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読み聞かせの際に、どのように子どもに問いかけるか?「ブルームの分類法」を参考に その1

今回は、「読み聞かせ」の際に、読んでいる本を媒介としてどのような問いかけができるか、「ブルームの分類法」を参考にして、考えていきたいと思います。

「ブルームの分類法(Bloom’s Taxonomy)」とは?
アメリカの教育心理学者ベンジャミン・ブルームによって1950年代に作成された学習理論の一部で、日本語では単に「ブルームの分類法」、または「教育目標分類学」などと訳される事もあるようです。
 
「ブルームの分類法」では「受け取った知識をどう使っていくか」という観点から、以下の6つのレベルの学習目標を定めています。
*以下は、2001年に発表された改訂版より抜粋
 
1.覚える(Remember)
2.理解する(Understand)
3.応用する(Apply)
4.分析する(Analyze)
5.評価する(Evaluate)
6.創造する(Create)

上のような順番で、学習者は認知的に難易度が異なる段階的な目標を達成していくことによって(1が最も低次、6が最も高次)、学習を進めていくとされています。
   
これを教室での学習活動とその評価方法に当てはめてみると、暗記力を試すタイプのテストは、「覚える(Remember)」に留まります。より高度な思考が求められるのは、アイデアや概念を説明すること(Understand)、別の場面でその情報を利用すること(Apply)、集めた情報を分析すること(Analyze)、作品を批判的に評価すること(Evaluation)であり、テストの形式であれば記述式問題、または作文やプロジェクト発表といった成果物に基づいて学習者を評価します。学習者にとって最も難易度が難しく複雑だとされているのは全く新しい作品の開発や制作(Create)であり、学んだ知識を用いて、独自の物語、または最近であれば動画やウェブページ、ポッドキャストなどを作ることが挙げられます。
 
暗記力を試すタイプのテスト自体が悪いとは思いませんし、実際に、私自身もアメリカの大学で外国語として日本語を教える際に、学生がそもそも単語や漢字を覚えていないことには、それを運用してコミュニケーションできないため、新出単語や漢字のクイズを行って、学生がこれらを覚えてくるよう促します。ただ、暗記力を試すタイプのテストの結果のみで学習者を評価することがいかに的外れなことであるかは、上の段階的学習目標を見ても明白かと思います。

アメリカの大学に留学していた時、受講していた人類学の授業で、学んだ知識を「応用する」タイプのエッセイがよく課せられたのが思い出されます。例えば、実際には同時代には生きていなかった有名な人類学者3人が、あるトピック(確か、南西諸島の「辺境の」人々の生活実態を追ったリアリティT V番組のエピソードの一つ)について座談会を行ったら?と言う設定で、それぞれの学者が主張した文化理論を踏まえた上でお互いの会話をスクリプトにして書けと言う課題が出されました。読み物と授業の内容を理解した上で、全く別の場面でその情報を使えるかどうかを問われると言うのは(今でこそ良くも悪くもChatGPTが助けになるかもしれませんが)、日本で自分が受けてきた教育や評価方法とのあまりの違いに驚いたことを思い出します。

話が少し脱線してしまいましたが、このように、アメリカの教育現場では、「ブルームの分類法」がカリキュラムデザインや学習者の評価に使われることがよくおり、教員トレーニングのワークショップや講習会に出ると、頻繁に見聞きする機会がありました。(Creative Commonsでは以下の図しか見つけられなかったのですが、インターネット上にはもっとわかりやすくて詳細な図も見つかるので、ご興味あれば、「Bloom's Taxonomy」で検索ください)そのうちに、教育現場に限らずとも、日常生活において何かを学ぶという場面で、この分類法が示す考え方が結構役に立つのではと考えるようになりました。

Bloom's Taxonomy(「ブルームの分類法」)

例えば、家庭での読み聞かせを通じて子どもが継承日本語に触れて学ぶ場面に当てはめてみると、どうなるでしょうか?(と、早速「応用」しようとする癖は、アメリカで受けてきた教育の賜物と言えるかもしれません)

次回は、子どもへの読み聞かせの際に、具体的にはどのような問いかけができるか、「ブルームの分類法」の6段階に基づいて、考えてみたいと思います。
 


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