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コーヒーをコーヒーたらしめるものは、何なのでしょうか。

あけましておめでとうございます。
2022年、コーヒーに対してこんな思いで向き合っていきたいなぁと、そんなことを書きました。


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大切な曲は、いつもそこに映像を伴って思い起こされます。

例えば、ユーミンの「ブリザード」。
両親によく連れられたスキー場への車中を思い出します。
例えば、久石譲の音楽。
テレビに張り付くようにみていたジブリを思い出します。
例えば、ショスタコーヴィッチの交響曲第5番「革命」。
大学受験期のヴェローチェで必死に勉強していた光景を思い出します。(2021年末のNHKラジオで流れていて大興奮でした)

私が何度も見返しては映像の隅々まで楽しんでいる映画、『Forest Gump』。アカデミー賞を受賞した、日本でも大ヒットした人気映画の一つです。
この音楽を担当しているのが、アベンジャーズシリーズや『Back to the Future 』でも知られる、アラン・シルヴェストリ。

『Forest Gump』をきっかけに彼を知りましたが、彼の音楽にいつも心を揺さぶられます。映画の内容はもちろん、この作品は音楽がなければ成立しないさえ思っていたほどです。この感情は、ジブリ映画にも同じように感じていました。天才・久石譲がいなければジブリは成立しない。


メルボルンで演奏していた韓国人奏者に撮らせていただいた楽譜


ただこれは音楽だけに限った話ではないことを、とある本から教えていただきました。

私が毎日コーヒーを淹れた後に読んでいる、Lobsterr『いくつもの月曜日』に、「文化をつなぐ仕事 - Overcome the 1-inch Barrier」と「あとがきという作品 - When Context Becomes Context」という章があります。

ここで語られているのは、外国語作品として初のアカデミー賞を受賞した『パラサイト』の翻訳者や、本のあとがき、そして映画監督など、その映画を構成している周辺コンテクストについてでした。

私はこの「周辺コンテクスト」にあまり魅力を感じませんでした。それがたとえユーモア溢れるあとがきだったとしても。卓越した撮影技術だったとしても。歴史に残る名演奏だとしても。

しかしその「周辺コンテクスト」は「作品を作品たらしめるもの」だと『いくつもの月曜日』では語られています。この「周辺コンテクスト」がなければ、作品が作品として成立しない。


メルボルンで出会ったイラストレーターの作品


映画、漫画、物語、本、どんな作品にも当然「核となるもの」は存在し、それを主役や主人公、中心人物と言ったりします。彼ら彼女らを中心に話が進むのは確かです。
ただ同時にその主役だけでは何も成立しません。作品を作品たらしめるものは、主役だけではない。脇役、音楽、映像技術、構成、全てが揃うことで「作品」として世に出て人を感動させる。

主役や脇役という括りは単なる表面的な肩書きなんだと思います。
全てが中核で、かつ個々が複雑に絡み合うことで初めて物語が生まれる。そう思うと、この「作品」という大きな括りの中にいる小さな輝きにどれも優劣はなく、それぞれに汲み尽くせない魅力を感じずには得ません。


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私は常々、「コーヒーは脇役でしかない」と思っていました。
それは決してネガティブな思いではありません。
コーヒーを通じて言葉を交わし、新たな出会いを生み出し、時には思想に耽り。そこには必ず私たち「人」が存在します。だからこそコーヒーは私たちの感情や行動を揺れ動かす「名脇役」だと感じていました。

しかし、コーヒーがなければ私たちは何か今までとは違った人生を送っていたかもしれません。コーヒーもわたしたちが飲まなければ、こうも世界中で愛されるものになっていません。そのコーヒー生産者がいなければコーヒーという存在もありません。

立ち位置を変え、視座を変え、見え方を変えるだけで、主役や脇役という脚本上のカテゴライズに関係なく個々の魅力に気づくことができる。
コーヒーを取り巻く、私たち個々人の物語を取り巻くもの全てが、複雑で単色では表せない魅力を持つものだ、ということに記事を読んで気づくことができました。


では、コーヒーをコーヒーたらしめるものは一体何なのでしょうか。
それはコーヒー農家さん、輸送業者、焙煎士、バリスタ、味や香りそのもの、そして消費者である私たちの物語、ではないでしょうか。

コーヒーを取り巻く複雑な物語が絡み合い、多種多様な色が折り重なりながらも、その一つ一つが輝きを持つ。
それら全てがコーヒーをコーヒーたらしめるもの
だと、思っています。

だからそこに主役も脇役も優劣も上下もなく、全てが誰かにとっての魅力。
そしてその輝きに対して、「素晴らしい」と感じられる感性をたくさん学んで養っていきたいなぁと、思いました。


そんなことを思いながら、2022年の最初のコーヒーを何にしようか、悩んでいます。


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