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新日本国憲法私案 シミュレーション【2】

朝鮮半島有事

 201x年6月25日午前7時13分、突如大韓民国国軍基地はミサイル攻撃を受けた。幸いにも死者は出なかったが、重軽傷者は数十人に上った。同時に朝鮮人民軍は38度線を越境した。
 8時00分、米韓連合軍は戦時作戦統制権についての委譲を破棄し、指揮統制は米国軍司令官に任じられ、青瓦台はただちに全土を対象とする戒厳令を布告し外出禁止を発令した。
 大韓民国国軍はこの攻撃に即応し、10時00分、ソウル郊外を防衛ラインに展開した。10時15分、国連安全保障理事会は朝鮮民主主義人民共和国に対し非難決議を全会一致で採択し、38度線への即時撤退を要求した。 一方、日本の対応も早かった。
 ミサイル攻撃の一報は、すぐさま国防長官から外務卿に報告された。外務卿はただちに政務卿に指示を仰いだ。政務卿は外務卿に日本人保護の名目で警戒態勢につくこと、集団的自衛権行使のため国連に根回しすることを指示した。
 外務卿はそれを外交長官、国防長官に伝達した。政務卿は日本国議会議長に連絡し集団的自衛権の行使への手続きすり合わせのため、会談を申し入れた。同時に地域院議長に地域院国防委員会への事態報告を申し入れた。
 国防長官は海上軍へイージス艦6隻を日本海に展開させ、韓国の日本人保護の名目でミサイル防衛を許可し、陸上軍へは佐渡、秋田、山口のミサイル防衛師団にミサイル防衛を許可した。
 領域長官は、200海里線に国境警備船を、国境島嶼に国境警備部隊を展開する一方、警備局には治安部隊を各道司令官配下に展開して、重要施設保全や要人警護および、工作員による騒擾にたして警戒させた。
 司警長官は、司法警察に対し不穏分子の取り締まり強化を下令した。通信長官は、緊急談話を発表してインターネットおよび音声通信の安全運用を行うとし、非常事態もしくは宣戦が発令されたときは、通信制限を行うと周知した。
 就任以来日本に対して強硬姿勢を示していた韓国大統領は、日本が集団的自衛権を行使し米国軍と共同運用に移行したとき、米国軍を接点として、日本軍と共同作戦をとることになる。
 そんなことが行われれば支持基盤を失うことになりかねないと危惧していた。そのとき、韓国大統領は肝を冷やすことになった。
 朝鮮人民軍戦略ロケット軍は短距離ミサイルをソウル郊外米韓軍司令部に向け発射した。幸いこの情報は誤情報であった。しかし、韓国大統領を決断させるには十分だった。
韓国大統領は、集団的自衛権を行使した日本国軍の米韓連合軍との共同運用を容認する決意をした。
 日本国議会議長も韓国大統領と同様に焦心苦慮した。日本国憲法の改正が発議されたとき、再軍備には反対したが、人権についてはより擁護する改正に全面的ではなかったが賛成した。
 もしも、日本本土が攻撃を受ける事態が発生すれば、国際連合憲章上の個別的および集団的自衛権を行使するため、宣戦する必要がある。
 政務卿と会談した日本国議会議長は、非常事態を宣言していること、日本国本土に武力攻撃の危険があることを条件に宣戦を決断することを伝えた。覚悟を決めたのは、やはり日本人保護のためだった。
 政務卿は、祭務卿、外務卿、内務卿、日本国議会議長と共に、12時、テレビ、インターネットで国民に武力攻撃を受ける可能性を伝え、非常事態を宣言した。
 国民保護を最優先にするため、私権の一時的な制限実施を発表した。外交長官は、宣戦を行ったときの措置について韓国外交部と調整した。国防長官は、米国国防長官および韓国国防相と派遣軍の編成、派遣の方法について協議した。
 同時刻、国民院、地域院の両議院では、法務卿が制限される私権について説明した。その後、内務卿、商務卿、総務卿、教務卿、財務卿、庶務卿それぞれ必要な措置について説明した。
 議会はおおむね内府を支持し国民の保護を最優先で行われる措置について賛同した。放送を終えた外務卿、内務卿は、同じく議会で、想定される武力攻撃事態に対する国内外の措置計画を説明した。
 ミサイル発射は誤情報であったが、米国軍の偵察機からは、ミサイル発射準備は終了しているとの報告が届いていた。
また、越境軍もソウルに向けて前進中との報告もあり、緊張状態には変わりはなかった。米韓連合軍はソウル近郊10キロポイントを迎撃地点と定めて、攻撃を行うことを決定した。
 この連絡を受けた国防長官は、外務卿へ、外務卿は政務卿へ報告した。政務卿は、日本国議会議長へ攻撃開始のタイミングで宣戦を行い、米韓連合軍と合流することで調整済みであると連絡した。日本国議会議長は瞼を閉じて大きく深呼吸をして腹をくくった。
 青瓦台は、連絡事務所が爆破された16日以降、対話を模索していた。北朝鮮指導部は、越境軍への指揮用か衛星通信のチャネルを使用していることがわかり、国防司令部はひそかにハッキングをした。そこで重大な事実を知ることになった。
 それは越境軍が北朝鮮指導部の指揮で行動していないことと、人民軍司令部は帰還命令を出しているとのことであった。これらの情報は間髪を入れず、米国および日本国へ共有された。
 越境軍は前進を中止し、逆に38度線へ後退を始めた。ハッキングしたチャネルから北朝鮮指導部の「越境軍は指揮に復帰し帰還する」といメッセージが青瓦台へ届いた。
 また6月10日の通信線遮断以降続いていた、措置について完全に収拾したと通告があった。これらの情報も関係国に共有され、報告を受けた政務卿は、日本国議会議長に「おめでとう」と握手を求めた。その後、越境軍は38度線を越えて帰還した。米韓連合軍はしばらく警戒態勢をとることで合意した。
 政務卿は、非常事態の収束を宣言して日本国議会はこれを承認し天皇が布告した。翌26日、政務卿は、日本国議会議長と共同で記者会見を開き、国民に事態収束を説明した。
 日本国議会議長は記者の質問に「宣戦を自らが行うことへの葛藤はあったが、国民保護のために、憲法で与えられた権能であるから、職務を全うすることは当然である。」と答えた。

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