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ィイ・ヤシロ・チvol.65 天狗の御使い旅その4 富士山④
山梨県の宿に泊まったツアー一行は、翌朝も引き続きテンションが高かった。なぜなら絶望視されていた富士山が、くっきりと大きく姿を表していたから。
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「ツアーで此処から富士山を見られたのは、一度も無いんですよね」と、もはや何かを疑うような口ぶりの添乗員さん。さらに、富士山を横切る雲は、龍神か鳳凰かと呼ばれているとのこと。さて、本日はどちらが富士山にお出ましだろうか?そんなことを思いながら、つくづくと立派な御山だなあと感心しきりで遥拝した。
全員揃って予定通り、定刻8時に出発。ほどなく北口本宮富士浅間神社に到着し、朝の木漏れ日が射す清々しい参道を歩く。
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わたくしにとって二度目の参拝となる本日、前回はこの参道を通らずに境内に入った。やはり表の鳥居から参拝するべきだった、と改めて思う。木々からのフィトンチッドのおかげなのか、実は今一つだった体調が少し上向いてきたように感じるご神域。
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https://www.jtb.co.jp/myjtb/card/travel_life/column/article310.asp
堂々とした両部鳥居の姿は、厳島神社を思い出させた。扁額の「三国一」がインド、中国、日本を意味するとは、興味深い世界観。ランキングってどの時代も重要だったのね、と思う。
その後、此処をくぐってすぐ脇にある国宝指定の八幡社についてのガイドを聞き入る一行が、何とも神々しいことになっていた。それを確認しながら、わたくしは一人、この「福知」八幡社の名を聞いて、此処にも「フクチ」が残っていると気にしながらついていく。
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更に神門をくぐり、神楽殿の美しさに見惚れ、富士山の湧き水で手口を浄めて、進み出る。大きな蝶結びのしめ縄が個性的な太郎杉を横目にしながら、神前へ。男性的で勇猛な設えの拝殿には、大きな天狗のお面が掲げられていた。ご神木の太郎杉、もしかすると天狗の太郎坊がこの天辺に立って見下ろしていたりして?と昨日の天狗話も思い出す。
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↓こちらの記事では、拝殿の天狗面が富士講行者からの寄進によることを教えてくださっている。美しい画像で貴重なレポートをされている。
更に右奥に進むと、有名な吉田の火祭りの上吉田諏訪神社がある。
神前に立つと同時に、太鼓の音が鳴り響いた。待っていたぞ、の合図かも、とピリッと引き締まる。
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ご挨拶を終えて、そばの大杉の根元に祀られた風神社に参拝。前回台風よけでお世話になったお礼の気持ちを、渦巻のあるご神体へ向けて頭を垂れた。
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すこぶる男前な西宮社に、ご挨拶をして、富士講行者の方々の足跡をたどりつつ、境外後方の大塚丘を目指す。其処こそが、今日のわたくしの重要目的地なのだ。
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大塚丘は、前回はたどり着けなかった聖処。元宮に是非とも参りたかった。其処にヤマトタケルが祭神とされていることも気になっていた。わたくしとしては、彼の戦い方はどうにもフェアに感じず、エミシをことごとく倒せば英雄なのか、そこも自分の中で判断が付きかねていた。皇子という立場の彼が殊更祭神として各地で祀られているのは、その絶大な戦闘能力からだろうと推測するが。アルコールに弱いエミシたちに酒を飲ませ、女装して油断させてという手法も何とも言えず後味が悪い。当人が最期に「白い鳥」になる意味も何を示すのかと、考えあぐねている。
そんな個人的な謎かけはさておき、大塚丘である。境内を出て、その左手を森に沿って進むと、ほどなくして辿り着いた。
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静かな、それでいて決して軽くはない御神気溢れる祀り場。パワースポットとして人気ですよ、とのガイドもなるほどな雰囲気があった。
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皆さんの最後尾で上がらせていただき、一人神前に立った。そう広くはない空間に、ヒノキの大樹のエネルギーも合わさって濃密な御神気を体感する。なんだかここでまた少し元気をいただいたような心持になった。
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振り返れば、「ああ、屈強な心身だったエミシの霊が祟り神として働かぬよう、梟雄によって抑えておいでなのかも」と自ずと妄想が広がっていく。此処においでの御霊がとにかく心穏やかに平和を保たれますように、と祈った。
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それはもちろん何の根拠もないことなのだけれど、歴史というものは「在ったものをなかったように、無かったものをあったように」作られる一面もある、と理解している。だからこそ、実際に現地に足を運び、その場所のエネルギーとストーリーに触れて得た感覚をもとに思考を展開することは、大事だと思うのだ。
そうすれば、今の世の中や人の仔の在り方を俯瞰できる視点を得られるのではないか。かき消されたようで決して消えることのない声に、耳を傾けられるかもしれない。権力を持たない寄る辺ない自分が今どこにいて、これからどこへ向かっているのか。分からないままに流されることなく、現代の危うさを感知する力をわたくしの内側に養いたいのだ。
そう願って、わたくしは社を巡る旅を続けている。大塚丘で思ったことだ。
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最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。
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