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九月の寸景、彼岸花と娘

夏の終わり頃だったと思う。彼岸花が咲いていたからきっとそう。

一眼レンズ越しに川の流れを撮っていると赤い花に興味をしめす娘の姿がフレームに入った。半袖から日に焼けた腕がのび、その指先が花の茎に触れる。

昔はよく見かけた彼岸花だが、娘は見たこともなく、赤く放射線状に咲いた花を不思議そうに見つめ「これなあに?なんていうお花」と訊いてきた。

妻が「これは彼岸花だよ」と教えてあげると娘は神妙な面持ちで「ひばんがなって言うのかー」とつぶやいた。

「ちがうちがう、ひ・が・ん・ば・な」と訂正すると「ひがんばな?」と即座に言い直したが次の瞬間には、、

「そうかー、ひがんだまって言うのか」とまた言い間違えた。

天川村に向かう旅の道中での想い出である。
昨年の話だが今でも鮮明に思い浮かぶ。

暑い季節になってきた。
半袖に腕を通す娘をみて、私はカレンダーに視線をうつす。今年もどこかへ行こうか

#旅する日本語 #寸景 #ショートエッセイ

ここのコメントを目にしてくれてるってことは最後まで読んでくれたってことですよね、きっと。 とっても嬉しいし ありがたいことだなー