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TimTamドリンクと日本人病

ティムタム と言えばあれだ、ネット情報で「オーストラリアのお土産ナンバーワン」と出てくる甘いチョコレート菓子だ。情報通り、帰りのシドニー空港ではそこらじゅうの店舗でティムタムが積み上げられていた(諸事情で空港での追加購入はかなわなかったが)。
日本でも輸入食材を扱う「KALDI」や、大手スーパーでも見かけるし、別に珍しくないだろうと思っていたら日本では夏の間は扱わないとのこと。たしかにチョコレートがどろどろになることは予想できる。

ティムタムには味のバリエーションがずいぶんある。どれもおいしいが、とにかく甘い。「あんっむわぁぁい」と表記したいくらい甘い。まず自分が食べたいのは、日本で手に入る「Original」ではなく「Dark」、これなら甘くて食べきれない、ということが、かろうじてない。自宅で食べる分を買う。
こういう国民的菓子は、地元スーパーで手に入れるに限る。嬉しいことに「2個で」お買い得になる。しかしこれは、結構かさばるので、あんまりたくさんは買えない。スーツケースがティムタムで埋まってしまうし、つぶされれば割れる構造だ(スナック菓子ほどではないけれど)。しかも前の日には、同じメーカーの違う菓子を購入してある。まずはこの程度にして、あとで追加購入を考えよう。
ちなみに「2個でお買い得」は同じ味2個で、という意味だったみたいで、ここではDarkだけが割引になった。。。 

「あんっむわぁぁい」

菓子売り場とは別の、特売コーナーで別の形状のティムタムを見つける。いや、ティムタムではないが、その文字を掲載するドリンクだ。1杯分の粉が入っているスティック。ごみ問題を指摘する方には叱られそうだけれど、仕事場で一息つく時などにはとても便利で、日本でもこのタイプのをよく買う。これ、お土産に小分けにできて、いいんじゃないか? ということで、2種購入。翌日もう1種購入した。
記載によれば「ティムタムにインスパイアされた」チョコレートドリンクであって、ティムタムを販売するARNOTT‘S社製品ではなく、日本でもおなじみのネスレ社製品である。 

別のメーカーのスティックタイプのホットチョコレートなども購入し(なにしろ、お試しにはありがたい、スティックさまさまなのだ。一般的な容量のパッケージが、どれもとても大きいので勇気が出ない。ホットチョコレートのパッケージは、小さいものでだいたい「カネヨクレンザー」くらいの円筒である)、スーツケースに詰める段階で紙の外箱がかさばった。いくつか、外箱に犠牲になってもらう。中のスティックをばらばらにすれば多少(ささやかだが)スーツケースに収まる。

で、帰宅後である。
改めて箱を開けてみる。何種類かの味ひとつずつを組み合わせようとして、はたと気づく。 あれ? 中身の、スティックのパッケージが同じ色だよ。わたしは「3種類」の箱を買ったつもりで、同じ味の箱を2箱買ってしまったのだね、箱をひとつ捨ててきちゃったのだから確かめようもないわ、しょうがないねぇと思いながらもう1箱をあけると、あら? これも、同じ色・・・老眼のせいか。光の加減か。この茶色に違いはあるのか? 20代の娘に確認しても「同じ色だね」。

スティックの包材は同じ色

えーーー 味の違いが、わかならいじゃないか~と、半ばあきれて、あきらめかけたところで、外箱を改めて読んでみると・・・

Dark と Charamel

TC とかTD とかの記載があるって! Charamel とか Dark とか!! えぇぇ?これで見分ける!? いや、見えないの、老眼で。ましてや「C」と「D」のかすれた印刷、なんという難易度の高さ!!

テープ貼っちゃった

さて、都合30本のスティックを分けてみて、わたしは間違いなく「3種の箱」を買ってきたことが判明した。「TC」と「TO」と「TD」が10本ずつあった。表記は正しい。
わーーーーー それにしても、判読の難易度が高すぎる!!
この説明を、お土産を手渡すひとりずつにするのは、酷なので、識別テープを貼った。土産物としての体裁はよくないかもしれないが。 

それから、しばらくして、自分の「日本人病」をしみじみと考えた。
スティックの包材の色が同じでは、味の違いが、わかならいじゃないか~と、半ばあきれたこと。識別テープを貼ったこと。親しい人に説明した時「うーん、オーストラリアってほんと大雑把な国だね」とコメントされたこと(念のため言うが、この人に他意はない)。そのコメントに「ほんとにねー」と軽く応答したこと。
もしかしてこの話を読んだ、日本人のあなたも同じ感覚でおられるのではないだろうか? 「これが日本だったら、クレームものでしょ」と。

でも、改めて考えると、だいたい、今回のように、コレクションするみたいにいろんな味を一度に買うことを、製造者はたぶん想定していない。そんな想定よりも、同じ包材を使って製造上のコストを下げた方が「利がある」と判断したのかもしれないし、使い切りで捨てられる袋のデザインにそこまでコストをかける必要を感じなかったのかもしれない。あるいはちょっとした「期間限定品」だったのかもしれない。・・・いや、もしかすると、まず、そこまで考えたこともなかったのかもしれない(笑)
だって、気に入った味を大瓶(繰り返すが、クレンザーサイズ)で買えばいい、嗜好品なのだから。
(ここでは、包材の色を変えることが、製造上の「間違い」をなくすきっかけになることには、あえて触れないでおく)

だいたいが、最近の「なにもかも予定調和」なことにうんざりして、旅に出たのではなかったのか。下調べもろくにせず、行き先を決めた旅だったのだから。
メーカーがあらゆる場面を「想定」して、万人に受けるよう、「さまざまなご意見」に対処できるよう、きっちり作られ、何か小さなことがあればSNSに取り上げられ、繰り返し報道されて、炎上などと騒がれ、メーカーは「とりあえず」謝罪をする。それでいて、そのことに関わったすべての人たちに、やけどの跡だけを残して、製品が消え去っていくのが「当たり前」のようになっている、毎日に。

これはたぶん、日本で「ふつうの毎日」を過ごす成人がかかっている「日本人病」なのだろう。日本人病の目線はどこまでも傲慢だ。たぶん、この老眼に見えづらい文字を、わかりやすく「してあげる」ことが、親切というよりはサービスであると考えている。だから、包材の色を変えるべきである、と。Universalを装った、この違和感を、わたしはいつまで「違和感」と思っていられるだろう。

以前、伊藤亜紗さんの記事を拝読した時の衝撃を思い出す。目の不自由な方が語っておられた、レトルトパウチのパスタソースは、あたためて「あけてみるまで味がわからないから、楽しみ!」という言葉。そんな楽しみ方ができる人でありたいと、改めて思いながら、識別テープをはがせない、日本人病。
たかが、飲み物の包材の話なんだけど。
あ、中身? あんっむわぁぁくておいしかった(^^)/

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