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龍と出逢いに その4 ィイ・ヤシロ・チ㉙

龍にまつわるイヤシロチ、と問われれば、まずわたくしは琵琶湖と答えるだろう。
滋賀は、歴史の大舞台として様々な時代の重要な出来事と、興味深い史跡が多くある地。その中でも、命を育む、豊かで美しい琵琶湖には、様々な龍の伝説が残り、すてきなイヤシロチがいっぱい在る。そして、その何処もが明るく強い波動を放っている。

最も有名なのは、竹生島だろうか。まったくの偶然に、奈良の興福寺の薪能で出会った「竹生島」という演目は、弁財天と龍神の化身の翁が祝福を与えるというお目出たくも幻想的な作品であった。かなり昔に鑑賞した記憶が、今も色濃く心に残っている。

https://www.youtube.com/watch?v=rt9kAsfWrdE

夕闇迫る空と燃え盛る薪の炎が、段々と近づく肌寒さと対比的な環境で始まった御能。眼前で粛々と展開されるライブの御能の神秘的な物語に圧倒され、鋭い龍笛の音色が刺激的だった。その時は、たまたま遭遇したラッキー鑑賞だったために、前知識もないままに「竹生島?龍?」と面食らったわたくし。内容の概要が書かれたパンフレットを眺めつつも、濃密な芸能表現に戸惑い、上演中はなんだか頭の中がぼうっとした未消化な感じだったように思う。

その体験から、実際にわたくしが竹生島に渡れたのは、随分経ってのことだった。琵琶湖に浮かぶ三つの島を巡るツアーに参加した。当日は青天に恵まれた出発で、穏やかな湖面を滑るように進む快適な船旅だった。バーチャル参拝できる素敵な動画を見つけた。↓どうぞお楽しみあれ♪

https://www.youtube.com/watch?v=FtWSaixx2cs

竹生島は、西国霊場の第三十番札所宝厳寺の島であり、国宝の建築物もあるとして有名な一方、一宮としても大きな存在である。ご祭神に「龍神」様がおいでである。↑動画の中にもあった、琵琶湖から上がってくる黒龍のお堂をお参りした時は、迫力のあるご神木に何かの気配を確かに感じた。竹生島は、富士山頂と出雲大社を結ぶレイライン上に在って、滋賀県では伊吹山もその線上に位置するために、春分の日と秋分の日の年二回、日の出が伊吹山と竹生島を一直線上に並ぶことになるとか。
やはり、日の出の光が龍のように見えるのだろうか?

無事参拝を終えたわたくしの乗った船が、次の行先の多景島を目指して竹生島を発ったすぐのこと、船上から名残り惜しんで眺めていると、竹生島の湖面近くにコマ龍が並んだ白い石の鳥居が見えた。あそこは何だろう?調べてみると、龍神祭りの斎場となる場所のようだ。都久夫須麻神社に祀られる白龍はあの鳥居を潜って琵琶湖から上がってくるのではないだろうか?と想像をたくましくした、わたくしである。

http://mosso-motto.com/4~6%E6%9C%88/06tikubushima-ryujinsai.html

この旅の最後は、とても不思議な光景がフィナーレを飾った。帰途に就く遊覧船が進んでいく先は、船体の右側が晴れていて、左側が土砂降りの雨だった。船は左右が全く違う風景を切り裂くように湖面を進み、しまいには夕立が上がって大きな虹が湖面にかかり、その下を潜っていった。「行きは青空だったし、帰りは濡れることもなく空から大きな贈りものを頂いたね」、と友人たちと龍神様への感謝の気持ちを語り合ったことが忘れられない。琵琶湖の龍神の御力と不思議を味わい尽くしたイヤシロチ巡りだった。

また別の日。一人で出かけた、高島市の白髭神社への旅。琵琶湖の美景としてつとに有名な古社である。

https://www.youtube.com/watch?v=9BUHT36zFiY

このイヤシロチの本殿奥の右手に、白い尖った磐座が祀られている場所の波動がとても心地良かった。多くの人は湖面の鳥居に目が惹かれるだろうが、磐座の横の岩戸社は古墳であり、その磐座は古代祭祀の場所だったろう。此処で神か宇宙などの未知の存在との交信を行っていたのだろうか?

そして、白髭神社にも天女と龍神が祝ぐ神曲「白髭」があるという。此処でも「龍神と女神はセット」なのが気にかかる。両者はどんな意味を持つ組み合わせなのだろう?

そして、わたくしがまだ訪れたことのない龍神ゆかりの場所もある、と知れた。近江八幡の藤ヶ崎龍神。風光明媚な景色と伝説、古代祭祀を彷彿とさせる拝所のたたずまいが素敵な場所のようだ。是非とも伺いたいイヤシロチである。

https://shigatoco.com/toco/fujigasakiryujin/

伝説の元となった古の出来事の詳らかなことごと、今となってはそれらを正確に知ることは難しいけれど、琵琶湖は深い謎をそっくりと飲み込んだまま、ゆったりとさざ波を岸辺に寄せては返してくる。よしなしごとに悩みを抱えて苦労する人の仔の心を、穏やかに慰撫するように。琵琶湖、まさに龍のイヤシロチである。

最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。


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