「どんな本が子どもに響くか」の補足

今回は、過去の記事「日本語の本の調達/どんな本が子どもに響くか?」(https://note.com/nahoko522/n/neab11c3c1558)の補足を書いてみたいと思います。

子ども達が実生活とのつながりを見つけやすい作品として、アメリカを舞台とした英語が原作の作品も、その翻訳や吹き替えの質が高いものであれば、継承語日本語の習得に大いに活用できると感じています。最近では様々なストリーミングサービスがしのぎを削っていますが、Amazon、Netflix、AppleTVなどのオリジナル作品は質が高く、多言語で視聴できるようになっているものが多いため、とても役に立っています。

例えば、Amazonオリジナル「ネズミくんにクッキーをあげると」のアニメシリーズは、原作が有名なアメリカの絵本(”If you give a mouse a cookie”)です。現地の図書館や学校では必ずと言っていいほど、目にする作品です。アメリカの学校生活(スクール・バス、サイエンス・フェアー、サマーキャンプ)、行事(ハロウィン、バレンタインデー)、出てくる登場人物の人種構成の多様性など、子ども達が身近に感じるシチュエーションが多数出てきます。実は、言語習得の観点からも、これらの場面で見聞きする日本語の単語や表現というのは、まさに子ども達が自分の日常生活を表現するのにぴったりなものであるわけです!

言語習得は場面別(domain-specific)で起こるとされており、例えば、家庭で使用する言葉遣いや単語などは、学校でのそれとは異なります。我が家の例に当てはめてみると、現在、子ども達にとって日本語の対人的なインプットのほとんどは、家庭内で母親(私)からということになります。そのため、食べ物の名前をはじめとする、家庭内にある身の回りの物の名前には日本語で頻繁に触れる機会があります。しかし、一旦家を離れると、日々の大半の時間を過ごしている現地校で目にする物の名前、更には、学年を経るごとにより抽象度を増していく学習内容は全て英語で習得していくため、英語で知っていて表現できることと、日本語で知っていて表現できることの間に、大きな乖離が生まれていくことは避けられません。

このように、場面ごとの習得するものが変わるため、子ども達はどのような場面で日本語を習得しているのか、またはしていないのか、英語で習得済みでも日本語での習得が進んでいない領域はどのように補えば良いかに、常々意識を向ける必要があると感じています。とはいえ、子ども達の頭の中を覗けるわけでもなく、本人に直接聞いても到底答えが返ってくるとは思えないため、親としては、日々の対話を通じた観察、現地校で何を学んでいるかの把握、といったことの積み重ねしかないかなと考えます。

前述した「ネズミくん〜」のアニメは、学校生活も含めたアメリカの日常生活、友達とのやり取りの様子が描かれていることから、子ども達の日本語の習得が追いついていない領域を少しでも補える効果もあるのではという実用的観点から選んで見せていたのですが、絵柄がかわいらしくて、お話のメッセージも前向き(なんというか、世相を反映していて、とてもリベラルな内容です)で、子ども達も気に入ったようで、よかったです。主題歌や作中の歌も上手に翻訳されていて、つい口ずさんでしまうようなものばかりで感心しました。

なお、英語が原作の作品(もしくは、英語に翻訳されて広く視聴されている作品)であれば、それが子どもの年齢相応の内容であるかどうかは、以下のCommon Sense Mediaというサイトで調べることができて、とても便利です。
https://www.commonsensemedia.org/


補足の補足:
アメリカ公共放送PBS Kidsで放送されている”Wild Kratts”(https://pbskids.org/wildkratts/)という番組は、動物学者のクラッツ兄弟が世界各地の様々な動物の生態を紹介する番組ですが、実写とアニメーションをテンポよく使って飽きさせず、内容もためになるけれど教育的すぎず、子ども達の年代に人気の高い作品!私が探した範囲では、現在、英語のみ視聴可能。これ、日本語版があれば最高なのですが…!


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