「次の方、どうぞ」(5) 理屈壺
「はい、吐血はしておりません、しかしながらですね、わたくしの見立てでは十二指腸もしくは胃幽門部に潰瘍があるのではないかと思われるのです、と申しますのも、空腹時における、このみぞおちの痛みがですね、あの、先生、聞いておいででしょうか」
それらしい専門用語を織り交ぜながらの非常に流暢な男の説明を聞いているうちに、スズキは在学中どうやっても苦痛だった症例検討会を思い出し、そして条件反射のように、うとうとしかけたのだった。そこの君!聞いているのかね?
「あの、聞いておられますか」
い