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絵本を閉じた息子と発達相談【エッセイ】

言葉の発達が遅いかもしれない。妻からそう心配されることの多い3歳半の息子。実は絵本が大好きである。よく床の上でペタンと座り絵本のページをぺらぺらとめくって笑っている。その姿はとても楽しそうだ。

でも彼はほとんど喋らない。いや絵本を見ながらその中のセリフっぽいことを口に出すことはあるのだが、言葉のキャッチボールがどうも上手くできない。
全く出来ないというわけではないのだが、そのリアクションの回数が極端に少ないのだ。傍から見ていてもこちらの言葉が聴こえてないのではないかと心配になるほど滅多に会話をしない。

もう3歳半だ。そろそろ発達具合を確かめて、色々と判断しなければいけない時期かもしれない。

しかし難しいのは、会話が少ないからと言って自分の世界に閉じ籠もっているという訳でもなさそうなのだ。例えば息子が絵本を読むさなか「お外に散歩行こうか」と声をかけると、彼は絵本をさっと棚に片付け、上着に袖を通して玄関にそそくさと向かうのだ。こちらの声が聴こえてない訳ではないらしい。

君は一体なんなのだ?
希望を言えばもうちょっとだけ喋ってほしい。会話もたまにするじゃないか。問題はその言葉を発する回数だ。口数が少なすぎる。

笑顔だけで会話を終わらせないで欲しい。
そんなわけで妻と私は手をこまねいていた。

いま息子は幼稚園のプレスクールに通っているのだが、そこに子どもの発達に関して相談に乗ってくれる先生がいらっしゃるということなので『これは渡りに舟である』と先日妻が相談に行ったのである。

どう判断されるのであろうか私も心配していた。

そして今朝妻から報告があった。
その日、発達相談の先生の前でもやはり息子はほとんど喋らなかったらしい。先生が絵本を読んでいる息子に近づき、開いた本の中を指さし『車が走っているね』だとか『この犬がかわいいね』だとか声をかけても息子は一生懸命に絵本に目を向けるだけで先生に対してのリアクションが極端に薄かったそうだ。いつも通りといえばいつも通りである。

その後に息子がとった行動は絵本をパタリと閉じて先生を見たということだった。

発達相談の先生はこの息子の行動を見てとりあえず安心したらしい。
というのは、これは会話の有る無しにかかわらず自分の興味よりも他人との関係を優先させた結果の行動だと言うのだ。

確かに本人が喋っていないというだけで、大人との会話を優先させて本を自ら閉じているのだ。なかなかのマナーである。これは言われるまで気付かなかった。

妻も安心したし、私も安心した。

相談すべき相手がいて相談する機会に恵まれるってことは大切なことであるなと思った。こういうのはネットや本から得られる情報のみに目を通しているだけでは流されて不安に陥るだけである。

#子育て #日記 #エッセイ

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