学校に行かなくても死なない

春は死にたくなる季節、という話を見かけたので。

新型肺炎の予防策として休校措置や春休みの延長が行われていますが、中にはこのままずっと学校が始まらなければいいのにと祈っている当事者もいると思います。

面倒くさいとか、朝が弱いとか、遊びたいとか、そういう次元の話ではなく、もっと切迫した思いでいる人がいるでしょう。

そうした当人には届かないかもしれませんが、「こう思っている大人がいるよ」ということは発信しておきたいと思います。

私は小学校6年間、中学校3年間、ほとんど学校に行きませんでした。1日も登校しなかった年度もあります。引っ越しが多かったので、一度も校門をくぐらなかった学校もありました。

学校に行かなくなる、行けなくなる理由は人それぞれ色々あると思います。ただ周りの話を聞いていると、圧倒的に多いのはいじめです。

学校というのはおかしなことに治外法権的な性質を持っていて、暴行や傷害、窃盗、恐喝、猥褻などのれっきとした犯罪を「いじめ」という私的問題のカテゴリで処理してしまうことがままあります。

学校で学ぶ権利もまた、法で守られるべき重要な人権のひとつですが、無視をする、誹謗中傷する、故意に物を隠したり汚したりするような行為は学ぶ権利を甚だしく損なう、明らかな人権侵害です。

そしてその加害者は、同級生とは限りません。下級生、上級生、教職員、あるいは外部から来る指導者、いずれからこのような被害を受けたとしても、それは間違いなく犯罪行為であり、人権侵害です。

もし今、ないしは以前、いじめを受けて学校に行きたくない、行くのが恐ろしいと思っている人がいたら、まずは「たかがいじめ」という考えは捨ててください。

そして、加害者は「犯罪者」あるいは「法律に違反する人権侵害者」であることを覚えておいてください。

その上で、学校に行くべきか否かという選択肢を検討するならば、命の危険がなく、精神的な負荷が充分許容できる範囲であるのなら、もちろん学校には行った方が良いと思います。

しかし、自殺を考えるほど学校へ行くことが嫌だ、憂鬱だ、と感じるのなら、「学校へ行くこと」は優先順位の上位には入りえないと私は思います。これは、原因がいじめであろうとなかろうと同じです。

どんな理由であれ、死にたくなるほど嫌だと感じることをする必要はないはずです。

それでもそれらしい理屈をつけて学校へ行かなければならないと言う大人がたくさんいます。思うに、彼らは世間知らずであるか、臆病であるか、あなたの命などどうでもいいという人達なのです。

まず「死ぬほど嫌」だと言っても、まさか本当に死ぬわけがないとたかをくくっている大人は世間知らずです。人は本当に死にます。計画的であるか衝動的であるか、間接的であるか、パターンは様々ですが、人はある日突然死にます。子どもでも大人でも死にます。

そして将来が不安だから、みんな学校に行っているからというだけの理由で学校に行くことを強要する大人は臆病です。本当に恐れるべきことは、無理に登校することで自殺や精神疾患につながることのはずなのに、リスクを正しく恐れることができないのです。そうした目先のことだけを恐れる人を臆病と言います。

最後の「あなたの命などどうでもいい」と思っている人については言及する必要はないでしょう。あなたの人生において何の価値も持たない人間です。

とはいえ学校に行かないこと自体、不安で恐ろしく思えるのもわかります。ですが、「死ぬほど嫌だ」と思うのなら、するべきことは他にたくさんあるはずです。

心身に傷を負っていれば病院に行くべきですし、良いお医者さんを探すべきです。

加害者がいるのなら、行政や教育委員会、各種相談窓口、警察、弁護士、裁判所などに出向くことも大切です。これはもちろん義務ではありません。ただ、そうすることであなた以外の被害者が生まれることを防げるかもしれません。

そして忘れてはいけないのは、勉強は学校に行かなくてもできるということです。

書店には教科書よりはるかにわかりやすく、もしかすると学校の先生が教えるより詳しくて的確な学習参考書がたくさんあります。通信教育サービスもあります。塾や家庭教師という選択肢もありますし、最近はインターネット上の教育サービスも充実してきました。

それでも心配はあるでしょう。不安もあるでしょう。特に日本人は人と違うことをするのが苦手です。

ですが、学校に行くの行かないのなんてことで命を左右されるのは馬鹿馬鹿しい話です。学校に通う期間は人生のうちの1~2割です。大人になってからの方が人生は長いのです。

学校に行かないとまともな大人になれないなんて脅しはそれこそナンセンスです。いじめをする加害者は学校に行っているからいじめができているわけですが、彼らは目標にできるほどまともな存在でしょうか? あなたは彼らを尊敬できるのでしょうか?

毎日ニュースでろくでもない犯罪や不祥事を起こしている大人の話が流れてきますが、彼らもほとんどは学校に通っていたはずです。何でも学校のせいにしてはいけません。学校に行っても行かなくても、良い人も悪い人も、優秀な人もそうでない人もいるのが現実です。

もし学校にどうしても行きたくない、行けないあなたが小学生なら、行かなくてもまったく問題ありません。勉強も急がなくても取り返せます。

もしあなたが中学生なら、卒業後のことだけは少し考えておきましょう。できれば勉強もしておいた方が良いと思います。でも、どうしても無理なら今は休むときです。

もしあなたが高校生なら、その学校は辞めるべきだと思います。通信制でも高卒認定でも何でもいいので、高卒資格だけは取りましょう。思っている以上に多くの場面で求められる資格です。

きっと一番深刻なのは、学校に行きたくないとどれだけ訴えても両親または保護者がそれを許さないケースでしょう。それはもう学校以前に家庭内の問題です。最も介入が困難で、簡単には解決できません。

それでも、学校に行きたくないあなたは悪くありません。間違っていません。学校なんて行かなくても死にません。でも、無理をして学校に通い続けて死んだ話はいくらでもあります。

参考までに、私が不登校だった頃に大人に言われていたことを書いた記事を貼っておきます。

どうか自分にとって良い春を迎えてください。

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