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新日本国憲法私案の解説【12】

地域共同体

道州制

 地域共同体とは地形的にも歴史的にも密接な地域を一つの自治区域とする試みだ。日本国憲法における地方公共団体のうち、都、県を廃止して、州という呼称にする。州の首長を知事として、政務卿の指名権限を付与する。道は地域というより、その名の通り「移動」を主眼に置いた区割りにする。

北海道…北見、根室、釧路、十勝、石狩(天塩)、胆振(日高)、渡島(後志)計7州
東山道…陸奥、陸中、陸前、羽前、羽後、岩城、計6州
日本海道…佐渡、越後、越中、加賀、能登、若狭(越前)計6州
東海道…常陸、上総、下総(安房)、武蔵、相模、伊豆、甲斐、駿河、遠江、尾張、三河、伊勢(志摩、伊賀)計12州
中山道…上毛、下野、信濃、美濃、飛騨、近江、山城、大坂(摂津、河内、和泉)計8州
南海道…大和、紀伊、讃岐、阿波、淡路、伊予、土佐、計7州
中国道…丹波(丹後、但馬)、播磨、因幡(伯耆)、吉備(美作)、出雲(石見)、安芸、長門(周防)、計7州
西海道…豊前、豊後、筑前、筑後、肥前、肥後、日向、薩摩、大隅、琉球、計10州
合計63州
直轄地…北方諸島、伊豆諸島、小笠原諸島、尖閣諸島、壱岐対馬、竹島、先島諸島、大東諸島

 それぞれの地域共同体は州だが、但し、アメリカ合衆国やドイツ連邦のような連邦国ではなく、中央集権的な司法と立法、地方分権的な行政による州の連合国とする。
 天皇は元首であり、統治の象徴で正統性の証である。その地域を統治する正統性は天皇にあるということだ。
 州政府の首長を知事とする。知事は地域住民の選挙で選ばれ、日本国議会の追認を必要とする。これにより、日本国議会の政務卿指名に参加する権限を有する。州知事は地域行政事務を掌理して任期は5年とする。
 州の下位には郡、郷、里を配置して、さらに番街、番地、番で区割りする。州政府の行政地を市として、市の下位は区、地区、番街、番地、番とする。東京では、武蔵州東京市品川区五反田地区1番街1番地1番、横浜であれば、相模州横浜市中区本牧地区1番街1番地1番などとなる。
 州には議会を設置して、議員は住民が選挙する。任期は2年とする。議会は規則を制定する権能を有する。規則とは法律の下位の規律で、裁判官の法源になる規律を法律、その下位で罰則を規定できる規律を規則とする。
 また独自に財務計画を作成できる。その他、防災機関や警察機関などが設置できる。学校につては設置若しくは認可することができる。
 市の首長は、市長とし市議会が指名する。市議会は住民が選挙して任期は2年とする。市長は日本国議会の追認を必要としない。市は州と同じく、財務計画の作成権限があり、議会の承認で執行できる。また独自で、消防機関、警察機関が設置できる。但し、市長は日本国議会の追認機関ではないでの、政務卿指名の選挙権はない。
 郡は、州長官が直接の行政権限を有する。郡行政官は州長官が指名して、州議会が承認する。議会を設置できないが、代わりに評議会を設置して民意を反映させる。評議会には規則の制定権限及び議案審議権限はない。
 州の上位に中央組織である道を置く。道は地域分権機関ではなく、中央政府の出先機関になる。役職名は長官とする。任命は政務卿で天皇の認証機関である。道は交通と海岸線に重点をおいた機関で、任務は海岸線の警備と緊急事態時における中央政府と州政府の調整機関になる。

地域共同体の本義

 憲法私案で、あえて地方自治や地方自治体という名称を使用しなかったのは、中央政府に対しての地方政府というニュアンスを薄める狙いがある。
 あくまでも自らが住んでいる地域と、それを取りまとめている憲法上の政府という関係を重視している。家族とその周りの地域が住民の帰属単位で、地域政府は家族を保護するための行政体という位置づけにしている。
 家族を憲法上の保護対象に規定して個人の基本権保護と家族に対しての自由権や経済権の保護、特に母親に対する経済的な保護を規定している。
 家族を「個性が尊重される」共同体と位置付けて、家族の分権的な立場を尊重している。当然であるがその家族には子孫養育の義務が課せられる。これらの延長上に地域政府が存在している。
 地域政府は、地方自治の本旨よりさらに分権的な権能を付与する。地方分権ではなく地域分権だ。緊急事態時、相互に助け合う地域政府にしよという試みだ。まとめると、地域政府の主たる任務は、家族保護とその義務遂行の管理ということになる。
 現在の地方自治法は、その目的をこのように規定している。

地方自治法
第一条 この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。

地方自治法

 まず、第一条から改定をしなければならないだろう。名称は地方自治法ではなく地域共同体法になる。

地域共同体法私案
第一条 この法は、地域共同体が、憲法の基本原則合意に基づいて、地域政府の区分並びに地域政府の組織及び運営に関する事項を定め、あわせて中央政府と地域政府との分権を規定確立することにより、地域政府の民主的且つ能率的な執行の推進を図り、地域住民及びその家族の健全な発育を保障することを目的とする。

地域共同体法試案

 この一文だけでも地域政府と中央政府の役割分担や地域政府の主な任務が決定的に違うとわかるだろう。次に地方自治法では第一条の二として役割分担を規定している。

第一条の二 地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。
○2 国は、前項の規定の趣旨を達成するため、国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立つて行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体との間で適切に役割を分担するとともに、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たつて、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。

 この条文では、現行の地方自治が不十分であり且つ明確な責任分界点が規定されておらず、地方行政が中央の下請け的であることが否めない。憲法私案で要請しているのは、スイス連邦における、各州と連邦政府的な役割分担だ。

スイス連邦憲法
第3条 州
州は、連邦憲法によって主権が制限されていない限りにおいて主権を有し、連邦に委ねられていない全ての権限を行使する。
第42条 連邦の任務
1 連邦は、連邦憲法が割り当てる任務を遂行する。
2 (削除)
第43条 州の任務
州は、その権限の範囲内において遂行すべき任務を決定する。
第43a条 国の任務の割当て及び遂行の原則
1 連邦は、州の能力を超える任務又は連邦による統一的な規制を必要とする任務のみを引き受ける。
2 国による給付を利用する州及び自治体は、その費用を負担する。
3 国による給付の費用を負担する州及び自治体は、当該給付について決定することができる。
4 基本的な給付は、全ての人に対し、比較可能な方法により、利用可能としなければならない。
5 国の任務は、合理的に、かつ、必要に対して適合的に遂行されなければならない。

スイス連邦憲法

基本的な事項は憲法で規定することが望ましい。

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