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成人発達段階の違いが生み出す多様性とは?-複雑性が引き起こすもの-

1.成人発達段階の違いが生み出す多様性とは?

皆さんは日々どんなときに「多様性」に直面しているという実感を持ちますか?
というのも、弊社の講座卒業生の方々と共に立ち上げた「発達指向型組織を自社で実現する」ことをテーマにした研究会にて、先日そのメンバーの皆さんと、価値観による多様性と、ロバート・キーガン教授による成人発達理論における発達段階による多様性のそれぞれの違いについて議論する機会がありました。

この議論を通して自分の中で明確になったことは、価値観の違いは「分かり合えない」のに対して、発達段階の違いは「通じ合える余地(土壌)がない」「話し合える余地(土壌)がない」という違いになるということであり、それは全く次元の異なる「多様性」である、ということです。

これは、皆さんが日々組織やチームで直面されている問題や課題にも大いに関連するものではないかと思い今回のテーマにしました。
本題に入る前に、「多様性」と「複雑性」について、そして価値観と発達段階の違いについて整理しておきたい点を先にご紹介していきたいと思います。
まず今回は、多様性と複雑性についてです。

◇その1 複雑性が引き起こすもの

さて、多様性によって引き起こされる問題とはどんなものでしょうか。
例えば、近所の住民にゴミの出し方が非常にいまいちな人がいるとします。自分の家の前が毎日汚されてしまい、どれだけ掃除をしても繰り返される。注意をしたとて相手の言い分は「ルールは守っている。これが自分にとっての当たり前だ」と、一切改善されないという状態があったとします。

これは価値観の対立によって生じているもので、U理論提唱者のオットー・シャーマー博士が指摘する「3つの複雑性」のうち「社会的な複雑性」にあたるものです。
社会的な複雑性とは、「価値観、信念、利害が相反していたり、経験の差に開きがあったりすることによって生じる複雑性」のことを指します。
(「三つの複雑性」の詳細は以下URLをご参照ください。)
https://www.authentic-a.com/theory-u
そもそもの価値観や信念が異なっている場合、論理性や合理性は通用せず、議論が成立しなくなってしまいます。
このことは協働の土台を奪うだけではなく、対立や分裂を引き起こす要因とりやすくなります。端的に言えば「話し合いが成立しない」状態に陥るということです。
複雑性の高い課題解決に協働は欠かせません。
しかし、複雑性のど真ん中にいればいるほど、社会的複雑性が高くなり、協働の難易度が高まり続けることになります。
これは現代社会が向き合うべき根本的なジレンマの一つだと考えます。

巷では「多様性を認める」という言葉が聞かれるようになりましたが、実のところそれは正確な表現ではないのではとも思っています。
多様性とは「認めざるを得ない」もの、ではないでしょうか。
そもそも、多様性もそれにまつわる厄介さも、昔からずっと存在していた筈なのです。複雑性がそこまで高くなかった時代には、それらを無視してもさほど大きな問題にならなかった、というだけでしょう。

我々は、安易に「多様性を認めた方がいい」という言動をしてしまう前に、自分は本当の「多様性の苦しみ」に遭遇したことがあるのか、または、自分は多様性に対する許容力を実は持っていないかもしれないということを常に自分に問いかける必要があると思っています。
先に挙げたゴミ出しの例を思い出してみてください。
ゴミ出しがいまいちな住民のふるまいをすんなりと認めることが、果たして本当にできるでしょうか。
多様性を認めることは鍛錬が必要なことであり、その過程での苦しみは避けて通れないものなのです。

次回では「価値観の違い」について皆さんと一緒に探求して参りたいと思います。
 
あなたが直面している「多様性」は何ですか?


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