多い。
それ以上のデータは持っていないが、約20年間中小企業相手に仕事をしてきた上での肌感覚としては、99%近くが売上10億円未満ではないだろうか。

要するに、事業承継をしていく会社の殆どは売上が10億円もない会社であり、従業員も数人から数十人ぐらいの規模のはず、ということ。

それぐらいの規模の会社において、経営者の存在は絶対的。
権限移譲が進んでいることはあまり想定できない。
権限移譲できる人材がいないのが中小企業だ。
鍋蓋のように社長一人だけ上にいて、その下に社員が実質的にはフラットにいるような状態が殆ど。

内部昇格というのは、その絶大な権限を社員に託すということ。
これは実は相当に難しい。
託せる人材が殆どの会社にはいないので、殆どの会社では選択肢にもならない。
いけるかも!?という人間に期待して承継してみたケースでも、結果失敗ということが恐らく殆ど。
そりゃそうだ。
仮に店長とか部長とか役職がついていた人間でも、社長の役割とは雲泥の差がある。
資金繰りなんて考えたことないし、会社を存続させて成長させていくというのは、違う次元の責任と役割になるのだ。

そして、本当に有能な人材がいたというレアケース。
このレアケースでも簡単ではない。
オーナーの立場としては自身の資産運用を任せているようなもの。
かつその資産運用については、自分が育ててきた会社なので、自身が一番得意だと考えている。
そこで下手なことをされれば、何でそんなやり方をするのか?
それで失敗したら自身の資産価値が毀損してしまう、と考える。
なので、口を出してしまう。

後継経営者を信頼し切って、任せることができればうまくいくかもしれない。
しかし、それができないと、結局関係性に問題が生じて後継者が退職してしまったりする。

ここまでで何となく内部昇格がうまくいく確率的には低いような感じがしないだろうか。

優秀な後継人材がいないために引き継いでも失敗というケースが恐らく半分ぐらい。
そして残りの半分の内、優秀な後継人材がいても、うまく関係性を維持できなく失敗してしまうのがまた半分ぐらい。
なので、内部昇格でうまくいくのは25%ぐらいではないだろうか。
私が実際に聞いて見てきている内部昇格の事例と感覚的には近しい。

難しいとはいえ25%はうまくいくのかというと、ここで最後の関門が出てくる。
資本と経営を分離したとして、オーナーは何れ必ず亡くなるので、株もいずれは引き継がないといけない。
株が子供に相続されたとする。
なんとか前経営者とはオーナーと経営者という関係でうまくやれていたけど、今度の新オーナー(子供)は会社のことなど何も分からない。
何も分からないから何も言わないなら良いが、何も分からないのに口を出してきたら最悪だ。
あるいは子供が自ら経営者になるということで、後継経営者を下してしまう可能性もある。
次の株主とうまくいく可能性はまた半分程度ではないか。

じゃあ、後継経営者が株式も引き取ればいいじゃないかと考えるかもしれない。
「経営」と「株」の両方を承継するのが社内承継でありMBOだ。
だが、これもまたそれなりに難しい。
長くなったので、それは次回書こうと思う。

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