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ホラー冒頭博覧会ちょこっと全感想


【はじめに】

 私の主催する『ホラー冒頭博覧会』。
 そもそも苦手な人が多かったりして、読まれないなんてことも多いホラー作品。
 けれど最近では雨穴さんであったり、近畿地方であったり、ホラーにスポットが当たることも増えてきました。

 興味を持って読みにきてくれた読者様を、冒頭部分で一気に惹き込んで離さない、そんなホラーを目指して立ち上げた企画です。

 もしよろしければ皆様も遊びに来てください。
 そして、この冒頭を読んだら続きが気になって仕方ない!と思う作品を教えてください。

 可能であれば、どうしてそう思ったのかも教えていただけると、作者がそれを糧にして更なる恐怖をお届けできることでしょう。

 これから全作品へ簡単ではありますが感想をお届けします。
 私の作品も混ざっていますが、例に漏れず自画自賛していきます!

 各タイトルがその作品へのリンクになっていますので、興味を持っていただけましたならば、是非、読みにきてくださいね。

 とはいえ、怖かったポイントの引用抜き出しなど、ネタバレも多大に含むので、感想を読む前に本文をお楽しみいただきたいところではあります。
 目次部分に全ての作品のタイトルが表示されますので、気になるタイトルの物だけでも感想を見るより先にお読みいただけるといいかなと思います!

《企画概要》
・提出作品について
 上限40字のタイトル
 最大400字のあらすじ(空白・改行込み/任意)
 下限3,000字〜上限5,000字(空白・改行込み)
 ジャンルがホラー(※)であること
 完全新作であり、内容に関して公にしていないこと
 連載を意識したものであること
 小説家になろう投稿のためR15表現までに留めること

※登場人物が何らかの脅威に直面し、恐怖・嫌悪を抱く状況が主に描かれている作品とします。
 主催者はとても好きなのですが、恐怖をメインに据えたいため、過度のコメディ作品は除外とさせていただきます。
 脅威の種類は問いません。
 心霊、ゾンビや吸血鬼などのスーパーナチュラル系、呪いのような超常現象系、人間心理によるサイコサスペンス、民俗系、都市伝説、凶暴な動物などなど。

《企画ページ》

https://ncode.syosetu.com/n3442jg/

《投票所》


【感想】

01.『私は見られている』

 初っ端から面白いですね……!
 一人称で進む、じっとりした雰囲気の作品です。
 他者からの視線が気になり出した"私"。
 そのことを相談した友人までもが、視線を気にして……。
 私に直接被害(視線が気になるのは置いておいて)が出ると思いきや、というパターンで続きへのヒキにしています。
 友人に何が起きたのか、それは私のせいなのか、そもそも私は今どういう状況にあるのか。
 謎が散りばめられ、それも気になるポイントになっていますね。
 ただ、私が今はもう大丈夫といって自分から過去の出来事として語っていることから、そのこと自体で彼女が死んだとかそういうことはなく、解決しているらしいというのもまた気になる。
 これは、"私"の話で終わるんでしょうか。
 それとも、"私"の話を聞いている聞き手の"私"が、彼女の話を受けて自分の状況を打破するために行動するところまで書かれるのでしょうか。
 あらすじに

彼女の口から紡がれる言葉には、果たしてどのような真実が隠されているのか。それを、私は探り当てたいと思っている。

01.『私は見られている』

とあるので、聞き手の"私"はどうやら語り手の"私"の話に隠された真実が知りたいようです。
 なので、語り手の"私"から何か不利益を被っていて、それを明らかにするために語り手の"私"の当時の状況と似た現象に悩まされているフリをして、おびきだした可能性もありますね。
「覚えていませんか? あの時の女、あれが私です」みたいな。
「やっぱりわざとだったんですね。アナタのおかげで私がどんな思いをしたか、思い知らせてあげます」みたいな!

 すみません、つい興奮しました。
 大変面白かったです、続きが気になるので是非、最後までお願いします!!!!

*怖かったポイント*

 対面から歩いてくる会社員らしき男が、暗い瞳でジーッと私を凝視してきて、すれ違う時も首を捻じ曲げて私を見ていて、すれ違った後も背中に視線を感じて……

01.『私は見られている』

――大学時代の友人D子が、首を吊った。

01.『私は見られている』


02.仄闇の仔

 おわ〜〜〜いいですねエロから始まるこの感じ、まさにホラー!!
 映画の始まりを観ているようでした、脳内カメラが男女をローアングルで舐めたよ。
 ホラーといえば脳天気にことに及ぶ系男女!
 彼らの犠牲があって、なにか、、、の恐ろしさを知るんですよ……最高か。
 そしてそこから場面転換して、あらすじに出てきた子の登場です。
 こっちはこっちでハードです。
 王道の毒母に、クズみたいな母の彼氏です。
 現実のニュースで見ると最悪の気分になるシングルマザーとその彼氏による子どもの虐待事件ですが、フィクションの、ホラーの世界では作品のフックとして受け入れられます。
 とはいえ胸糞であることには変わりないので、ぜひこれから作中で酷い目にあってほしいものですね。
 たとえば胎の子を食べてもらった後、もっと食べたいと請われて母と彼氏を差し出すとか。
 なんでも食べちゃうトンネルの話をしている子たちは、果たして生きている人間なのか。
 そんなところも疑いの目を向けさせる、素敵な冒頭でした。

 由唯ちゃんがどうなるのか、とても気になるので続き待ってます!

*怖かったポイント*

 あ。
 あ。
 近いところで、声が聞こえた。

02.仄闇の仔

 静寂を破るような悲鳴は、誰の耳にも届くことはなかった。

02.仄闇の仔


03.仮面

 おーこれはパニックものかな?と思いながら読み始めました。
 どうやら何かに追われているらしい。
 でもその何かは見えない、何かは分からない。
 "誰"と言っているからどうも人型であるらしいですが。
 タイトルが『仮面』だし、仮面を付けた人間に追い掛けられるのかな?
 いいですね〜〜これもカメラが男たちをガサガサ追いかけるアングルで迫る絵が見えるようです。
 最後の視点の青柳くんが第一犠牲者なのでしょうか。
 独身気分ではしゃぐ男たち、ホラーの登場人物として最高の肩書きですね。
 そして突然みんなをバンガローに誘ってきた上に、どうも以前と感じの違う怪しすぎる男、高橋。
 高橋が仮面の男なのか?!
 ウイスキーで眠らせたみんなが目覚めた時、身体の自由が奪われていて、仮面を付けた高橋がそれぞれの罪を明らかにしながら理不尽な断罪をしていくとか?
 漫画家を諦めたことと何か関係があるんでしょうかね?
 気になる〜〜。
 みんなが意識を手放していくところで続く!ってなるのいいですね。
 続き、ありますよね??
 待ってます!!

*怖かったポイント*

「奴が来てる!早く!」

03.仮面

 無我夢中で走っていると、再び泥濘に足を取られる。持っていた懐中電灯は宙を舞い、後方の方へと落ちていく。
「ま、まずい…」
 俺は急いで明かりの方に駆け寄り、泥にまみれた懐中電灯を手に取る。

03.仮面


04.呪殺達成率100%の村

 タイトルwww
 タイトル見て笑っていたら、本文も面白かったw
 呪殺に前向きすぎる村人たち、笑う。
 まぁ、100%なんて言葉の裏には何かあるよねっていう。
 誇大広告じゃないし、嘘も付いてないけど。
 これは短編連作形式で進んでいくって感じなんですかね。
 呪殺100%じゃなくなるかもしれない事態に陥るけど、村人たちで協力して100%をキープするために頑張るぞ!みたいな。
 実は100%じゃなくなったら村人たちが呪い殺されるとか?
『評判次第では連載に持っていくこともまんざらではない読み切り』的な感じがしてしまったのが残念かもしれない……続きが気になるといえば気になるけど、この冒頭部分だけでも割と満足できてしまうというか……。
 めちゃくちゃ面白かっただけに、もったいないな〜〜と思ってしまう南雲でした。
 でも短編連作ものとしての完成度で見たらめちゃくちゃ高いと思います!
 超面白かった!
 呪殺のための道具揃えるのにクーポン使えることが分かるシーン大好き。声出して笑ったw

*怖かったポイント*

「これね、娘の形見なの」
「鏡ですか? 櫛ですか?」
「ううん、

04.呪殺達成率100%の村

 神主さんはにこやかに、おふだをライターで燃やした。
「困るんだよねぇ。うち、呪殺達成率100%目指してるからさ」

04.呪殺達成率100%の村


05.『たそかれ』よ、さようなら

 裏世界に行ってしまった系ホラー!
『歪みの国のアリス』がふと頭に浮かびました。
 世界がちょっとセピアがかって見えるというか、そんな感じの雰囲気が似てるなぁと思って。
 静かに異界入りするの、すっごく雰囲気よくて好き!
 逆さ言葉で喋る麦わら帽子の女の子は味方っぽいですが、最後に裏切ってくれたりしませんかね?
 女の子の言う通りにするとバッドエンドで、黒い人の言う通りにするとノーマルエンドで、二人から逃げて自分で行く先を見つけると真エンドに行けるみたいな。
 ゲーム映えしそう!
 最後、鏡を見た時に見える主人公はやっぱり人形になってしまっているんですかねぇ。
 運命の輪を自分から外したって言っているけど、そんなことできるの?!(できてる)
 なんでそんなことになってしまったんだろうなぁ、主人公本人に何かありそうで、そこも気になりますね。
 異形がいっぱい出てくれそうで、そこにも期待!
 これノベルゲームにしませんか???BGMとか付いたら怖さマシマシですよね絶対。
 続きをくれるだけでもいいです!お願いします!

*怖かったポイント*

 扉を開いたのは人ではなかった。どっからどう見ても、全裸のマネキンだった。

05.『たそかれ』よ、さようなら

 振り向くと、真っ黒な何かが優しい声でそう言った。真っ黒な何かは人型をしているが、ぐちゃぐちゃと粘着質な音をたてており、嫌悪感しか感じなかった。

05.『たそかれ』よ、さようなら


06.美人で優しい生徒会長が神社の裏の杉の木でしているのは

 あーーーーッ!
 なんてことでしょう、完璧なはずの生徒会長がまさかそんな!
 お約束の展開ではあるものの、場面転換と視点の移動でドキドキハラハラしますね!
 独占欲つよつよ激ヤバガール生徒会長、キャラが立ってて素敵。
 コミカライズ映えしそう。
 ちゃおとか、最近の少女マンガレーベルって意外とエグいホラー出してくるじゃないですか。
 動物のアレをどこまで描いていいのか分からないけど、有名な丑の刻参りだし、学園ものだし、恋愛ものだし、対象年齢低めだけど大人が読んでも楽しめるタイプのホラー漫画になる気がする!
 果たして主人公ちゃんは助かるのか。
 憔悴するか、危機に陥る祥子ちゃんを励ますなり助けるなりした太郎くんが文子ちゃんの本性を知ってしまって、その時の太郎くんの反応を見て発狂した文子ちゃんが大暴れするシーンが最大の見せ場と見ました!(ただの願望)
 終わり方も、文子にバレたところでのヒキ、これは強いのでは?
 続きが気になります!
 狂った恋模様の行方、最後まで読ませて〜〜〜!!!!!

*怖かったポイント*

 そして極めつけは、あのワラ人形。
 人形からはみ出ている長い髪の毛は、多分人間のものだろう。
 その髪の毛の持ち主はいったい誰か?
 なんとなく嫌な予感が頭の中をかすめる。

06.美人で優しい生徒会長が神社の裏の杉の木でしているのは

 杉の木の下、金づちを持って立ち尽くす生徒会長の狂気に満ちた目が、スマホを握りしめる私を刺していた。

06.美人で優しい生徒会長が神社の裏の杉の木でしているのは


07.怨み孕み

 タイトルから想像はしてましたが、出産シーンから始まるとは!
 今までの作品でも多いですが、やっぱり最初にある程度ショッキングな場面を持ってきてから、さてそこに至るまでに何があったのか教えてあげましょうタイプの構成は鉄板な感じですね。
 一軒家を買って、お腹の中に子どもがいて、何かがあっても簡単には逃げられない状態にあるのって怖いですよねぇ。
 少しの違和感は飲み込まざるを得ないと言うか。
 主人公にも裏がありそうですが……気になるなぁ……。
 あらすじには人形ってあるけど、本編には出てこないんですね。あ、写真に写ってたのがそうなのか。でも大々的には出てこなくて、焦らされてるぅ!
 それにしても私は一体なにを産んだんでしょう。
 人形の中のなにかかな?
 日常っぽくありつつも不穏な感じで終わってて続きが気になる!
 何が産まれたのか知りたい!読ませてくださぁぁぁい!!!!

*怖かったポイント*

 だから、出すまいと。留めておこうとするのに、何かはどんどんと、ずるずると、私の中から、這い出てしまって、そして。
『オギャア』

07.怨み孕み

 問題は、そのベビーベッドの上に、赤ん坊の姿が見えることだった。だって、落合さんにはお子さんがいて、それは一歳半の娘で、一人しか子どもはいないみたいな口振りで、今だって家に旦那さんがいるとかそういう話もなくて。
 どうして?

07.怨み孕み


08.病める時も健やかなる時も、どう考えてもバッドエンドな時も!

 ああああああどう考えてもバッドエンドだ!!!
 ほのぼのハッピーバースデーで始まったと思ったら、地獄の始まりでした。
 ちょっと前に似たような地獄のハピバ物語がありましたね、『水星の魔女』っていうんですけど……つい思い出してしまいました。
 自分の常識と他人の常識の違いなんて、家から出なければ分からないですよね。
 私は大学生になるまで枝豆の薄皮を剥いて食べていました。大学入って初めての飲み会の場で、薄皮を皿に積み上げている私を見る友人の引いた顔が忘れられません。(でも私も平気で薄皮を食べる友人に引いていたのでおあいこ)
 アンドロイド的なお母さんなのかと思ったら、病院にも人間ドックにも行っているらしいし、何者???
 真里さんを僕にください!しに来たタイミングでこんな重大なこと打ち明けられても困りますよなぁ、帰るわけにもいかないし。
 設定が上手いですね、行かざるを得ない状況に落とし込む。
 変なのはお母さんだけだと思ってたのに妹ちゃんもだなんて、ホントに、ずるい!
 え?こんな状況で入れる保険があるんですか?(ない)
 一晴くん!頑張れ!逃げ切れるのか!?
 バッドエンドだから無理か!?
 続きが読みたいのでぜひお願いします!

*怖かったポイント*

 ママは笑って立ち上がると、ナイフを片手にケーキを見下ろして、少し迷うように何度か位置を確かめて、そうして──顔面からそこに倒れ込んだ。 人の頭というのは、とても重たい。華やかなショートケーキは容易く押し潰されて、卓上に歪に広がった。

08.病める時も健やかなる時も、どう考えてもバッドエンドな時も!

 少女の濁りのない澄んだ瞳が、瞬きもなく虚空へと視線を向けている。色白の頬は健康的すぎるほどに赤く熱っているが、僕はすぐに、それが化粧品によって乗せられた色だと気づいた。
「栞里はね、ママより早く動かなくなっちゃったんだ。叩いても治らなくて。あんなに可愛い、天使みたいな子だったのに……」

08.病める時も健やかなる時も、どう考えてもバッドエンドな時も!


09.ずっと傍に……

 幽霊が視える子の話だ!
 最初怖いと思った幽霊の女の子が、視える子と仲良くなるのを見て、『生者の行進Revenge』を思い出しました。リカと千里、好きなんですよ……。
 明美ちゃんが秋上先生を見て何かを思い出したところで、これは絶対にアレなやつ……!と思って読み進めましたが、期待通りに行ってくれて大歓喜!
 展開が読めるというと良くないことのように思えるかもしれませんが、読者の期待に応えるという意味ではキタキタァ!ってテンションが上がる要因にもなり得ると思うんですよね。
 実際テンション上がりましたしね。主人公が危ない目に遭うの、美味しいね。もぐもぐ。
 かなりキリがいいところまで書かれているので、短編感があるのですが、これはどう続いていくんだろうな〜〜。
 あらすじでも特に今後どうなるかは書かれていないので、想像するしかないんですが、(以下南雲の妄想劇場が始まります)裁判の最中、秋上先生が自己弁護に走ると苦しんだり怯えたりするようになって、精神鑑定を受けることになるも、精神鑑定時は嘘のようにまともな受け答えをする。
 それはもしかして明美ちゃんが乗り移っているのでは?と思う主人公だけど、それを口にすることはできなくて……みたいな。
 どういう風に着地するかが分からなくて続きが気になる!読ませてぇぇぇ!

*怖かったポイント*

 私たちは駆け出して、旧校舎から出た。
 荒い呼吸の中、ちゃんと全員いるか確認する。
 六人いた。

09.ずっと傍に……

 秋上先生は「久しぶりに人を殺すなあ」ととろけた表情になった。
「初めは小動物からだった。殺すのが楽しくなってさ。だけど人間を殺すのは躊躇したね」

09.ずっと傍に……


10.ふたりめのたね

 子ども絡みのお話3つめ!
 やはり妊娠・出産とホラーは相性がいいんでしょうね。
・逃げたくても逃げられない
・多少の違和感があっても気のせいにしたくなる
・自分の中に自分ではないものがいる
・マタハラ等の人間関係
・メンタルが不安定になる
 ホラーのフックに使える材料がどんどこでてきます。
 神の子。悪魔の子。忌み子なんかもあるし、うーん、なんて手広いんでしょう。
 妊娠・出産絡みのホラー話はまた別の機会にするとして、このお話は喘息の子どもを抱える夫婦のお話です。
 子どものためにと思うと多少の違和感を飲み込んで逃げるに逃げられないパターンですね。
 07の怨み孕みと違って既に産まれているお子さんを抱えての移住です。
 そこに来て”二人目”をしつこく迫ってくる町人、ヒトコワ要素というか、独特の気持ち悪さもあります、じっとり。
 得体の知れない居心地の悪さをメインに進んでいくのかと思いきや、最後にガツンと怪異を見せてくるの憎いですね〜〜大好き!
 そこからアダルトな描写も挟めるの強い、ホラーにエロは付き物。これは映像映え。(南雲はホラーの脱衣シーンが好きです)(全裸ババアが一番好きです)
 何が宿るのか、母体は無事でいられるのか、続きが気になる!!ください!!!!!

*怖かったポイント*

まるで、もう一人誰かが遊んでいたような。
「これ、そうくんが全部作ったの?」
 いつもなら、うん! と明るい顔で答えてくれるのだが。
「トリワ、シイネ!」

10.ふたりめのたね

なぜなら顔が巨大な穴になっているからだ。太い木の杭で穿たれたような大穴が、顔面を深く陥没させている。ひ、と喉から死にかけの動物みたいなかすれ声が漏れた。
 ソレは、出し抜けにぬうっと手を伸ばした。見ると、私の腹は大きく切り開かれていて、脂肪や肉や内臓があらわになっているのだった。

10.ふたりめのたね


11.償われる前の罪

 面白すぎる……私はミステリ要素のあるホラーが大好物なんですが、モロじゃん!好きです!
『ぼぎわんが、来る』辺りからホラー界隈にミステリの風が強く吹いている気がするんですが、これ紙で読みたいな……。
 メインキャラ二人の会話がテンポよくて、明るく軽快に進むのいいですね。
 そこから後半の怪奇現象とのギャップが産まれている〜〜。
 原作改変されて神様おこなんでしょうか……現実でも原作改編では大荒れでしたし、原作は大切にしてほしいですよね……。
 いや、誰の何が原因か分からないんですけど。
 被害者だと思わせておいて加害者だったりとか、その手の仕掛けを期待させてくる感じ、いいなぁ。
 読み手がどんどん疑心暗鬼になっていく!
 誰が信頼できて、誰が疑わしいのか、これなんならメインの二人にも裏があっていいですよね?
 一作目は二人とも善人側にいて、シリーズが続くにつれて裏も見えてくるみたいな。(南雲の脳内では既に数冊出版されています)
 聞こえていたひぐらしの音が止まる瞬間みたいな、動と静の書き分けがいい感じに効いている気がしますね。
 続き!ください!読めないのつらすぎる……。どこ……続き……。

*怖かったポイント*

「あの女の泣き落としに捕まるなよ。俺らを生贄にするつもりだぞ」
 歌の言葉と同時に、夫人の嗚咽がぴたりと止まった。

11.償われる前の罪

 娘は歌の背後を指さした。いつの間にか男が立っていた。初島と歌が振り返ると、男は不気味にくくくと笑った。
 部屋の蛍光灯が二度またたき、明るく光る。外は真っ暗になっていた。冷房が落ちる。部屋が急に暑くなっていく。
 男の笑い声に重ねるように、夫人がくすくすと笑いはじめた。ひぐらしの鳴き声は全く聞こえなかった。

11.償われる前の罪


12.クローズド・オープンワールド

 こ、こわー!
 ラストで一気に惹き込まれました……!
 仲良し男子が二人でわちゃわちゃ動画撮影するところからのギャップが最高ですね。
 雰囲気の落差はあればあるだけいい。
 作者様は『コンジアム』観たことありますかね?
 あれも前半と後半のギャップが凄まじくていいんですよね……あっちはちょっと冒頭のチャラけ具合が長くてややダレるんですが、この作品は提出部分で事件を起こす展開なので日常パートに飽きる前に本題に入ってくれてて堪らんです。
 しかもダンボール箱の中に!わお!
 箱詰めは浪漫……(え?)
 動画撮影者がメインとなっているだけあって、映像映えするお話ですね。
 南雲の脳内では既に映画化されてますよ。
 原作改変されてない完全版がね!!!
 ほとんど同じタイミングで同じことをして、二人で条件を満たしたはずなのに主人公だけ無事なのはなにか他にも条件があったってことなんですかね?
 謎もあって死体もあって、続きが気になる〜〜〜!
 相棒のあれな姿を見ちゃった主人公、どうなっていくのか読ませてください……!お願いします……!

*怖かったポイント*

 ただ、先ほどまで音が聞こえていたというのに、今は完全に無音だ。画面の中の徹がこちらをじっと見つめるだけの、妙な動画が流れている。
「こんなの撮ったっけ……」

12.クローズド・オープンワールド

 開けた途端、心臓が止まった。
 呼吸もできず、ただ一点を凝視することしか出来なかった。
 そこにあったのは、ほんの数時間前。楽しく談笑していた相棒。

12.クローズド・オープンワールド


13.次に誰かを殺すなら

 うわあああああ今までの作品とは毛色の違う怖さ……!
 あんまり気にしていなかったんですが、今回参加してくださった方はママさんが多いんですかね?
 子ども絡みの作品、どれも描写がリアルですごいなと思って。
 自分も子どもが産まれてから色々と解像度が上がったなと思うところが多々あって、この作品に関してはいなくなった瞬間の血の気が引く感じヤバいですね。
 想像しただけで過呼吸になりそう。
 子どもがいなくなるというと真っ先に浮かぶのが『フライトプラン』なんですが、やっぱり子どもが絡むと親は普段であれば引く場面でも引かなくなるんですよね。
 このお話はどう進んでいくんでしょう。
 あらすじと本文を見るに、何か霊的なものがどうこうという気配があまりないんですよね、むしろヒトコワ要素が強そうな印象……。
 タイトルも『次に誰かを殺すなら』だし、これ実は主人公が娘のことを殺してしまっているとかありますかね?
 いなくなったと思って探しているけど、心の底では殺した自覚があって、一人殺したなら二人も三人も同じ、次に誰かを殺すなら……みたいな。
 その殺し方に、怪異が絡んでいるのかもしれませんし。
 うーん、気になる!!!続き!!!続きをくださーーーい!!!

*怖かったポイント*

「じゃあ、最後は……」
 そう話し始めた瑠奈だったが、振り向いた先に娘は立っていなかった。

13.次に誰かを殺すなら

 頭に血が昇って来る。
 両手の指先が小刻みに震え出す。
 息が、できない。
 カンナが――
 娘が、目の前から消えて、いなくなってしまったのだ。

13.次に誰かを殺すなら


14.この街には、魔女がいる

 魔女だ!
 しかもこう、ビジュアルが洗練された魔女ではなくて、不気味な魔女だ!
 あまり読んだことのないタイプの魔女話で面白かったです。
 ソレについて話すと、ソレを覚えていると、やってくる。そういう類の前提条件はよく見るものの、そこに"魔女"というワードが絡むと印象が変わりますね。
 ヒールの音もホラー的な効果抜群!
 聞こえてくる女性の笑い声も、セリフも、これ映像で観たくなりますね??
(映画化決定しました)
(ネットフリックスのドラマでもいい)(呪怨ネトフリドラマ版みたいな)
 SNSに助けを求めましたが、ここから怪異に強いキャラが出てくるんでしょうか……!
 魔女だから、対魔師とか?エクソシストとか?カッケー!
 現代日本でありつつ、魔女という洋風の要素が混じり、他にない読み口の作品になっていきそうで続きが気になります!
 本当に魔女なのか、この街が作り出したナニかなのか、魔女の正体について明らかになるんでしょうか……。
 日本のホラーって正体が曖昧なまま終わることが多くてそこが好きなんですけど、とはいえある程度は解説していってほしい気持ちはもちろんあって(わがまま)まぁ何が言いたいかというと、続きが読みたい!!!!!ってことですね。ください!!!!!

*怖かったポイント*

 ふと、何かに引っ張られた感覚がして足がもつれる。
 疲れた体は言うことを聞かない。受け身も取れずにごろんと転がり、カバンの中身が散乱してしまう。
「ねぇ、気づいているんでしょう?」

14.この街には、魔女がいる

「魔女のことを決して忘れてはいけない。でも、忘れたふりをしないといけないのさ」
 「魔女を認識しなければいい。そしたらきっと殺されないから」なんてお婆さんは笑った

14.この街には、魔女がいる


15.女王の薔薇は枯れない

 耽美だ!おしゃれだー!
 これはちょくちょく過去の回想シーンを差し込んでくれるんでしょうか。
『イノセント・ガーデン』という映画が大好きなんですけど、過去に行った儀式の回想シーンは、そういう雰囲気ありそうでワクワクです。
 幻想的で、耽美で、夢みたいだけれどこれ以上ないくらいに現実なんですよね……。
 この作品もまた子どもを持ったことによって死に争うことをよぎなくされる系の主人公ですね。現在が幸せであればあるほど、逃げるより立ち向かう方向にベクトルが向くんだと思います。
 これもまた謎というか、提示されている疑問点がいっぱいあって続きが気になりますね……!
 薔薇の女王の儀式は本物なのか、本物ならナニが願いを叶えているのか、代償は本当に寿命なのか、叶えてもらった願いとは何なのか、自殺した同級生のことを記憶から追い出していたのは何故か、どうして彼女は自殺したのか、彼女から怨まれているかもしれないと思う理由は何なのか……軽く書き出しただけでもこんなに謎が!
 は〜〜〜〜気になる!
 過去と現在で雰囲気のギャップがあるので、それぞれ違う感覚の読み口を楽しみつつ、それが一つの場所へと帰結していく気持ちよさが味わえるに違いないと思っています……読ませて……!!!!!

*怖かったポイント*

「事故とかじゃ、なくて。病気でもない、なかった。突然死なんだって。突然──何か、普通じゃ、ない、みたいで……」
 菜月も美咲も、あの輪の中にいた。歌いながら、花びらを毟った秘密の同志。
 花びら一枚、暦一枚──花びら一枚につき、寿命一ヶ月。私たちは、どれだけの薔薇を散らせただろう。何十枚? 何百枚に、なるのだろうか。あんなおまじないで、何年分の寿命を捧げたのだろう。

15.女王の薔薇は枯れない

 頭に過ぎったイメージは、どぶに落とした硬貨を拾うような厭な、汚らしい感じがした。それを掴み取る勇気を出す前に、菜月が引き攣った声で呼び掛ける。苛立ちと──あと、どういうわけか、恐怖を滲ませて。
「千春は、死んじゃったでしょ。あの子、私たちを怨んでるんじゃ……!?」

15.女王の薔薇は枯れない


16:異界へようこそ

 同じ場所にいるのにズレてるタイプのやつだー!!
『コープスパーティ』とか『獄都事変』とか大好きなので、この手の展開は大好物です!
 キャラも男女二人ずつでいい感じですよね、バランスが。
 美鶴と聞いてつい女の子を想像してしまったんですが、メガネの男の子でした。
 校舎内に入る時から、美鶴くんは美鶴くんじゃなかったってことですよね。
 美鶴くんが消えたと思いきや、美鶴の側からすると松本くんたちの方が消えたことになってるっていう。
 みんな異界にいるにはいるけど、異界の中での位相がズレてるって感じでいいんでしょうか?
『CUBE』みたいに部屋ごとにズレてるとかでもいいですよね。
 今別行動している2組も、もう合流できない感じで。
 あらすじがないのでまた南雲の妄想劇場がオープンしてしまうんですけど、今後の展開はどうなって行くんでしょう。
 タイトルにもあるし、美鶴くんの携帯にも『異界へようこそ』と歓迎しているナニかがいるようなので、4人ともそのナニかの栄養分にされちゃうんでしょうか。
 ズレた部屋に入る度に、彼らの存在が多重になっていって、色んなパターンで何度も喰われるみたいなのも良くないですか?
 女子トイレで殺されたと思ったら、また別の時空では理科室で殺されてて、生き延びる時空は存在するのか?みたいな。
 自分の死体を見付けちゃうのも美味しいしな〜〜はぁ、劇場クローズします……。
 続きがどうなるのか気になります!読ませて!!!!!

*怖かったポイント*

 美鶴(みつる)が消えた。

16:異界へようこそ

 だからだろう。
 その後に入ったメールに気づけなかった。
『異界へようこそ』

16:異界へようこそ


【終わりに】

 どれもこれもレベルがたかーい!
 続きが気になる作品ばかりで、どうして『次へ >』を押しても続きが読めないんですか?
 バグ?
 自分では書けないなと唸らされる作品も多く、己を見つめるいい機会になりました。
 まだそこまで感想が出ていないのですが、きっと増えるだろうと期待しつつ……。

 ホラー小説の冒頭部分として、読者を掴むにはやはり何かしらの事件が必要で、それは単純に死体が転がることであったり、してはいけないことをすることであったり、非日常へと足を踏み入れてしまうことだったりします。
 そしてそれぞれに、"前に進むしかない状況"が付随します。
 大抵のホラー作品は、「逃げればいいじゃん」「行かなきゃいいじゃん」「燃やせばいいじゃん」そんなような一言でスタート時点から進めなくなりますからね……。
 それじゃあ作品として成立しないわけで。だからといって、ご都合主義的に前に進むのもどうなの?という時に、前に進まなければならないセットアップが活きてくるんですよね。
 それがうまいことストーリーの要とリンクしていくと更に入り込みやすくなる気がします。

 今回の参加作品も、前に進まざるを得ない状況に追い込まれた主人公たちばかりで、すごく面白かったし参考になりました!
 ありがとうございました!

 まだまだ期間はありますので、参加者様、読者様どちらの皆様も、最後まで楽しんでいただけますと幸いです!



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