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葛湯 ヌチグスイ*⑬

寒い冬の夜、温かな甘い葛湯を祖母と飲みながらいろんな話をよくした。

手先がポカポカとしたのは、葛の効用か、のんびりペースで祖母の若い頃の中国体験を聞かせてもらったせいだろうか。看護師だった祖母は70代まで働いていた。看護師として戦時中の中国の天津市に赴いた頃の看護の仕事や気候風土の話を、懐かしそうに話してくれた。瀬戸内で育った祖母には、冬の大陸の乾燥と寒冷の暮らしは驚くことばかりだったそうだ。お風呂に入って寮の部屋に戻る時、手ぬぐいを振ったらそのまま凍ったと教えてくれた。

それでも、若くて仲良しの友達もいたから楽しかったと。辛い昔話は孫娘ににしづらかったのかもしれないけれど、少し懐かしく、少し悲しそうな表情を憶えている。「よその国の人に迷惑かけたけんの(からね)」とぽつんと言ったのが、意味がよく分からなくて今でも気になっている。

さて、とにかく祖母は葛湯をよく作ってくれた。わたくしが自家中毒をよく起こすので、お腹に良いと言いながら薄甘いトロンとした葛湯を熱湯を少しずつ加えながら練ってくれた。

実際、葛はかなり効用がある薬草だ。薬酒で有名な養命酒の記事にまとめがあった。↓ 

他はどうかとググっていると、「葛の花 イソフラボン ダイエット」なるワードも現れたが、こちらの方は、消費者問題も過去に指摘されたようなので、くれぐれもお気を付けいただきたいと思う。

話は横道に逸れるが、わたくしは、ダイエット人気に常々疑問を持っている。それは、日本人が世界一やせっぽちの国民だとするデータや、やせ過ぎで健康を損ねているということを知ったからである。↓

そして、太る原因ともなるカロリーオーバーは、ビタミンミネラルの不足(つまり栄養不足)を脳が感知して「もっと食べてくれ」と行動を促しているからだとする説にうなずくのである。微量栄養素は全ての種類の必要量が揃わないと大事な酵素を作ることができず、十分に足りている微量栄養素まで捨ててしまう仕組みになっている。(これは部品がたった一つ足らないだけでも、製品、例えば自動車1台が完成しないのと同じ理屈)

さらに、よく聞くキャッチフレーズの「どんなに食べても太らない」ならば、それは代謝異常などの病気だと考えるのが真っ当だろうし、バランスの良い栄養と穏やかな心理状態では過剰な食欲の衝動が生じることは減り、その人にとって適切な体型(骨格がしっかりした人は見た目よりも重さがあるだろうし、数字を見るだけでは適切体重などあてにならず、毎日の調子の良さが一番大事だと思う)をもたらすのではないかと考えるのである。

さて、再び、葛。この薬効あらたかな葛粉の採取には、かなりの重労働と技術と知識が欠かせないようだ。その担い手は「堀り子」と呼ばれ、その山仕事についての記事を読むと、手元のくず粉のありがたさをひしひしと実感できる。掘り子の方々とこの薬草を見つけてくださった古人にも大感謝。↓

この貴重で有益な葛をおいしく食べて、身体の中からしっかりと温め、今時の質の悪い風邪を予防しよう。おいしく健康になれる食材葛粉、これぞまさしく、ヌチグスイ!多彩で使えるよいレシピを見つけた。↓

https://kinarino.jp/cat4/44455

クッキングが面倒な人にも、葛の薬効を手軽に取り入れられるものがスーパーなどで見つけられる。くれぐれもジャガイモでんぷんではなく、葛粉(マメ科)の商品を注意して購入してほしい

気軽に葛の薬効を得られるのが、葛湯のパック。わたくしが、入手したのは、薬草の伝統深い奈良にある、坂利製麺所の葛湯である。これは和漢素材入りのちょっと独特のシナモンの風味がする葛湯↓

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寒風が肌に染みる日の夜に、祖母のようにしっかりと沸騰させたお湯でゆったりと溶いてクウルクウルと回して練り上げてみよう。風の邪気を退散させるおまじないのように。

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最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。


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