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自分の客観視に関する知られざる盲点

「私は冷静になって自分を客観視するようにしています」

企業でビジネスパーソンの方とやり取りをしていると、たまに防御的にこのように言われることがあります。

確かにそういう方々はどちらかというと、冷静なタイプが多く、状況と自分を切り離して分析をすることを試みられているのは伝わってきます。

しかし、そうしたやり方は、ややもすれば、他人事化しているように見えたり、評論家となっているように見えたりすることから、周りの情熱を引き出すとは限りません。

また、そうした関わり方は「本音が見えない」と言われたりもします。
そして何より、この客観視の質は、本人が思っているほどその精度や効果は高くないということが見落とされがちです。

感情的に視野狭窄の状態に陥っているより、落ち着いて状況を整理し、第三者の冷めた目で見てみるというやり方は、パニック状態でその状況にどっぷりつかっているよりも、悪循環を悪化させないという意味で有効ですし、打開策が見いだせることも少なくありません。


しかし、ここにはある盲点があります。


それは、「他人が見ているように、正確に自分を見ることは決してできない」という厳然たる事実です。

多くの経営者は、自分が裸の王様であることは自覚していますが、自分が「実際に」どう裸なのかを知らないことに注意が払われていなかったり、周りが見ている裸の姿は自分が想像しているものとは全く違うのに、そのずれがそこまで大きくないかのように誤認してしまっていることに全く気付けていなかったりすることも少なくありません。

約10年前あるセミナーに参加している時、そのセミナーリーダーが言いえて妙なことをおっしゃっていました。

「多くの人は人からどう思われるのかに囚われ、思い煩っているのに『実際に』どう思われるのかには全く注意を払えていない」

それを聞いた時、私は「確かに!!」と大きく頷いたことを今でも覚えています。


嫌味っぽい人は、「自分は現実をシビアに見る傾向が強い」という風にしかとらえられていなかったり、僻みっぽい人は、こんなに頑張っているのに報われないかわいそうな自分としかとらえられていなかったりします。

また、年甲斐もない振る舞いをしている人は、自分が思っている以上に年老いていて、周りからは「イタイ人」に見られていることを知りません。

こうした「つもりの自分」と「はた目の自分」のずれに対する無自覚さは、その人自身にとって悲劇なだけでなく、ステークホルダーを巻き込んだ事件やトラブルになることも少なくありません。

そこで、少しでも簡単な方法でそのズレを解消できる方法はないものかと開発したのが、「はた目の擬似体験ワーク」(以下、「はた目ワーク」)です。


「はた目の自分」と「つもりの自分」のギャップについて明示されている有名なものの一つが「ジョハリの窓」(https://k.d.combzmail.jp/t/r8v6/i0ajeht0mv66z2eidz0Ba)ではないか
と思います。

このうちの「盲点の窓」というのが上記のギャップに関するものになるわけですが、この扱いについては周囲からのフィードバックの受け入れが一般的なやり方になっています。

しかし、フィードバックは当人に刺激を与えることになっても、盲点の窓を開くことにつながるとは限りません。
なぜなら、そのフィードバックの意味を周りの人が実感しているようには解釈できてないからです。

多くの場合、そのフィードバックされた内容を行動によってカバーしようとしますが、多くの場合そうした行動は長続きしないか、的を外していて、周りからは「変わろうと努力しているのはわかるけど根本は変わってないよね」と言われる結果になったりします。

これはフィードバックの活かし方に大きなずれがあることが原因です。
相手の言葉をそのまま改善項目として定義しても必ず情報は不足しており、相手の目玉から見る、即ちU理論でいうレベル3センシングに入らないとそのフィードバックの意味は分からず、何をどう変えるべきなのかの本当のヒントは得られません。

その周りからのフィードバックを最大限役立てられうるのが、「はた目ワーク」なのです。

ステップ4にたどり着いた時の嫌な気分がレベル3センシングなのに対して、ステップ5で吐き出した後のすっきり感がレベル4プレゼンシングの状態と言えます。
特にそれまで渦巻いていた思考が、今後同様の場面になっても頭の中に出てこない感覚があるなら、その感覚に乗っ取られた行動をしなくなる可能性が高いです。

認知、心理上の問題を行動で克服しようとしても限界があります。
大事なことは、キーガン教授のいう認識を乗っ取っている主体を客体化する、即ちUプロセスの実践度合いに比例します。客観視ではなく客体化。
その似て非なるものが行動変容を確実にするかどうかの分かれ目だと思います。
          
自分自身を客体化したときに現れる、本当のあなたは誰ですか?  

  

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