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買い手と交渉優位に立つための最大の武器【M&A日記】

買い手との交渉優位に立つための最大の武器は「成長していること」だ。
なので、「売りたくないときが売りどき」なんていうことを言うM&Aアドバイザーが多い。
これは営業トークだが、一方で事実そのものでもある。

逆の例を用いて説明する。
成長していない企業、即ち売上が右肩下がりの会社は何故交渉優位に立ちづらいのか。

A社:決算期は12月、前期利益は1億円。
A社の譲渡を4月から動き出したとする。
4月中に前期利益1億円をベースに株価算定し、買収企業候補に提案するための提案資料を作成。
5月から候補企業の探索に動き出した結果として、順当に7月にB社より意向表明書が出てきた。
希望する条件を満たしていたので、B社に独占交渉権を付与して、約2か月間のデューデリジェンスを行った。
デューデリジェンスの結果が出た9月、B社より最終提案で色々と条件が提示された。
交渉は強気で行きたいが、もしここで強気に行き過ぎた結果として、B社が買収を断念してしまった場合、どうなるか。

速やかに10月から再度相手探しを開始。
C社が興味を示したが、提示された条件はB社の8割にしかならなかった。
何故なら、進行期10月までの数値が前期対比で8割落ちていて、通期も同様の見通しだったため。

いや、その条件じゃ納得できないと相手探しを継続したとする。
その間、この会社は業績が右肩下がりなので、ドンドン落ちていく。
12月になり期が終了、翌年2月には決算が締まり、やはり前年対比8割。

期が締まった以上は、その期をベースに株価算定し直すしかないので、以降は8割の価格での候補しかなかなか現れない。
それで渋っていると、また時間はドンドンと進み、更に業績が落ちていけば、その分だけ評価は下がっていくことになる。

ということで、右肩下がりの会社は、時間が経てばたつほど自社の評価が下がっていく可能性が高い。
とすると、交渉の場に立った時に、それが望ましい条件ではなかったとしても、次の相手を探すときにはもっと条件が悪くなってしまう可能性があるため、提案を受けてしまったほうが良いという、経済合理性がある。
即ち、交渉優位には立ちづらくなる。

ということは、成長している会社は逆。
今売らないで次を探している間に期が締まって、利益が増えればむしろ株価は上がる可能性もある。
望まない条件を提示されたとすれば、それならやりませんと言ってしまえばよく、交渉優位に立ちやすい。

更には、成長している会社の方がM&A市場では人気がある。
なので、ここを断ったとしても、次の候補がすぐ見つかる可能性がある。

ということで、交渉優位に立つためには、業績が右肩上がりの時に譲渡するのが一番。

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