息子の手に握られていた保冷剤【日記】
もしかしたら言葉の発達が遅いこと、それこそが息子の心と行動を形作っているのかもしれない。
4歳になった息子だが、未だに一方通行の様な言葉が多い。息子の口から発せられる言葉はお歌の歌詞であったり、絵本の中のセリフであったりすることがほとんどだ。こちらが『おはよう』と呼び掛けても息子はすぐに『おはよう』とは返せない。とてつもなく長く待ってようやく「お・は・よ」と返すことが出来る。会話が苦手なのだ。相手の言葉をキャッチしてから自分の思いを口に出すことが彼にとっては難しいのだろう。
でも挨拶とごめんなさいと謝ること、この二つに関しては何とか出来るようにしてあげたいと思い、事あるごとに躾けようとしていた。
昨晩も同じく息子にこういう時は「ごめんなさいって言うんだよ」と私は言った。
リビングの前で6歳になる娘が泣いていたんだ。息子が手に持っていたおもちゃが偶然娘のオデコにぶつかってしまったのだ。その瞬間は私の目に触れていた。結構いい音がしたので相当痛かったと思う。私は娘のオデコをよしよしと撫でた。
これは偶然の出来事だ。息子に悪気がなかったこととはいえ、彼の不注意でもあった訳だから、呆然と突っ立っている息子に私は「こういう時はごめんなさいって言わなくちゃいけないぞ」と謝りの言葉を促した。
妻もその様子を見ていたが、息子は"ごめんなさい"をすることもなく、リビングをぬけキッチンの方へと走り去ってしまった。
妻と肩をすくめる。まだ彼にとっては難しいのかな。
でも違ったんだ。彼は彼の思うところがあってキッチンに向かっていった事を知ったのはその直後のことだった。
キッチンから戻ってきた息子の手には冷凍庫から引っぱり出してきたのであろう保冷剤が握られていた。
『息子よ、君はその保冷剤を冷凍庫から取り出すためにキッチンに行ったんだね。』
その小さな手に握られた保冷剤は娘のオデコにピタッとくっつけられた。
「、、ごめーなちゃい」ようやく息子がしゃべった。
ここのコメントを目にしてくれてるってことは最後まで読んでくれたってことですよね、きっと。 とっても嬉しいし ありがたいことだなー