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新たな理論をキーマンに説明する際に大切なこと

2月にはいり、そろそろ今期の振り返りや、来期施策の企画・準備などに取り組まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、「インテグラル理論を企業で紹介する上で大切だと思うポイント」についてご紹介していきます。

インテグラル理論

インテグラル理論とは、アメリカの現代思想家のケン・ウィルバーによって提唱された理論です。人間・組織・社会・世界を統合的、包括的に捉えるためのフレームワークであるといわれています。
この理論にはAQAL(アクオール:全象限・全レベル)と呼ばれる統合的観点があり、その視点に立って物事をとらえれば、世界の森羅万象を包括的にとらえられるだけでなく、より調和のとれたアプローチが可能になるとされています。
U理論、成人発達理論とともに、弊社が提供しているソリューションの土台として様々な場面でご紹介している理論で、本メルマガでも何度かご紹介している「SOUNDカード」の問いにも、インテグラル理論の四象限の考えを組み込んでいます。

私自身、インテグラル理論の存在を初めて知ったのは2005~2006年頃だったと記憶しています。
四象限の考え方など、組織開発などの取り組みに非常に有効だろうと感じて当時も企業様へも何度かご紹介していたのですが、あまりにもポカンとされてしまう、という体験が多く、しばらく説明を封印していた時期がありました。
その後インテグラル理論に関する書類も充実し、再度試行錯誤しながら企業への説明のポイントを自分なりに編み出していった結果、手ごたえを得られるようになっていった、という経緯がありました。
今回は、そのポイントを皆さまにご紹介してまいります。
インテグラル理論に限らず、何か新たな取り組みを展開したいというとき、参考にしていただける点もあるかと思います。
ぜひご覧くださいませ。

※インテグラル理論についての概要を押さえてから読みたい、という方向けに、弊社HPでの解説ページをご紹介します。
https://www.authentic-a.com/integral-theory


(1)3つの障壁

インテグラル理論を企業で紹介するときに生じやすい障壁として、3つのことがあると考えています。

JIS+2D21抽象概念が多いうえに、それぞれ理解しづらいため、「理解できないもの」≒「役に立たないもの」として拒絶されやすい

JIS+2D22それぞれの概念が現場の課題にどう役立つのかイメージしづらいために、深掘りしてもらえるほどには関心を高めてもらいづらい

JIS+2D23説明した相手が「面白い」と興味を持っても、社内の他のメンバーが同じように理解して日々の行動変容に結び付けられるイメージが湧かないため、単なる個人の趣味以上のものにならない、とみなされやすい

特にJIS+2D23については、仲間づくりや巻き込みにしくじるというケースがあり、共感してもらえない・理解してもらえないものをわざわざ広めようとしないというケースがよくあります。
これら3つが、特に大きな障壁となることが多いと感じています。


(2)「人を見て法を説く」…親密さか、厳密さか

まず私が理論の紹介をする際に心掛けているのは、「人を見て法を説く」ということです。
相手の現時点の関心事項、置かれている立場、役割、TPOや、インテグラル理論でいうところのステージ、タイプを見極めた情報発信が非常に重要であると思います。

その上で、そしてこれはインテグラル理論に限らないことなのですが、何かを解説する上では「親密さ」と「厳密さ」、どちらに重心を置くべきか?というトレードオフをどう選択するかを大事にしています。

親密さは、分かりやすさ。
厳密さは、正確さ・精密さ、となります。

親密さを重視した説明をすると、理解のためのハードルが下がるため関心を寄せてもらいやすくなるものの、誤解が生じたり、「わかった気」になってしまいやすくなる、ということがあります。

逆に、厳密さを重視すると、情報の精度は高くなりますが、相手の吸収力が追いついていなければ拒絶されやすくなっていき、場合によっては嫌悪の対象になってしまう、ということがかなりの頻度で生じます。

特にインテグラル理論は、ステージに関する話は誤解を生みやすく、「厳密にはそういうものじゃない」とお伝えしたいと思っても、詳細を説明すればするほど、話がややこしくなるというジレンマが生じやすくなります。

インテグラル理論をどう説明するか、ではなく、「何を説明しないでおくか」の見切りが、大きなカギを握っていると考えています。


(3)四象限の説明…「塊」で話す

加えて、実際にインテグラル理論の内容を紹介する際にポイントとして考えていることをお話していきます。
今回は四象限の説明についてご紹介していきます。

ここでのポイントは、相手が捉えられる大きさのチャンク、「塊」にして、その価値を紹介していくことです。
というのも、いきなり四象限の詳細について
「右上から、個人・集団・外面・内面、という象限があり、左上はこうで、右下はこうで…」と仔細な話をしてしまうと、それだけで相手に聞いてもらえなくなってしまうからです。

企業で話をする場合は、例えば以下のようなチャンクで大きく右側・左側と括って説明していきます。

・右側象限は『目に見える領域』であり、組織では能力・制度・職務定義・ビジネスモデルなどを指す。
・左側象限は『目に見えない領域』で、思考・感情・文化などを指す。
・企業において「目に見えるもの」は合意しやすく、アウトプットイメージがしやすいため、右側象限の施策に偏りがち、ということが良く起こる。
・しかしどこかで『仕組みづくりで、問題の全部がなんとかなるわけじゃない』という感覚もあり、モチベーション・文化など、左側象限のことも『何かしら重要』と思っている、という体験を持ってる人が多い。
・けれども、ほとんどの場合思考・感情・文化などを組織内でどう扱っていいかわからないので、結局目に見える「仕組み」に関することに合意やアクションがどんどん偏っていく。

そしてインテグラル理論は、「四象限のすべてをやっていかないと、本当の変化は起こせないと言っているのだ」ということをご紹介していく、という流れが考えられます。

また、四象限についてはどの様に説明しているか、一例を挙げておきます。
ぜひ四象限のイメージと共にご覧ください。

・【個人・内面】は【感情・思考の質】であり、これがポジティブであれば前向き思考でモチベーションが上がる状態である。
・前向き思考で行動することで、元々のコンピテンシー、保有能力が遺憾なく発揮される状態になる。
・そういう人が多いと、【集団・外面】である【商品・サービス・仕組み】の質も高くなって『気の利いたもの』ができる。
・『気の利いたもの』が商品・サービスであれば市場に受け入れられ、社内制度であれば社員から歓迎される仕組みとなる。
・反対に、コンピテンシー、保有能力の発揮の質が下がっていると不良品が出来上がってしまったり、社員から受け入れられないような制度が出来上がる。
・社員のパフォーマンスが下がっているとき、【個人・行動】の質が下がっている状態だが、このことがムード・関係性・文脈の質、すなわち【集団・内面】の質を作る。
・ムード・関係性・文脈の質が下がることで、ネガティブな思考になりやすくなる。

今回の例はかなり関係性を単純化しており、実際に組織・社会で起こっている課題はもっと複雑に絡み合っています。
例えば、いま日本が置かれている人口減少や気候変動の問題などは、外的構造をマイナスに働かせやすいため、まるで下りのエスカレーターを逆走しないといけないかのようにマイナス方向の力が働きやすくなっている、というように。

企業での導入説明に話を戻しますが、上記の例はあくまで一例ではありますが、このように相手に伝わる「塊」単位での説明を心掛けています。
繰り返しになりますが、まず重要なのは、相手を「見る」ということです。
靴を履くように相手の立場に立つだけでなく、お相手そのものをどれだけ理解しようとしているかが、説明における鍵ではないかと考えています。

その説明は誰の何を叶えるためのものですか?                            

今回は、インテグラル理論を例にとって、新たな理論を導入・展開していくときの説明のポイントについてご紹介しました。
引き続き次回では、インテグラル理論の特に四象限を組織開発実践にどう組み込んでいくか?についてご紹介いたします。


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