「史上最も重要な調査」でわかった子どもの学力と学校環境の関係
突然ですが、下記の教育に関する項目でどれが間違いかわかりますか?
クラスの人数は多くても少なくても学力に影響はない
クラスの人数は少ないほど良い
本noteは下記の書籍を参考に、科学的エビデンスを挙げながら子育てに関する知見を紹介しています。
著者の中室牧子氏は経済学者であり慶應義塾大学の教授です。本書では科学的なエビデンスに基づいて、教育を経済学的な視点で分析しています。
お忙しい方は、最後に結論だけをまとめているので、そちらだけでもご覧ください。
少人数学級は学力向上に効果があるのか?
現在、日本の小学校では1クラスにつき40人の学級編制となっています。
しかし近年では、令和7年度までに小学校の1クラスの定員を35人以下にする方針となりました。文部科学省はきめ細やかな教育を行うとともに衛生上の問題を予防するために、少人数学級が必要だとしています。
しかし、財務省は少人数学級が学力向上に与える影響は限定的であるとして、否定的な態度を示していました。
では実際、少人数学級は学力向上に効果はないのでしょうか?
「史上最も重要な調査」とされる少人数学級の調査
その効果を確かめるためにアメリカで行われた「スタープロジェクト(Student Teacher Achievement Ratio Project)」という実験をご紹介します。
「スタープロジェクト」は、アメリカで行われた実験のなかでも「史上もっとも重要な調査」と呼ばれており、1985年から1989年にかけて行われました。その目的は「少人数学級は学力を向上させるのか?」という疑問を明らかにすることです。
また、日本で少人数学級というと1暮らす35人をイメージするかもしれませんが、アメリカにおいて少人数学級というと20人以下を示しています。
結論からいうと、この実験では「少人数学級には効果あり」という結果が出ました。
実験の内容
実験では、79の幼稚園と小学校を1クラスの人数を13~17人の少人数学級となる学校と、1クラスの人数が22~25人となる学校をランダムに分けて、少人数学級の学力が向上するかどうかを確かめました。
後に少人数学級と通常学級の子どもたちを比べると、少人数学級は学力が高いことが明らかになったのです。
これにより「少人数学級は学力向上に効果がある」と結論付けられました。
少人数学級はカネがかかる割に効果が低い
スタープロジェクトにより、少人数学級に効果があることがわかっているのであれば、すべての学級を少人数制にするべきでしょうか?
実はここは議論が分かれています。
なぜなら、「少人数学級はカネがかかる割に効果が低い」からです。つまりコスパが悪いため少人数学級を導入すると、他の政策が実施できなくなってしまうのです。
実際、海外の研究によると少人数学級はほかの政策と比べてもコストパフォーマンスが悪いことがわかっています。
また、1クラスの人数が少なすぎると、同じクラスの子どもから受ける良い影響(お互いを高め合ったり、様々な考えを知るなど)が損なわれる可能性もあります。
クラスの人数が多ければクラスのなかで多様性が生まれるため、そこから得られるメリットもあるのです。
したがって、少なければ少ないほど良いとは言い切れません。
結論まとめ
少人数学級には学力向上の効果があるがコスパが悪い
クラスの人数が少なすぎると他の子どもから受ける良い影響が損なわれる可能性がある
適切なクラスの人数はまだわかっていない
「教育・子育ての教養マガジン」では、下記のような親が知っておくべき教養を紹介しているのでぜひご覧下さい。
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